人格と成功は無関係!?世に乱舞する自己啓発への疑問|やまもといちろうコラム

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成功の人柄の関係性とは(写真はイメージです)
成功の人柄の関係性とは(写真はイメージです)

 山本一郎(やまもといちろう)です。名前は平凡ですが、それなりに波乱万丈な人生を送ってきました。

 その中でも、投資に関してはそれなりにうまくいった時期がありました。いまでも投資活動は自分なりに頑張っていますが、往年のような収益性には程遠く、動くほど損をすることもあり得るということで、いまでは柄にも無く仕事と私生活のバランスをとりましょうとか言い始めてしまう昨今です。

 ただもともとケチでしたから、慎ましやかな生活を送ってきたわけですけれども、それが理由で、いろんな嫌なこともたくさんありました。

 最近、成功哲学本や、自己啓発が多数世の中に情報として乱舞するわけですけれども、ちょっと目を惹いた記事がありました。この記事が「駄目だ」というわけではなく、腐すつもりはありません。ただ、自分がかつてそれなりに収益を得ていたときにこんなことをしてたっけか、とか、今でも収入自体はそれなりにあるわけですけど、そんなことを心がけているだろうか、と思い返すと、自分で赤面してしまうような状況なわけですね。

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■人格と成功は無関係

 例えば「1.『変化』を歓迎し、新たな環境に進んで飛び込む」と言われて、何か変化してるか、と言われると、子供が成長して受験に成功して小学校に入ったので、そこの小学校のコミュニティとどう付き合うかや、兄弟が別々のところに通うので夫婦やお手伝いさんを含めてどう通学通園を手配しようかといったあたりは変化と言えば変化です。

 ただ、二年半前まで極東ロシアやカザフスタンを往復したり、自分の手で新しい事業の立ち上げに参画したりしていたころに比べると、圧倒的に変化しなくなっています。行動範囲が、もう圧倒的に千代田区。揺るぎないというか。でも、所得の点からいうと、あれだけ忙しくしていたときに比べて、人を雇って任せるスタイルになってから、むしろ変化がなくなってからのほうが実入りが大きかったりするんですよね。

 で、記事の上ではあれだけ人格的に陶冶されているように見える6項目全部揃えても、年収2,000万しか入らないという……。夢が小さくないかとか、それだけの人であればその十倍は稼いでもおかしくないだろうと思うわけなんですけれども、自分の人生を振り返って考えると、あんまり人格と成功って関係ないと思うんですよ。

 自分の人生で一番稼いでいたころの自分は相当なクソ野郎だと思いますし、実際にいまでも充分クソかもしれませんが、ただ、ひとつの技法、目利きやタイミングを見抜く感性は相当に研ぎ澄まされていたと思います。それは、人格由来のものではなく、どうせ世の中ろくでもないからと割り切って打った博打が思い切り良く、単にそのときの市場の流れにハマっていたから大当たりをしただけだと自省するわけです。

■世界観を年収で計ることはできない

 年収とスキルというのは、多かれ少なかれ自分の生きてきた、受けた教育や環境や志向や「ハマったこと」との見合いの中で、それが時流に乗るか乗らないか、カネにできる環境が身の回りにあったかどうか、雇った人がたまたま自分の弱点を補ってくれる人であったかどうか、といった、かなり外部的な要素で成り立っていて、いまこれが流行しているからといって飛び乗ったところでだいたいみんなオケラ街道を歩くことになるわけですよ。

 つまり、人生を賭けて培ったものが将来あたるかどうかは誰にも分からないわけで、自力でどうにか収益を上げるか、能力があって乗っている人にくっついて収益を上げるかといった、ストラテジーの産物でしか年収は計れないんじゃないのと思うのであります。

 翻って、自分が生きている投資家界隈でも、ICT業界周辺でも、見ている限りは人格的に本当にこの人は優れているなという人物は希少です。上場時点では若くて決断力があって人が良いと思われていた人物が、散財し終わったあとにカネで繋がっていた人たちがいなくなってから焦り始めて、人間不信になったり貧すれば鈍する決断を繰り返すケースは後を絶ちません。

 結局、その時点での断片的な年収を見てその人になろうと情報を集めるよりは、人生全体を振り返ったり、どういう自分になりたいのかという内的な目標がはっきりしないと、なかなか手が届かない何かがあるのだろうと思うわけであります。それは、クソ野郎なりに43年間生きてきた結果、身の回りのやつがどんどん脱落していって、あれだけ仲良くしていたやつらがいなくなる世界観を年収で計るのはたぶん無理だ、という結論に達します。

 もちろん、これから自分なりにスキルを磨いて社会で頑張っていくのだと考える人が、これらの記事を読んで人格面での熟成を志すのは悪い話ではありません。「流れを作る人」ではなく「流れに乗る人」としての成功を狙うなら、いい人であったほうが成功の確率は上がることでしょう。

■人格が先か成功が先か

 ただし、そこで規定した「成功」というものが、読んだ人にとって本当の成功なのかというと微妙なところなのです。本当の意味で、人生は何があるか分かりません。お金がもらえて良かったね、と思っても、お金で買えるたぐいの幸福では満足できない事態は世の中にはたくさんあるからです。健康だったり家族だったり、そういうものも充分に満たしてなお、収入があって欲しいものが欲しいときに買えるときに、不幸ではない感じが得られるだけです。

 個人的には、私のような人生を送って幸せになれる人はそう多くないと思うので、私は私なりの成功体験をどーんと語るようなことはしませんが、幸せになるためにまず稼げるようになろうと考えるのであれば、結局は「ちゃんと勉強してきたか」ということが問われることになります。それに、うまくいったと思った瞬間から、人間どっかで転落するようにできてるんだろうなあとも思うわけですよ。

 成功と人格というのは、実に難しい問題だと感じます。成功に見合う人格しかり、人格ゆえの成功しかり、どっちも後付けの解釈に過ぎないのだろうなあ、と。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

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