日本人の平均貯蓄額1209万円は本当?統計データの正しい見方
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貯金
金融広報中央委員会が2015年11月5日、2人以上の世帯を対象とした「家計の金融行動に関する世論調査」を公表しました。
調査の結果、金融資産の保有額は平均1,209万円。なんと2014年より27万円増という内容でした。
この結果を聞いて、みなさんはどう思いますか?
これが日本人の平均貯蓄額だということですから、「本当に?」という疑問が湧いても当然だと思います。
もちろん、この数字が間違っているわけではありません。しかし、隠されている部分がいろいろとあるのです。
■平均貯蓄額は50歳代以降が引き上げている
まずは、年代別の平均貯蓄額を見てみましょう。
20歳代・・・189万円
30歳代・・・494万円
40歳代・・・594万円
50歳代・・・1,325万円
60歳代・・・1,664万円
70歳以上・・・1,618万円
ここからわかるのは、50歳代以降が貯蓄額の平均を引き上げていること。
子育てが終わった世代が平均を引き上げているのですから、現在進行形で子育てをしている30~40代の世帯が「1,209万円が日本人の平均貯蓄額なんです」といわれてもピンとこなくて当然だというわけです。
次に注意するべきポイントがあります。この調査結果からは、こんな事実もわかるのです。
「金融資産を保有していない世帯が約3割にのぼる」
要するに、貯蓄が0円の世帯が、全体の30%もあるということになるのです。ちなみに年代別に見ていくと、次のような数字になります。
20歳代・・・36.4%
30歳代・・・27.8%
40歳代・・・35.7%
50歳代・・・29.1%
60歳代・・・30.1%
70歳以上・・・28.6%
こんなに貯蓄がない世帯が多いのに、なぜ平均の貯蓄額が1,200万円を超えるのでしょうか?
■中央値で見ると年代別貯蓄額は大きく変わる
その点を明らかにするため、「中央値」という数字にも登場してもらうことにします。
今回の調査の中央値は、「400万円」
平均貯蓄額は「1,209万円」、貯蓄額の中央値は「400万円」。
ん? この中央値っていったいなんなのでしょうか?
中央値とは、調査対象世帯を保有額の少ない順(あるいは多い順)に並べたとき、中位(まんなか)に位置する世帯の金融資産保有額のことです。
たとえば、自分の金融資産保有額が中央値(下の例では400万円)である世帯からみると、保有世帯のちょうど半分の世帯が、自分の金融資産保有額よりも多くの金融資産を保有している。
そして、ちょうど半分の世帯が自分の金融資産保有額よりも少ない金融資産を保有しているということになるのです。
つまり一部の貯蓄額の多い世帯が、平均を大きく引き上げているのです。
ということは、中央値の方が平均額よりもずーっと、世帯全体の実感により近い数字になると考えられます。
各年齢別の中央値は、こうなるわけです。
20歳代・・・68万円(平均189万円)
30歳代・・・213万円(平均494万円)
40歳代・・・200万円(平均594万円)
50歳代・・・501万円(平均1,325万円)
60歳代・・・770万円(平均1,664万円)
70歳以上・・・590万円(平均1,618万円)
統計資料は、使う側の意図によって都合よく切り取られて使われます。一部の数宇に騙さられず、数字を見る目を養っていきましょう。
(文/ファイナンシャルプランナー・岡崎充輝)