悪質とされたボランティア団体と震災報道のゆくえ|やまもといちろうコラム

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悪質なボランティア団体としてネットで批判を受けていた「TSUNAGARI」とは……?(※画像はイメージです)
悪質なボランティア団体としてネットで批判を受けていた「TSUNAGARI」とは……?(※画像はイメージです)

 山本一郎(やまもといちろう)です。熊本の大地震は心を揺さぶられたものの、そっち方面はあまり詳しくないので触れないでいたところ、うっかりテレビ番組に出演したら熊本地震について喋らざるを得なくなり、当たり障りのない話しかできませんでした。我ながら、不甲斐なさを反省しています。

 そんな熊本の地震で、かねてから悪質なボランティア団体としてネットで批判を受けていた『一般社団法人TSUNAGARI』(以下、「つながり」)の件が話題になっていました。すでに現地での反響も含めBuzzfeedが取り上げていますが、ちょうど現地に入っていた複数のライターさん達も本件で取材をしていたようです。

批判殺到の「押しかけ」ボランティア問題 現場で当事者に話を聞いた

 結論から言うと、どうもこの「つながり」も、現地ではそれなりに役に立っているようで、ほか団体のボランティアスタッフ20名ほどと一緒になって現地の物資仕分けから道路を塞いでいる倒壊した建物の残骸を処理する作業に従事しているとのことでした。

 まあ、役に立っているならそれでいいんじゃないでしょうか。

 で、彼らがクラウドファンディングで集めたとされる900万円以上のお金については、すでに発表のとおり全額を御船町に寄付することで着地しているようです。本当にそうなるのかなと思って、クラウドファンディングを実施したReadyFor株式会社に聞いてみたところ、確かにそのような手続きとなっています。と回答がありました。

 4月22日になって、県社会福祉協議会が機能し始め、やや支援が後手に回っていた大分県方面の被害についても状況が分かるようになってきたため、問題の全容が見えてきたのかなあと思うわけなんですが、一方で、これらのSNSと被災地の問題も浮き彫りになり始めました。藤代裕之(43)さんが刻一刻と状況が変わる被災地現場と、時間差で問題が拡散していくSNSのあり方については、真正面からいろいろ論じられています。

ソーシャルメディアの拡散が「タイムラグ」を生み、被災地のニーズに合った支援を難しくしている

 つまり、ソーシャルで拡散するころには問題が解決している場合もあり、認知が広がったころに問題が周知されることでタイミングを失した誤報が広がってしまうことの是非もあるよねといった話です。

 何と言うか、ソーシャルで動員革命とか暢気に言えていたころが懐かしいレベルの話ですが、確かに古い話題が現在進行形でSNSにて語られることも多く、誤報が広がっても当事者による訂正がなかなか届かない現状は問題かもしれません。

 結果として、ネットニュースの「速報性」さえも、むしろそのロングテールゆえに解決済みの情報更新というか上書きをしなければならないことに無関心となりえます。いつまでも古いネタがぐるぐるとSNSで回ることになるのでしょう。

■震災に便乗する面々も

 そうなると、被災地がSNSの情報流通の根拠となるような最新情報を掲載し続け、それをみんな見ろ、という一次情報の確認の徹底が必要という話になるわけですが、困ったことに、ただでさえ大変な状況に陥っている被災地がネット住民の正しい状況理解のために、ネットに人を割いて最新情報を掲載する手間をどう取るのか、という問題はどうしても発生してしまいます。

 それでもきちんとホームページでボランティアの受付から不足物資の掲載まで出してくれたほうが、その地域で何が問題となっているのか分かるでしょうという話でもありますが。

 さらには、被災地報道における既存マスメディアの「お行儀の悪さ」なども、SNSで広く問題視されるようになってきました。テレビ局などは、放送法の要請で大事故大事件があったときこれを報じることを義務付けられているため、この辺は程度問題なのでしょうけれども、寝ている被災者に強烈なライトを当ててテレビが実況中継をしているというような騒ぎを見ると、ある種の代表取材制のようなものにして対応したほうがいいんじゃないかとさえ思うようになってきます。

 良くも悪くもSNS界隈が成熟してきた一方、東日本大震災の教訓は相応に周知されているのかな、と思う次第ですが、個人的に「東日本大震災のときは、あれほど前に出てきてうざいぐらいあれこれ言っていた孫正義さんが熊本の件では静かな件」と「東日本大震災であれだけ微妙な言動を繰り返していた上杉隆が、どういう理由か勝手に名誉回復したことにしている件」はとても気になりました。どさくさに紛れてタバコ銭を集めるがごとき催しを開催されるなどしてますが、何をしているのでしょうか。

上杉隆君の名誉回復を祝う会(5月19日)

 かねがね思うんですが、この手の大災害が起きるたびに、知識人や著名人の知的な良し悪しや本性のようなものが現れるというのは、実に興味深い現象だなあと思う次第です。

 まあ、一番どさくさに紛れているのは熊本の大地震のお陰で消費税引き上げを見送ったり、あれやこれややろうとしている筋なんでしょうが。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

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