臨床内科専門医に聞く! 今季のインフルエンザの特徴ってどんなもの? 予防法は?

学生の窓口

毎年、冬になると流行するインフルエンザ。臨床内科専門医で正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美院長は、「今シーズンのインフルエンザの流行は、昨シーズンより全国的に遅い立ち上がりとなっています」と話します。遅い立ち上がりということは、これから流行していくのでしょうか。今季のインフルエンザについて、正木先生にくわしいお話しを聞いてみました。

■予防接種は、ワクチンの株にB型が1種類増えて4種になった

「インフルエンザウイルスは、主にA型、B型、C型に分類されます」と正木初美医師。厚生労働省発表の「インフルエンザの発生状況(平成27年第50週・12月7日~13日)」によると、「直近の5週間(11月9日~)で AH3亜型とAH1pdm09が同程度、次いでB型の順に検出されている」とありますが、どういうことでしょうか。正木医師はこう説明します。

「この中で大流行しやすいのはA型とB型です。厚労省発表のAH3亜型とは『A香港型』、AH1pdm09とは、2009年に流行して社会問題になった『新型インフルエンザ』のことです。

今年も流行の兆しが見られるのは、そのA型の中の香港型と新型インフルエンザ、そしてB型の3種類です」

今シーズンのインフルエンザワクチンは、B型インフルエンザに対抗するための種類が追加されたと聞きました。どのような変化があったのでしょうか。

「これまではA型2種類、B型1種類の計3種類のウイルスに対する免疫をつけるためのワクチンでしたが、今季はB型が1種類増えて計4種類のワクチン株が含まれています。『4価ワクチン』と呼びます。

近年、世界各地でのインフルエンザB型の流行は、山形系統とビクトリア系統の2系統のウイルスが混合していることから、今年から日本では4価ワクチンが導入されました」と正木医師。

ある総合医療情報サイトの調べでは「成人1回目のインフルエンザ予防接種費用の全国の平均金額は3,204円で、前シーズンと比べると平均265円アップした」とあります。費用の変動について正木医師は、

「ワクチン株の種類が増えたことが影響しています。インフルエンザワクチンの接種は健康保険が適用されない自費診療です。価格は医療機関ごとに独自に設定されるので差があります」と話します。

予防接種に関する注意として正木医師は、

「ワクチン株の種類が増えて感染リスクを抑える可能性は高くなったものの、ワクチンにはウイルスを殺す働きはないので、まったく感染しないということではありません」と言います。

では、感染する可能性があるということは、ワクチンを接種しなくてもいいように思いますが……。

「ワクチンの効果には個人差がありますが、接種する意味は、インフルエンザにかかったときに『発熱などの症状を抑える』こと、また、『肺炎や脳症などの合併症を予防する』ことにあります」(正木医師)

重症化させない、ということですね。ワクチンはなるべく早い時期に済ませた方がいいと聞きます。その理由について正木医師はこう答えます。

「予防効果が現れるのは、接種してから約2週間かかるとされているためです。その後、約5か月間は効果が持続します。ですから、インフルエンザの本格的な流行が始まる前に接種することが望まれています」

■突然の高熱、けんたい感、関節痛など、全身症状が現れやすい

ウイルスの型によって、症状に違いは現れるのでしょうか。正木医師は、

「A型のほうが発熱などの症状が強く現れやすく、B型は下痢などの胃腸系の症状が多い傾向があります。また、すべての型にあてはまる症状もあります」と次の症状を挙げます。

・急な38度以上の発熱

・頭痛や関節痛がする

・のどが痛い

・せきや鼻水が出る

風邪の諸症状と同じようですが、インフルエンザとの違いについて、正木医師はこう説明します。

「風邪の場合、のどの痛みやせき、鼻水などの症状がだらだらと続き、全身に症状はあまり見られません。

一方、インフルエンザは、1~3日間の潜伏期間の後、突然、38度以上の高熱が出るケースが多く見られます。さらに、けんたい感や筋肉痛、関節痛などの症状が強く現れます」

ワクチン以外の予防法について、正木医師は次のようにアドバイスします。

「ウイルスが体内に侵入しないよう、『帰宅時はせっけんを使って入念に手首から指先までを洗う』、『うがいをする』、『人ごみではマスクをする』ようにしましょう。

また、空気が乾燥するとインフルエンザにかかりやすくなるので、部屋やオフィスは『50~60%を目安に適度な湿度を保つ』ことが望ましいです。

さらに、体の抵抗力を高めるために、バランスの良い食事と十分な睡眠、疲れやストレスをためないよう心がけてください。

そして、厚労省や医療機関では、『咳(せき)エチケット』を推しょうしています。インフルエンザの主な感染経路は咳やくしゃみをしたときに口から出る、小さな水滴による飛沫(ひまつ)感染です。周りの人にうつさないことを意識し、咳やくしゃみが出るときはマスクを着用しましょう」

インフルエンザの発生状況や都道府県別の流行レベルマップは、厚生労働省や国立感染症研究所のホームページで毎週金曜に更新されています。続々と発表されるインフルエンザの流行情報に注意しながら、ワクチンの接種や手洗い、マスク、適度に加湿、咳エチケットで予防と対策をとるようにしたいものです。

厚生労働省「インフルエンザ(総合ページ)」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/ke...

国立感染症研究所「インフルエンザ流行マップ」
http://www0.nih.go.jp/niid/idsc/Hasseidoko/Levelma...

(岩田なつき/ユンブル)

取材協力・監修 正木初美氏。日本臨床内科医会専門医、大阪府内科医会理事、日本内科学会認定医、日本医師会認定スポーツ医、日本医師会認定産業医、正木クリニック院長。

正木クリニック:大阪府大阪市生野区桃谷2-18-9
http://masaki-clinic.net/wp/

「臨床内科専門医に聞く! 今季のインフルエンザの特徴ってどんなもの? 予防法は?」のページです。デイリーニュースオンラインは、インフルエンザ風邪医者健康カルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る

人気キーワード一覧