「5W1H」を正確に伝えている?情報発信の際にやりがちなミス
『ブームをつくる 人がみずから動く仕組み』(殿村美樹著、集英社)の著者は、「PRプロデューサー」。
これまでに「ひこにゃん」「うどん県」「佐世保バーガー」「今年の漢字」など、世間を騒がせたさまざまなムーブメントのPRを手がけてきたのだそうです。
「PRプランナー」や「PRコンサルタント」ならまだしも、PRプロデューサーとはあまり聞いたことのない職種ですが、そう名乗ることには理由があるのだといいます。
つまり著者が理想とするPRは、従来型の「企業PR」とは本質的に異なるものだということ。
すでにでき上がった商品や理念を既存のレールに沿って告知するのではなく、PR活動を通じ、ひとつの文化をつくり上げていくことを目指しているというのです。
根底にあるのは、「文化と歴史は“つくるもの”」だという考え方。だからこそ、PRはプロデュースしなければはじまらないものだというのです。
つまり本書では、そのような考え方を軸として、ブームづくりについての持論を展開しているわけです。
■ダイレクトメールはPRではなく広告!
ブームをつくるということは、社会を動かすということ。社会を動かすために避けて通れないのは、クライアントを動かすこと。
そして同じように重要なのは、「メディアを動かす」こと。PR業務には、メディアとの連携が必要不可欠なのです。
ところで製品やサービスの情報を、人々に対して直接発信する方法として思いつくものに、ダイレクトメールがあります。しかしダイレクトメールはPRではなく、広告に分類されるもの。
またダイレクトメールは大量に印刷し、さらにポスティングも行わなければならないため、コストも発生することになります。
いっぽう、PRの場合はまずメディアに向けて「プレスリリース」という形で情報を発信します。そしてその情報をメディアによって、ニュースとして人々に伝えてもらうということ。
いわば、メディアが持つ情報発信力を「てこ」のように利用するのがPRによる情報発信の手法。著者は、そう解説しています。
■すべての文字情報の基本は「5W1H」
だとすれば大きな意味を持つのは、「効果的なプレスリリースを、どうやって書くか?」ということであるはず。そして著者によれば、特に重要なのはタイトルなのだそうです。
基本として大切なのは、「5W1H」を的確に伝えること。
いうまでもなく「5W1H」とは、「いつ(When)」「どこで(Where)」「誰が(Who)」「なにを(What)」「なぜ(Why)」「どのように(How)」という6要素。
これを踏まえることは、プレスリリースに「限らず、すべての文字情報の基本だといえます。
文章を書くということは、誰にとっても「すでに頭のなかにあることを文字化する」ことだと著者。いいかえれば書いている本人にとっては、すでにわかっていることだというわけです。
だから、その情報をまだ知らない人に向けて発信する際には、必要なことがらをつい書き漏らしてしまうことがよくあるのだそうです。
いってみれば「5W1Hを正確に伝えていない」という基本的なミス、誰もが犯してしまう危険を持つもの。
しかし、そのミスを防ぐための心構えがあるのだといいます。それは、「この情報を知ってもらいたい!」という根本的な目的意識を強く持ち続けること。
プレスリリースとは、メディアに向けての提案書。だから著者も、「この情報が記事に役立ち、読者や視聴者のためにもなると思う」と強く思いながらプレスリリースを作成しているそうです。
■プレスリリースで重要なのは「YTT」
また、プレスリリースという特定の目的を持つ文章を書くにあたっては、5W1Hに加えて「YTT」という要素も重要なのだとか。
Y(Yesterday)、T(Today)、T(Tomorrow)という時間軸に沿って、情報の価値を表現する必要があるということ。つまり、「情報の物語」を簡潔に伝えなければならないのです。
たとえば「間違いなく人類に利便性を提供する新商品の発売」という情報を発信するのなら、伝えるべきはその商品の性能という現在的な価値だけではないといいます。
それに「加え、「それが存在しなかった過去はいかに不便だったか」、さらに「その商品が普及した未来が、どれほど快適になるか」を表現するということ。
だからこそ、社会にとっての商品の価値は、このYTTを抜きには決して決められないのだと著者は断言しています。
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この考え方にも明らかなとおり、著者が提唱するPRに関する手法は、さまざまな業種に応用することもできるはず。そういう意味でも、ぜひ読んでおきたい内容だといえます。
(文/書評家・印南敦史)
【参考】
※殿村美樹(2016)『ブームをつくる 人がみずから動く仕組み』集英社