設計から発射まで大学生が手がける! 東海大学ロケット打ち上げサークル「TSRP」インタビュー

学生の窓口

東海大学には『東海大学チャレンジセンター学生ロケットプロジェクト』(略称TSRP)というサークルがあります。同サークルでは、ロケットの設計・開発・組み立て・発射まで全てを学生の手によって行っています。エンジンの開発までも手掛けるという恐るべきサークルで、学生ロケットによる最高到達高度の日本記録「2,403m」(2016年2月現在)を保持しています。今回はこのTSRPを取材しました。

『東海大学チャレンジセンター学生ロケットプロジェクト』(以下TSRPと表記)代表の東海大学 工学部4年の浦橋悠太郎さん、同4年の植松千春さんにお話を伺いました。

↑TSRP代表の浦橋悠太郎さん(右)と植松千春さん(左)

■アラスカ大学とのコラボから始まった!

――TSRPができた経緯というのは?

浦橋さん 20年前にアラスカ大学フェアバンクス校と一緒に観測ロケットの観測機器を開発するために立ち上がった学生プロジェクトそもそもの始まりです。

――なるほど。

浦橋さん それがうまくいって一定の成果を挙げのですが、そのプロジェクトが終わるときが来まして。日米共同観測ロケット打上実験と平行してアラスカ大学との共同ロケット打上製作を2001年に行っていましたが、そこから最終的にすべて自分たちで作ろうという流れになりました。

植松さん それが15年前のことです。

――チャレンジセンターというのは何なのでしょうか?

浦橋さん 東海大学チャレンジセンターというのは、実践的な教育の場を提供するために設けられています。

国際交流・地域活性・ものつくり・社会貢献など学生が自由な発想で企画したプロジェクト活動を通じて「自ら考える力」「集い力」「挑み力」「成し遂げ力」を体得する場

となっていまして、ここに認められると予算が下りるなどの支援が得られます。TSRPは2006年から所属しています。

植松さん また、TSRPは東海大学工学部航空宇宙学科の公認組織になっています。TSRPの活動は航空宇宙学科の授業として認められていますので、履修登録すれば単位が取得可能です。

――その点が普通のサークルとは違っているのですね。

■ロケットは「メード・イン・湘南キャンパス」!

――ロケットの開発は全て学生の手によって行われているそうですが?

浦橋さん はい。設計、開発、制作など全て学生が行っています。

――エンジンの開発もゼロから行っているのですか?

浦橋さん そうですね。

――ロケットのパーツは全て自作なのですか?

浦橋さん 基本はそうです。ただ、高い精度が要求されて自分たちでは作れない一部のパーツは、設計図と部材をキャンパスに常駐している職員さんに渡して作っていただいたり、協力していただける外部の業者さんに委託して製作をしています。それ以外は全て学生が自作します。

――ということは、ロケットはほぼ「メード・イン・湘南キャンパス」なのですか?

浦橋さん そうなりますね(笑)。

――エンジンのテストなどは?

植松さん エンジンの燃焼実験も学生が行います。ただ、最近はエンジンが大きくなっていて、1回テストするだけで数万円掛かるようになってきました。ですから昔のように何度もテストしてその都度データを取って、といった形ではなく、コンピューターシミュレーションを十分やって、それを活用しつつ行うようになっています。

――そこまで自分たちでできるのはすごいですね。

植松さん 大学の環境が恵まれているというのもありますね。キャンパスが広くて周りにあまり騒音などで迷惑を掛けずに済んでいますし。

■さらなる大型化を目指して進む開発! 協賛メーカー絶賛募集中!

――年に何機ぐらいロケットを打ち上げますか?

植松さん 3-4機ですね。年に2回、夏に秋田県能代市、冬に北海道広尾郡大樹町でロケットを打ち上げるのは定例なのですが。

――かなり予算が掛かるのではありませんか? 年間予算というのはどのくらいなのでしょうか?

