国有地を60年間も不法占拠…”立ち退き危機”の京都の集落を直撃した
京都市北区衣笠開キ町にある砂防ダム内の、不法占拠集落が立ち退きの危機にあるという。砂防ダムとは、川の土砂を貯めることが目的の設備である。貯水機能はない。普段は小さな渓流が流れていて、その周りは河川敷になっている場合が多い。
■突然の退去勧告に戸惑う住民たち
実際に現地に足を運んでみる。河川敷にぽつぽつと家が建てられている様子を想像していったのだが、実際には隙間なく家が建てられていた。
床はコンクリートで固められているし、鉄製の丈夫な橋もかかっている。一時しのぎに作られた集落ではなく、しっかりと、地に足をつけて住んでいる印象を受けた。住み始めて60年以上経っているため、老朽化が進んだ家屋も多い。
河川管理者の許可のない不法占拠集落だったが、去年から急に管理が厳しくなった。建物には、警告の貼り紙が貼られていた。「河川管理上、支障があるので所有者は平成28年3月25日(金)までに以下へ連絡の上、工作物を撤去し現状に回復してください」
取材の時にはすでに、期日を過ぎていたが、撤去する気配はなかった。実際に取り壊された建物もあったが、行政代執行だった。
貼り紙には「ここに建設されていた廃屋は、荒廃が進み増水時に下流へ流出し、災害の原因となるおそれがあるなど、河川管理上、支障があったため京都府が平成28年2月10日に工作物を撤去しました」と書いてあった。数百万円をかけての作業だったという。
「突然の退去勧告に戸惑っている住人が多い。何十年も何も言わなかったのに、いきなり出ていけはひどい。生存権の侵害にあたるのではないか?」
と語る人もいた。
「東京オリンピックに伴う規制の強化ではないか?」
「韓国や北朝鮮との関係悪化から、主な住人である在日コリアンに圧力をかけている」
という説もあった。
ただ、実際には防災の意味合いが強いらしい。昨今、気象の変化が著しく、大きな水害が毎年のように起きるようになった。事実、2012年には、衣笠開キ町も水害があり被害があった。
川沿いには、突っ張り棒で強引に土台を作っている場所も多く、いざ大水が来た時には、簡単に壊れて、そのまま下流に流されて事故になる可能性は高い。
今まで、京都市は「立ち退き命令」を出すことにより住人から反発を食らうことを恐れていたが、それよりも大きな水害が発生した際に世論から「今まで何もしてこなかった罪」を問われる方が厄介だと認識したのではないだろうか? 夏の水害の季節までに、話はまとまるのか、気になるところである。
- 文・村田らむ(むらたらむ)
- ※ライター・イラストレーター・漫画家。ホームレス、新興宗教、犯罪などをテーマにした体験、潜入取材を得意とする。著書は『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)など多数。近著に『禁断の現場に行ってきた!!』(鹿砦社)がある。