妊娠中喫煙の悪影響はここにまで…生まれてくる時は体重が少ないのに「将来太りやすくなる」!?
妊娠中の喫煙は“胎児に悪影響を与えることがある”という話を聞いたことがありますよね。では具体的にどのような悪影響を与えるのでしょうか。
タバコの中には化学物質が4,000種類以上含まれており、さらには発がん性物質が60種類以上あると言われています。喫煙をすることによってそれらの化学物質が胎盤を通過して胎児に到達してしまうと様々な影響が引き起こされる可能性が否定できません。
そこで今回は、予防医学に精通する医学博士の筆者が“妊娠中の喫煙の赤ちゃんへの影響”についてお伝えします。
■喫煙妊婦の赤ちゃんは「体重が減少しやすい」!?
山梨大医学部の鈴木孝太准教授らの研究チームによると、妊娠中にたばこを吸う母親から生まれた新生児は、吸わない母親の子に比べ出生時の体重が120グラム以上も少ないという分析結果が、国際学術誌『ジャーナル・オブ・エピデミオロジー』の電子版に掲載されました。
これはタバコに含まれる成分の一つであるニコチンによって血管を収縮させてしまう作用があるためであり、母体と胎児をつなぐ臍帯(さいたい)の血管が細くなってしまうということです。
血管が細くなってしまうということは、その分血液の供給量が低下してしまうために胎児に上手く血液が送られない、すなわち“酸素や栄養素が上手く送られない”ということと考えられています。
その結果として十分な栄養がいきわたることが出来ずに体重減少してしまうことが考えられるのです。さらには、生まれてきた後にリバウンドのような形で体重が増加してしまう、すなわち将来的に子どもが“肥満”となってしまう可能性も否定できません。
そうなりますと、将来的には肥満による“生活習慣病”のリスクも視野に入れなくてはいけないでしょう。
また、妊娠中であれば母体と胎児は一体となっています。母体が喫煙をした場合、その成分は母親の肺から血液に乗り、全身に分布して行きます。もちろん胎児にもその成分は移行してしまうということが考えられます。
それにより胎児の肺の形成が上手くできなくなってしまう可能性があることから、喫煙者と非喫煙者の“乳幼児突然死症候群”の割合を比べてみると喫煙者の方が4倍も高いというデータが存在しているのです。
それ以外にも『出生後気管支喘息』や『気管支炎』などの呼吸器に関する疾患のリスク、『先天奇形』の発症率も上昇してしまう可能性が指摘されています。
同時に母体にとっては喫煙による影響、肺がんや慢性閉塞性肺疾患(COPD)、虚血性心疾患のリスクも上昇させてしまう可能性がありますので、早い段階で禁煙をした方が良いでしょう。
■吸わない人でも怖いのが「副流煙」
では、“私はタバコは一切吸わないから大丈夫”と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし実は、一概に全く問題ないとは言えないのです。
もちろん喫煙者と比べればそのリスクは少なくなりますが、現在問題となっている“副流煙”は、主流煙とは異なってフィルターを通さずに直接入ってくるので生体に取り入れられる化学物質の量が多くなってしまいます。
それによって自分では意識していなくても生体内に、タバコの有害成分を摂取してしまうこともありえるでしょう。
もちろん自分自身で喫煙している場合は“主流煙+副流煙”の両方を吸い込むことになりますので、さらに生体への影響が大きくなってしまいます。
特にご家庭でタバコを吸う方がいらっしゃれば、副流煙に気を付けるようにしてください。もし夫や周囲の人たちに喫煙者がいる場合は、なるべく外で吸って頂く様にして、少しでも副流煙の摂取を避けるようにしてください。
また、外出した際にどこからかタバコのにおいがしたこともあるかもしれません。“におう”ということは“生体内に取り入れている”ということになります。近くに喫煙所等がある場合はなるべく離れるようにした方が良いでしょう。
■妊婦は「1本くらいなら…」もダメ!喫煙依存からの脱却しましょう
喫煙による影響はたくさんありますが、その中でもやはり気を付けなければならないのが“ニコチンによる依存性”です。妊娠したとわかったからすぐに禁煙したという方も多いかと思われますが、恐らくタバコを吸いたい気持ちになってしまったということが何回もあったのではないでしょうか?
依存症のメカニズムとしては、タバコを吸うとニコチンが摂取され、それが脳に到達すると快楽物質であるドーパミンが放出されて、一時的に落ち着いたという気分になります。それにより、喫煙習慣がある場合、“イライラする=タバコを吸うと落ち着く”と考えてしまう方が多いために、依存性となってしまうのです。
喫煙習慣が過去にあった方は一本吸うとその気持ちを思い出してしまい、ついついまた習慣化されてしまう可能性は否定できません。
ですから喫煙習慣があった妊婦さんは将来の子供ためにも一本の誘惑に負けないよう、また一本くらいならと考えずにこれまで通りの禁煙生活を続けるようにしましょう。どうしても吸いたくなってしまったらガムをかむ、飴をなめるなどして口さみしさを紛らわしてくださいね。
いかがでしたでしょうか。
もちろん、タバコだけではなく胎児にはいろいろと気を付けなくてはなりません。今回はタバコについてフォーカスを当てましたが、妊娠中は何かと気になるもの。生活習慣のみならず風邪などの感染症、ストレスなどにも気を付けてください。
これまで色々とお伝えいたしましたが、あまりにも気にし過ぎてしまうとそれがストレスとなってしまい、かえって体に良くありません。副流煙に関しては、気が付いた時は避ける程度にするなど、日常生活を送っていくにあたって、適度な注意の仕方をしてくださいね。
【参考】
※ 喫煙妊婦の赤ちゃん、体重軽く…血流悪化影響か – YOMIURI ONLINE
【著者略歴】
※ 川上 智史・・・北里大学大学院医療系研究科医学専攻博士課程修了、医学博士。予防医学を専門とし、医学的に美と健康に主眼を置き研究を続ける。各種教育機関や講演会において予防の重要性を啓発している。