実物なんてあるの? 「醍醐味」は誰もが知っている乳酸飲料の味ってほんと?

学生の窓口

極上の程度をあらわすことば「醍醐味(だいごみ)」。これが旅行の醍醐味! なんて使われ方をしますが、醍醐の味? っていったいどんな味とツッコミを入れたくなりますね。じつは誰もが知っている乳酸飲料こそ「醍醐」味なのはご存じでしょうか?

醍醐味はもともと仏教用語で、古代の乳製品「醍醐」の味が極上とされていたことから使われています。いまでいえば発酵食品ですが、大量の牛乳と多大な労力が必要だったため、献上品に使われるほど貴重でした。大正時代にこれにあやかって「醍醐味」という商品を販売、牛乳の代わりに脱脂乳を使ったところ、おいしいドリンクが誕生。水で割って飲む国民的・乳酸飲料こそが現代の醍醐味だったのです。

■牛乳から「醍醐」を作る

日本で牛乳が普及したのは1966~70年ごろで、学校給食でビン入り牛乳が出されるようになったのがきっかけです。まだ半世紀も経っていないので「なじみ」のない食品に思われるかも知れませんが、じつは誤解。いまから1,500年ほど前の飛鳥時代には牛乳を飲む習慣がありました。ただし牛乳の生産量も少なく保存技術が未熟な時代だったため、飲めたのは身分の高いひとだけ。なかでも加工製品は非常に珍重され、献上品として用いられたほど。醍醐味は、牛乳から作られた発酵食品の味、を意味することばなのです。

醍醐の作り方は大きく三段階にわかれ、その過程で、

 ・酪(らく) … ヨーグルト状
 ・酥(そ) … チーズ状

と名前が変わり、酥をもとに醍醐を作りますが、「醍醐は酥の精なり」と記された資料もあり、酥からしみ出した液体では? という説もあります。いずれにせよ牛乳を長時間煮詰める作業から始まり、酥になったときには10分の1程度に減ってしまうため、コスパの悪さはハンパではありません。当時の日本では酪農がさかんにおこなわれていたわけではありませんので、牛乳集めだけでもとんでもない労力… そんな背景もあって献上品、極上の味の代名詞となったのです。

■現代の醍醐味は「初恋の味」

大正時代になると、これにルーツを持つ製品が登場します。その名もズバリ「醍醐味」という乳製品が販売されていたのです。

大正の「醍醐味」は、貴重/極上の味が目的ではなく、乳製品とりわけ乳酸菌を使った食品を普及するためのものでした。ところが、ネックになったのはやはり牛乳の調達。牛乳の生産量が増加したのは昭和45~50年ごろの話ですから、ムリもありません。そこで材料を脱脂乳に切り替えたところおいしい乳酸飲料が誕生、醍醐素(だいごそ)の名で大ヒットとなりました。その後に名前を変え、「水で割って飲む白い乳酸飲料」として誰もが知っている存在になったのです。

古代の乳製品からカラダにピースな飲み物が誕生するなんて、なにがヒントになるのかわかりませんね。研究や論文に行き詰まったときは、元祖・希釈タイプの乳酸飲料で気分転換すれば、良いアイデアが浮かぶかもしれません。

■まとめ

 ・醍醐味の醍醐は、飛鳥時代から存在する乳製品の名前
 ・10分の1ほどに煮詰めるため、大量の牛乳が必要。貴重な存在だった
 ・大正時代にも同名の製品が登場。やはり牛乳不足に悩まされた
 ・脱脂乳を使ったところ、「初恋の味」の乳酸飲料が完成。爆発的ヒットとなった

(関口 寿/ガリレオワークス)

「実物なんてあるの? 「醍醐味」は誰もが知っている乳酸飲料の味ってほんと?」のページです。デイリーニュースオンラインは、飲み物豆知識歴史雑学健康カルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る