浦橋さん 2015年度は300万円程度でした。

植松さん ただし、その中にはメンバーの交通費や宿泊費は入っていません。みんな手弁当なんですよ。これがけっこう大変で(笑)。一度打ち上げに参加すると実験期間が約一週間あるので一人当たり7万円とか掛かっちゃいますし。

――それは大変ですね。では、もっと協賛してくれる企業などを広く求めた方がいいですね。これだけ実績のある活動をしていらっしゃるのにもったいないですね。次はいつロケットを打ち上げるのですか?

浦橋さん 3月2日から3月5日にかけて北海道大樹に打ち上げるロケットの準備で今忙しくしています。これは「40号機」と「41号機」です。

*……TSRPの打ち上げるロケットには連番で番号が振られています。例えば41号機は「H-41」と呼称されます。

――一度に2機打ち上げるのですか?

植松さん 実は2015年は能代での打ち上げを行いませんでした。その分時間をかけてロケットの開発を行ってきました。今度のロケットはさらなる大型化を目指して作られた全く新しいものです。

――どんな点が新しいのですか?

植松さん 新しくない点を探すのが難しいほど新しいです(笑)。新規要素の塊のようなロケットで、主構造の設計も新しくやり直していますし、エンジンの配管回りも一新されています。次の世代の設計手法を確立すべく作られたロケットです。今まではφ150mmだったのが、φ180mmと一回り大きくなったのも特徴です。

■学生団体で一番早く宇宙空間にロケットを飛ばす!

――TSRPの目指す目標は何でしょうか?

浦橋さん 「最高高度100kmに到達すること」、そして「学生ロケットで一番早く宇宙空間に達すること」です。

――いつ達成できるでしょうか?

植松さん 現段階では分かりません。現在はまず「10km」の最高高度に到達するための開発が進んでいます。まだ詳細を申し上げることはできませんが、次に能代で打ち上げる予定の「42号機」は、さらなる高高度に到達するための新しいロケットになるはずです。

というのは、42号機では「超音速飛行」を目指しているのです。超音速飛行ができるかどうかというのは、飛行特性が変わってくるので大事なポイントです。

――なるほど。着実に進化していっているのですね。

浦橋さん 「自分たちの代ではここまでできた」と代々受け継いで、いつかきっと宇宙空間に達することができると思います。先輩たちの技術、熱い思いを引き継いで後輩のみんなには頑張ってほしいと思っています。私たちもそうしてきましたので。

――ロケットの制作、打ち上げで楽しい点とはどんなことですか?

植松さん いろんな面で成長できることでしょうか。自分の思い付いたことをとことん試せて、実践でき、たとえ失敗してもその失敗がなぜ起こったのかを考え、次につなげていく。そういうことができるのがいいですね。

――失敗しますか?

植松さん ええ(笑)。何度も失敗しました。

――浦橋さんはいかがですか?

浦橋さん 熱中してできること、夢中で取り組めることが楽しい点ですね。夢中になり過ぎてしまうのが問題なんですけれども(笑)。また、人と人との関わり方の重要さを学べる点はいいところだと思います。やはり人が大事です。仲間がいないとできませんからね。

――ありがとうございました。

今回取材に伺ったのは2016年2月23日。北海道広尾郡大樹町で3月2日から3月5日にかけて行われるロケット打ち上げの最終準備のときでした。2月27日には、記事内で触れた「新しくない点を探す方が難しい」という、新設計の「H-40」「H-41」が飛び立ちます! この後に続く何号機かがきっと高度100kmに達することでしょう。これからもTSRPからは目が離せません。

※追記
「H-40」「H-41」は無事打ち上げ、飛行に成功しました!

⇒『東海大学チャレンジセンター学生ロケットプロジェクト』公式サイト
http://www.ea.u-tokai.ac.jp/srp/

(高橋モータース@dcp)

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