現在の科学技術では無理! 地球上では完璧な「球」は作れないってほんと? (2/2ページ)
ベアリングボールはとくに精度が求められるため、日本工業規格(JIS)で10段階のランクが定められ、ランクと許される直径の誤差(マイクロ・メートル)は、
・等級3(最高ランク) … 0.08マイクロ・メートル
・等級200(最低ランク) … 5マイクロ・メートル
と大きな差がありますが、1マイクロ・メートルは千分の1ミリですから、等級200でもカンタンに作れるものではありません。誤差が生じる最大の原因は地球の重力で、自体の重さも相まってわずかながらにもゆがんでしまうからです。もし真球を作りたければ、重力の影響がきわめて小さい宇宙空間で気体か液体を使うほか、現時点では道はないのです。
■球の「体積」は、断面積の合計
もし真球があったら、どんなことが起きるのでしょうか? 摩擦や振動が大幅に減らせるだけでなく、平らなところに置いたら接触面積はゼロと、理論上・何にも触れていないのと同じ、フシギな現象が起きるのです。
球の輪郭(りんかく)を成す円は、中心から同じ距離の「点」の集まりであるため、直線に触れても面ではなく「点」。おまけに、点には長さも面積もない、と定義されているので「何も触れていない」ことになるのです。これは球も同じで、真球を完全な平面のうえに置くと触れている面積はゼロ……ある意味で宙に浮いているのと同じ状態になるのです。
球の体積は、どのようにして求めるのでしょうか?
・4 ÷ 3 × 円周率3.14 × 半径の3乗
の公式で知られていますが、これは球を細かくスライスして作った「円」の面積の合計。3Dプリンタで、大小の円を重ね合わせれば「球」ができるのと逆の理屈で求められているのです。ただし、最初の円は面積がゼロなので、どうすれば良いのやら…。日常にあふれているかたちでありながら、球は再現が困難な物体なのです。
■まとめ
・地球上では重力の影響を受けるため、現在の科学でも真球は作れない
・最高ランクのベアリングボールでも、10万分の8ミリの誤差が許されている
・球の体積の公式は、スライスしてできる「円の面積」の合計
・もし真球を平面上に置いたら、触れている面積はゼロ
(関口 寿/ガリレオワークス)