20分以上は効果がない!? 心肺蘇生はいつまで続けるべきなのか
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総務省消防庁によれば、平成26年に心肺停止状態で病院に運び込まれた人の数は124,951人。決して少なくありません。AEDも普及し、心肺蘇生は1分1秒が勝負だといわれますが、実際のところ、どれくらいの時間まで有効なのでしょうか?
■20分以上の心肺蘇生は無意味?
心肺蘇生はいつまで続ければ意味があるのかについて、多くの議論が行われてきました。
アメリカの救命救急医の協会であるNAEMSPでは、2000年に「心肺蘇生は20分以上続けても効果がない」と発表しています。
しかし、これについてはデータが乏しく、また、最近はこの内容はNAEMSPでも繰り返し発表されてはいません。アメリカ心臓学会(AHA)では、限定されたデータからのこうした見解を信じるべきではないという意見もあります。
では、心肺蘇生は何分まで効果があるのでしょうか。
■蘇生しても「生存率が低い条件」
「何分」という時間での明確な定義はありませんが、患者の状態から、「それ以上は心肺蘇生の効果がない」とされるガイドラインがあります。
救命措置には2種類あり、救急車が到着する前の、特別な医療器具を使わない措置を一次救命措置、救急車などの医療機器や医師が到着したあとの措置を二次救命措置といいます。
一次救命措置においてこのガイドラインは、次の3つの条件を満たしている場合です。
(1)「救命救急医が心肺停止の瞬間に立ち会っていない」
(2)「電気ショックを与えられていない」
(3)「移動の前に一度も脈が戻っていない」
病院に運ばれた人のうち3.1%が蘇生していますが、この3つの条件をすべて満たしていた人の生存率は776人中3人、0.4%でした。
二次救命措置では、条件は5つです。
(1)「救命救急医が心肺停止の瞬間に立ち会っていない」
(2)「倒れる瞬間が目撃されていない」
(3)「その場にいた人により心肺蘇生が行われていない」
(4)「電気ショックを与えられていない」
(5)「移動の前に一度も脈が戻っていない」
これらの条件を満たしていた人で蘇生した人は、なんと1人もいませんでした。
しかし、これらの条件を満たしていない場合、生存率は上がります。
心肺停止状態になって病院に運び込まれた人全体の生存率は5.4%でも、一次救命措置の条件を1つ以上満たさないものがあった場合は11.9%に上がります。二次救命措置の条件を1つ以上満たさなかった場合の生存率も7.9%になります。
■30分以上でも蘇生の可能性ある
アメリカのある病院では、病院に運び込まれて蘇生した11%のうち、90%が16分以内の蘇生措置を行われていたというデータもあります。この病院では24分間心肺蘇生を行って脈が戻った人もいました。
また、韓国で行われた調査でも、20分しか蘇生措置を行わなかった場合の生存率が2.1%だったのに対し、20分から30分行った場合は5.2%、さらに30分以上だと5.6%だったというデータが出ています。
心肺蘇生の効果はその人の状態やまわりの環境など、さまざまな要因が関係するので、はっきりと「何分以内なら効果がある」とはいえないようです。
とはいえ、もちろん早いに越したことはありません。もしまわりで急に倒れた人がいたら、まずは一刻も早く救急車を呼びましょう。
(文/スケルトンワークス)
【参考】
※Why We Should No Longer Terminate Resuscitations after 20 Minutes-JEMS