男にもあった!「42歳夫がリアルなマタニティブルーに…」その理由とは!?<連載第9回> (2/3ページ)
毎食大量に捨てる生ゴミ、それは当時の僕の虚しさを象徴していた。
日々の妻のストレスを受け止め、作った食事は食べてもくれない。次第に僕のストレスも蓄積されていったのだった。そしてそれを発散しようと週末に妻を外出に誘っても、妻はつわりで一歩も動けない。
僕らは仲がよすぎた。いつどこに行くのでも、一緒だった。だからいざひとりにされた僕は、行くあてなどどこにもなかった。
平日は心身が不安定な妻とがっつり向き合い、週末はそれを発散する場もなく、目的地もなくただ自転車を数時間こぎ街を徘徊するだけの週末が続いた。気がつくと僕は、完全なマタニティブルーにかかっていたのだった。
■身重の妻を支える「夫の役目」とは?
それからの数日は、ふたりの間にあまり会話もなく、どこかギスギスした空気がふたりを包んでいた。そんな、ある日。日替わりで食の好みが変化していた彼女のその日のオーダーは、卵だった。ネットで、卵サンドが評判のパン屋を近所で見つけたと、彼女ははしゃいでいた。
いつもなら「買ってきてやるよ」と自転車を走らせるところだが、僕はひとつの提案をした。
「ねえ、そのパン屋までデートしない? 卵パンデート」
恥ずかしさを隠すため、少しおどけて言った。すると、
「デート!? 嬉しいー! ちょっとお化粧するー」
ここ数日のどんよりとした空気がウソのように晴れ、妻は重い体を嬉しそうに起こし、化粧台に向かった。
「危ないから」と手をつなぎ、駅前にあるというパン屋まで、ふたり歩く。いつもなら15分で着くところが、妊婦のペースだと倍以上の時間をかかった。
途中、歩道のベンチに腰をかけ休むと、「暑い」と笑いながら、妻は汗をぬぐう。それを見た瞬間、胸が締めつけられた。
彼女はいま、母親にならんと必死に闘っているのだ。それを僕は「支えている」だの「受け止める」だの、何をそんなに偉そうに言っていたのだろう。もちろんそれらは必要なことだけど、彼女が真に欲していたものは、ただこうして手をつないで一緒に歩くことだ、そんな大切なことをいま思い出した。
その晩、僕は彼女をマンション下まで“ゴミ出しデート”に誘った。