オボちゃんの手記刊行に思う:ドラァグクイーン・エスムラルダ連載88 (2/3ページ)
その際に聞いた、本人および(本人となんの利害関係もない)第三者の話、話の内容を裏付ける資料などから判断すると、むしろメディアの方が、大嘘をついている可能性が高いのよ……。もちろんその人も、ある部分では嘘をついていたんだけど、メディア側が、人々に「それ以外の部分も全部嘘だ」と思わせるよう、事実を捻じ曲げたり、事実の中に憶測を紛れ込ませたり、都合の悪い事実を隠したりして、巧みに情報を操作していたのも確かなのよね。
なので、「ある人の話の半分が嘘だったから、もう半分も嘘に違いない」と決めつけることに、どうしてもためらいを感じてしまうのよ。
ネットが普及したおかげで、メディアが報道しないことが広く知られるようになったり、メディアがついた嘘が暴かれたりする機会は確かに増えた。それはいいことだけど、ネット情報の中にはもちろん、真実に見せかけた嘘もたくさんあるし、メディアがついた嘘や、メディアが「話題にしたい」と考えたことがそのままネットによって拡散されることも増えているわ。
アタシたち一人ひとりが、あらゆる出来事の当事者から直に話を聞いたり、真相を知ったりすることはもちろん不可能。なので、メディアやネットをはじめ、「自分が実際に見聞きしたこと」以外の情報に基づいて何かを論じたり評価したりすることが多くなるのは仕方のないことだけど、せめて「真実かどうかわからない情報を前提に話をしているのだ」という自覚だけは常に持っておきたいな、とアタシは思うのよ。
【エスムラルダ:プロフィール】
えすむらるだ…1972年生まれ。94年よりドラァグクイーンとしての活動を開始し、各種イベント、メディア等に出演。2002年、東京都の『ヘブンアーティスト』ライセンスを取得。脚本家・ライターとしても活躍している。著書に「同性パートナーシップ証明、はじまりました。