少年ジャンプが炎上商法?漫画家と編集部”公開喧嘩”の怪しい舞台裏

デイリーニュースオンライン

「フードファイタータベル2」より
「フードファイタータベル2」より

 天下の集英社が何故こんな茶番を──!? 5月7日にTwitter上で、『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』、『ピューと吹く!ジャガー』などの代表作で知られる漫画家のうすた京介(41)と少年ジャンプ+編集部が行った舌戦が世間の注目、そして批判を集めている。

 少年ジャンプ+といえば、講談社の少年マガジン、小学館の少年サンデーと並んで人気を誇る少年ジャンプを擁する集英社が運営する、Webコミック配信サイト兼スマホ漫画アプリである。その編集が、ギャグ漫画の大御所であるうすた京介と何故喧嘩を繰り広げることとなったのか。

■編集の煽り文章のクオリティが低いと揶揄

 ことの発端は、うすたがTwitterで行った投稿である。自身が現在、少年ジャンプ+にて連載しているギャグマンガ『フードファイタータベル』の最新話が配信されたのを告知した際に、作品の最後に入った編集の煽り文章のクオリティが低すぎると揶揄したのである。

 これに少年ジャンプ+の編集部公式Twitterアカウントが反応。うすたの原稿の完成が遅く、煽りに時間がかけられないためにつまらないものになってしまったと反論した。すると、さらにうすたが編集に一度も面白かったことはないとさらに反論。

 続けて、合コンに週2回も行っている編集の態度を批判し、自分より面白い漫画が描けるのかと挑発すると、編集部アカウントは合コンは月に1回であり、さらにはその合コンをうすたの原稿が遅れたことによりキャンセルしたことがあるとさらに反論したうえで、「僕達もプロの漫画家ではないので面白いもの描けるかわかりませんが、うすたレベルのものなら描けるんじゃないでしょうかね」と、ギャグ漫画の大家であるうすたと同じレベルの漫画が描けると豪語したのである。これにうすたは激怒し、来週の漫画は本来14ページのところを7ページしか描かない、残りの7ページは編集部側が描けと言い放つ事態となった。

 当初、このやり取りは、完全に険悪になっている両者に困惑する者、面白がる者などが群がり、かなりの注目を集めた。実際、こうした大手出版社と漫画家のトラブルというのは、2008年に人気漫画『金色のガッシュ!!』の原稿を少年サンデー編集部が紛失したとして、漫画家の雷句誠(41)が小学館を相手に紛失した原稿の市場価格と慰謝料を求めて訴訟を起こした件(のちに両者の間で和解が成立)など、度々起こっていることであり、今回もそうしたトラブルがSNSという公の場に晒されたのではないかと思われていたのだ。

 ところが、うすたが途中で、『すいません皆さん…もうちょいお付き合いくださいませ…』と投稿したことで、この論争が“プロレス”なのではないかとの見方が広がり、話題は一気に別の方向へ。なかば本気とも思える煽り合いに不快感を示す意見や、集英社ともあろうものが、こんな見え透いた真似をやるのかという疑問が溢れ、少年ジャンプ+のアカウントに意見する者や、集英社に直接電話をかけて真意を問いただそうと呼びかける者も現れる事態となった。

 その後、両者はうすたの提案通り14日に公開される作品を、「外国人観光客にたべる達が日本のマナーを教える」という同じテーマで編集部とうすたが7ページずつ描き、どちらの方が人気を獲得できるかをアプリでの投票で決める勝負をすることを発表。

 うすたの担当編集の二人が原作と作画をそれぞれ担当した漫画と、うすたが描いた漫画が両方公開される運びとなった。当然、漫画家としてのキャリアも無いであろう担当編集の描いた漫画のクオリティは低く、うすたの圧勝とも言える状況になったのだが、世間では「うすたも勝負を意識したのか、ネタが過剰過ぎてつまらない」「ギャグに関していえば担当編集の方が面白いので、これをうすたが描けばよかったのでは」という声も多く、結果として多くの人がこの作品を知るきっかけにはなったものの、作品自体にネガティブなイメージを抱いた人も多かったようだ。

 なぜ、このような“炎上商法”ともいえることを、天下の集英社がやってしまったのか。出版社で漫画誌の編集をしている男性に話を聞いた。

「編集サイドのアイディアでしょうね。やっぱり大手の人には『自分が優秀』という自覚があるのか、こういう思い付きを絶対ウケる! と自信満々でやっちゃうところがありますから。雷句さんの小学館との一件でも、訴訟にまで至った背景には、雷句さんが連載の終了を求めていたにもかかわらず、編集部サイドから引き伸ばしにあったことや、編集サイドからのアイディアの押しつけにストレスを抱え、両者の関係が悪化していたことがあると言われていますし。実際、知人の漫画家さんにも、大手の編集に無理矢理ストーリーを変えられただとか、原稿を投げつけられただとか、そういう話をよく聞きますからね。無論、そうしたアイディアがヒットして名作になった、という例もたくさんあるんでしょうが、今回みたいにスベっちゃった時に誰が責任をとるんでしょうか。ちょっと穿った見方かもしれませんが、うすた先生が途中であんな呟きをしてしまったのも、このバレバレのプロレスをやらされることへのちょっとした反抗なんじゃないかって勘ぐってしまいますよね」

 男性の言う通り、うすたがプロレスを暴露するような発言をしたのがこの炎上商法へのせめてもの抵抗だったのかどうかはわからない。だが、豪華な作家陣を揃え、漫画のクオリティだけで勝負できるはずの大手出版社が、今回のような茶番を行って、結果として作品への印象を悪くするという事態を引き起こしてしまうのは、まさに愚行と言っても過言ではないのではないか。今後は純粋な漫画の面白さで注目を集め、我々を楽しませてくれるよう切に願うばかりである。

文・橘カイト(たちばな・かいと)
※1979年島根県生まれ。編集プロダクションを経て、フリーに。週刊誌などで芸能関係の記事を執筆。また、民俗学などにも精通し、日本のタブーにも数多く取材。主な著書に『真相!禁忌都市伝説』(ミリオン出版)ほか多数。
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