ボクシングトレーナー井上真吾「父親として、してあげられることは何でもしてあげたい」~子を想う人間力 (2/2ページ)

日刊大衆



 社会で負けないためには、仕事だけではなくて、幸せな家庭を築きたかった。僕は親父がいなかったぶん、家庭ができたら大事にしたくなるじゃないですか。子どもに対して、父親として何をしてあげたらいいんだろうって必死に考えるんですよ。子どもの目線で、自分がやられて嫌なことはしたくないし、うれしいことはどんどんやってあげたい。だから、子どもがボクシングで世界を獲りたいのであれば、どうすれば獲れるのか、そのためには父親として、してあげられることはなんでもやってあげたいんです。

 ただ、尚がプロになる時には、さすがに葛藤はありましたね。自分はプロとしての経験がなかったので、プロのトレーナーに任せたほうがいいんじゃないかって。でも、所属する大橋ジムの会長をはじめスタッフの方々が、自分の足りない部分を全部サポートしてくれて、自分は子どもだけに専念できる環境を整えてくれたので、不安はなくなりました。もちろん、トレーナーとしてやっていて、しんどい時もありますよ。でも、やっぱり自分がきっかけで子どもたちがボクシングの道を選んだのに、あとは勝手にやってくれなんて言えないですよね。あいつらが、がんばっている以上は自分もがんばらなければいけないですよね。

 そうやってきた結果、尚は世界王者になりましたが、修正すべきところは、まだ、たくさんあります。だから、世界王者とは思えないんです。トレーナーとして、選手の悪いところを見つけるのが、仕事だったりするので、そういうのが、一切なくなって、誰とやっても負けないってところにたどり着けたら、ようやく世界王者と思えるのかもしれません。

撮影/弦巻 勝

井上真吾 いのうえ・しんご
1971年8月24日、神奈川県座間市生まれ。中学卒業後、塗装業に就き、二十歳で結婚、独立し、明成塗装を設立する。ボクシング歴はアマチュア2戦2勝。トレーナーとして、14年に長男・尚弥が、当時世界最速となる6戦でWBC世界ライトフライ級王座獲得に導く。翌年、尚弥はわずか8戦でWBO世界スーパーフライ級王者となり、世界最速2階級制覇の記録を樹立。次男・拓真は、同年に東洋太平洋スーパーフライ級王座獲得。現在も大橋ジムで2人のトレーナーとして活躍している。

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