北朝鮮の「新人類」が金正恩体制を倒す日 (1/2ページ)

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北朝鮮の「新人類」が金正恩体制を倒す日

1980年代、日本では従来とは違った価値観や感性を持つ若者たちが、「新人類」と呼ばれはじめた。中国でも、貧しい時代を知らずに価値観が異なる若者たちを「80後」(1980年代生まれ)「90後」(1990年代生まれ)と呼ぶ。いずれも上の世代からは、「今時の若者は・・・」という枕詞で、時には持ち上げられ、時には呆れられた。

一方、北朝鮮でも、2000年代頃から「市場(ジャンマダン)世代」と呼ばれる「新しい世代」が、出始めている。この世代は、幼少期に1990年代中盤からはじまった「苦難の行軍」と言われる大飢饉を体験したことから、それまでの古い世代とは、まったく異なる価値観を持つようになった。

40代以上の世代は、金日成主席、金正日総書記を神のように畏怖していた。時には恐ろしく、時には慈悲深い「首領様(金日成氏)」を信じて従えば、そこそこの暮らしを営むことができた。

ところが最近では、金正恩第1書記の「恩恵」として支給される学校制服について「ダサい。人間の価値が下がる」などと、無慈悲にこき下ろす若者が現れている。

「苦難の行軍は」そうした変化を呼び起こした。

北朝鮮社会を統治するシステムだった配給制度は、完全に崩壊。民衆は、市場で商売をして、自分の力で生き抜くことを強いられた。

大人達が、生き残るために死にものぐるいで動き回り、家族や隣人、知人が日常茶飯事のように餓死する状況を、幼い目で見ていたジャンマダン世代にとって、国家も指導者も頼るべき存在ではなくなった。

テレビや新聞は「偉大なる金正恩元帥様の伝説」をすり込もうとするが、ジャンマダン世代は、鼻にもかけない。学校や職場の思想教育も、暗記はするが、彼らの心の中に刻み込まれるわけではない。

既に、この世を去った「偉大なる首領様(金日成氏)」や「親愛なる将軍様(金正日氏)」のありがたい話を聞かされても、ジャンマダン世代にとっては、どこか遠い国の「おとぎ話」に過ぎない。

国家に対する忠誠心も抱かず、政策にも関心がないジャンマダン世代は、「花を買うカネを惜しみ、パンを買う」と揶揄される。「花」は、金日成氏の銅像に捧げるもの、つまり忠誠心の比喩。「パン」は、プライベートの比喩だ。

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