「民法772条をそのままにするのは政府の怠慢」無戸籍者を生むカラクリ (2/2ページ)

新刊JP

これは井戸さんにしか書けない内容だと思いますが、無戸籍者たちが自身の人生を語るというストレートなノンフィクションの中に、政治の現場でのやりとりを収めることは、一冊の本を作るという意味でとても挑戦的だと感じました。この政治の現場で起きたことをこの本の中に入れた(別の本にしなかった)理由を教えて下さい。

井戸:開高健ノンフィクション賞に応募をすると言った段階で、政治的な話は書かない方が良いと言われました。私個人の政治的プロパガンダだと思われるのは損だから、と。
もちろん私も逡巡しました。しかし、そこを書かなければノンフィクションではなくなってしまうのではないか、また赤裸々に苦しいことも語ってくれた無戸籍者やその家族たちにも、私が保身に走っては申し訳ないと思い、踏み込むことにしました。
ただ本が書店に並び、感想が寄せられるようになると、最も印象に残った場面のひとつに「政治の場で起きたこと」をあげられる方が多くて、驚いています。

――無戸籍者の問題は今後も続いていくと思いますが、この問題において国民が注視すべきことはなんだと思いますか?

井戸:立法府の動きですよね。
この法律は日本人を、そして「家族」をも規定する国にとっては根幹部分でもある。それは逆に言えば全ての日本人にとって基本中の基本の根幹なのです。
だからこそ変えられない。だからこそ変えなければならない。
誰がどう動くかも含めて、注視してもらいたいと思います。

――本書をどのような人に読んでほしいとお考えですか?

井戸:声をあげることもできず、今もひとりで悩んでいる無戸籍当事者の方はもちろん、「戸籍はあって当たり前」だと思っている方々にも。
これは誰かの問題ではなく、誰にでも起こる問題、つまりは自分の問題なのだと思ってもらえたらばうれしいです。

――このインタビューの読者の皆さんにメッセージをお願いします。

井戸:「無戸籍の日本人」の存在は、この国が抱えているさまざまな社会問題とつながっています。なぜ解決がつかないのかを一緒に考えていただけたら。
政治的な攻防や無戸籍当事者の境遇は驚きの連続で、現実に起こっていることとは思えず「小説を読んでいるみたいだ」と言う感想もいただきました。でも、これが真実です。今、日本に起こっている「リアル」なんです。
また一方、我妻榮先生をはじめ、明治・昭和とこの国の民法を作りあげてきた人々とその思いの強さも含めて知っていただけたらと思います。

(了)

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