「受信契約はお済みですか？　なに？　まだだって？　お前の新生活、いいスタート、キレてないですよ！？　はやく“受信料長州力”でアレしなきゃダメだ！　コラ」（NHK広報局ツィッター）（注1）

　何をどう言い訳しても、バレバレ。　悪ノリで始めたら反発を喰らい、慌てて引っ込めた恥ずかしい格好だ。

　NHKが、新生活を始める若者をターゲットにした＜受信料長州力＞なるサイト開設を予告。プロレス界の大物、長州力（注2）が起用され、睨みを効かせた画像などがアップされた。目的は「受信料制度への理解を深めて頂くため」（NHK）だったそうだが、すぐに

「長州って受信料の“徴収”と引っ掛けて使ったんだろうけど、笑えないね」
「レスラーが力づくで受信料を取りにくるのか？　感じ悪い」

　という反発の声が殺到。急遽、サイト自体の公開中止が決まった。

　予告には「2016．03.14　長州力がパワーホール全開でNHKのド真ん中に立つぞ！」と掲載され、前述のようにツィッターでも長州の口グセを真似ていたのだから、いくらNHKが「長州で徴収などという意図は無い」と言おうが焼け石に水。まさに勢いこんでリングに上がったところ、試合前からカウンターのリキ・ラリアット（注3）を食らったような衝撃だろう。

　ちなみに「アレ」は様々な場面で使われる長州得意のフレーズ（注4）、「パワーホール」は長州のテーマ曲のタイトル、「ド真ん中」は長州が新日本プロレスを辞めて新団体を作った時と潰れて戻ってきた時、両方で吐いた言葉。長州小力のモノマネで有名な「キレてないですよ」は、敵対団体（注5）との対抗戦に関する（記者の）質問への長州の回答だ———まったく不要な知識かも知れないが。

「何がやりたいんだコラ」（長州力）

　このサイト製作にいくらかかって、無駄になったのか？　それも気になるが、より大きな懸念の前では些事（注6）かもしれない。「受信料を長州しちゃうぞ、コラ」などとフザけているNHKが、触れられたくない問題が3つある。

（A）NHK局員の異常な高額報酬（注7）と手厚すぎる福利厚生
（B）新社屋建設コストが3,400億円
（C）受信料義務化への政界工作

　昨年末に発表された2015年度中間決算では、NHKの総事業収入は3,424億円で、256億円の黒字を確保。総資産額が初めて1兆円を超える1兆27億円となった。つまり金に困っている訳でも無いのに、まだまだ受信料を得ようと政界や長州を使おうとしているわけだ。

　ひとえに、上記問題点（A）と（B）が重すぎるのだろう。

「月によって違うが、ここのところのNHK受信料支払い率は75〜77％あたり。これは取れるところからはキッチリ取れている数字。これ以上となると、いま総務省に働きかけている“テレビの有無は関係なくＰCなどネット端末を持つ世帯からの徴収”“全世帯の受信料支払い義務化”しかない」（社会部記者）

　世間から乖離した高給と、高額すぎて頓挫したザハ版・新国立競技場より1000億円も高い新社屋建設費。こんなNHK貴族サマたちのために、我々が受信料を支払う必要があるのか？

「国民はNHKの噛ませ犬じゃないぞ！」

（1） NHKツィッター…現在は削除されている。
（2） 長州力…ライバルの藤波辰已に噛みついて革命戦士と呼ばれる。団体を何度も出たり入ったりしながらも、アントニオ猪木後の新日本プロレスに君臨した権力者。
（3） リキ・ラリアット…長州の三大必殺技のひとつ。
（4） アレ…長州が頻繁に口にする。用例：「まあアレだな」「アレだぞ」
（5） 敵対団体…当時、高田延彦が率いた「ＵＷＦインターナショナル」。
（6） 些事…「さじ」＝ささいなこと
（７） 異常な高額報酬…2012年度のNHK職員の平均年収が1185万円。これに住宅費補助など、手厚い福利厚生が加わる。

著者プロフィール

コンテンツプロデューサー

田中ねぃ

東京都出身。早大卒後、新潮社入社。『週刊新潮』『FOCUS』を経て、現在『コミック＆プロデュース事業部』部長。本業以外にプロレス、アニメ、アイドル、特撮、TV、映画などサブカルチャーに造詣が深い。Daily News Onlineではニュースとカルチャーを絡めたコラムを連載中。愛称は田中‟ダスティ”ねぃ