人間社会に嫌気がさし、四足歩行となり草を食べ、ヤギとしてヤギと共に生きる道を選んだ男の物語

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人間社会に嫌気がさし、四足歩行となり草を食べ、ヤギとしてヤギと共に生きる道を選んだ男の物語

 「人間でいることに疲れた」  イギリス、ロンドンで暮らしていたトーマス・スウェイツさん(35)は殺伐とした競争社会に辟易していた。仕事も見つからず、個人的な悩みを抱え、毎日がストレスで押し潰されそうだった。このままでは精神もろとも崩壊してしまう。そう思ったトーマスさんは人間であることを一旦止めることを決意。  そこで選んだ道がスイスのアルプス山脈で、ヤギの群れの中でヤギとして生きることだった。 記事提供:カラパイア

出典: YouTube

Meet Thomas Thwaites The man who lived as a goat

 トーマスさんは1年かけ、ヤギのように四足歩行できるように義足ならぬ「ヤギ足」を作り上げた。また、草食のヤギたちに不審がられないよう、草を食べることができる人工的な胃の装置まで作り上げたのだ。

出典: karapaia

 入念な準備をしていざスイスに向かいヤギの群れと暮らし始めたトーマスさんだったが、やはり困難が待ち受けていた。その困難をこう語る。

 ヤギになるもなかなか大変でしたよ。四足歩行は思ったより難しく斜面では常に転んでました。それに食事は草だけです

 最初はヤギたちにも不審がられていました。本気でヤギたちが襲ってくると思ったことが度々ありました。あの角は凶器にもなり得ますから、恐ろしかったです。

 でも、そのうち順位制があるということを私に分からせようとしていただけなんだと気づきました。自分の順位を把握して立場をわきまえろってことだったんですね。

 その後、トーマスさんに最高の瞬間が訪れた。

 1匹のヤギが友達になってくれたのだ。彼女はどこへ行くにもトーマスさんの後をついてきた。トーマスに鼻をくっつけてきては、その存在を確認し、常にそばに寄り添ってくれた。

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 そしてついに、ヤギ飼いにこう言われそうだ。「ヤギの群れが君を仲間と認めたようだね」と。その言葉を聞いてとてもうれしかったという。

 日々の生活に疲れ切って、その環境から逃れたいと思うことがある人はたくさんいるかもしれない。しかし、トーマスさんのように動物になろうと決心する人はそうそういないだろう。そもそもなぜトーマスさんはヤギになろうと決めたのだろうか?

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 私が最初にヤギになると決めた時、多くの人にふざけてると嘲笑されました。でもとにかく自分の人生に嫌気がさしていたので、私には休暇が必要でした。当時は仕事もなく、多くの個人的な悩みを抱えていて、毎日の生活がストレスで押し潰されそうでした。

 そんなある日、友達が飼っている犬を散歩しました。私の横で穏やかな顔をしている犬を見た時にふと思いました。この犬には悩み事などなく、きっと幸せな人生を送っているんだろうな。うらやましい、一日でいいからその犬になってみたいと思ったんです

 しかし、トーマスさんはドッグフードを食べることに抵抗があったため、犬になることは諦めたという。

 ”ゾウになる”という選択肢も魅力的でした。でも、ゾウも人間と変わらない気がしました。悲しくなったり、怒ったり、過去のトラウマで悩むこともあるそうです。私が逃れようとしていたことばかりですよ。だからゾウも諦めました

 そして、最終的に行きついたのがヤギだった。

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 トーマスさんはヤギの心理学研究を行っている大学に志願し、スイスのヴォルフェンシーエッセンにある村でヤギを飼っている人物を見つけ出した。そのヤギ飼いは、夏の放牧地の間トーマスさんが自分の飼育しているヤギたちと一緒に暮らすことを許可してくれた。

 人工ヤギ足はマンチェスターにある義肢専用のクリニックの協力を得てデザインされた。

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human skeleton morphs into a goat for swiss alps project
 
 偽の胃袋はイギリスの アベリストウィス大学の専門家たちによって作られた。腰回りに装着でき、噛んだ草を他のヤギに気づかれることなくその偽物の胃の中に吐き出せるようになっている。そして、吐き出した草からミルクシェークのように必要な栄養素を吸い出すことができるようになっている。

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 そもそも人間や犬や猫などの単胃動物は、複数の胃袋を持つ牛やヤギなどとはエネルギーを作り出す方法が異なる。

 人間は、草の主成分であるセルロースを消化できず、有効なエネルギー減として利用することができないが、牛やヤギなどの反芻動物(はんすうどうぶつ)は、草やデンプンを発酵分解して酢酸、プロピオン酸や酪酸を主体とする揮発性脂肪酸(VFA)を作り出し、血液を介してそれぞれの組織に送りエネルギーとして利用している。

 この偽の胃袋のおかげで自分の胃で草を消化することができました。ヤギたちと同じように草を噛み、それを人工の胃袋にこっそりと吐き出し、反対側からVFAや微生物を吸い出しエネルギー源として利用することができたのです

 願いが叶って大満足だったに違いないトーマスさんだが、ヤギとして暮らしていくうちに大事なことに気付いたという。

ヒトも大変だがヤギの人生も大変だった

 私はとても大切なことを学びました。それは、ヤギの人生も大変だということです。彼らは生存をかけて戦うこともあります。毎日生きるため頑張っているんです。それが人生の一部なのです。

 もう1つ私が気付いたことは、ヤギの方が “いい人間” とういことです。ヤギはその瞬間を生きています。もっとリラックスして人生について考えたほうがいいと学びました

 その後、トーマスはアルプスでヤギと暮らした体験記を書き上げ出版した。本の題名はGoatMan: How I Took a Holiday from Being Human(ヤギ男:人間という存在から休暇を取った方法)でアマゾンから購入可能である。

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◆ヤギの言葉を理解するための科学者たちの試み

 動物がその環境に満足しているのかどうか理解することは難題である。そんな難題を解決するため科学者たちはヤギの表現方法に関する研究を行った。

 ロンドンにあるクィーンマリー大学でヤギの研究をしているアラン・マクエリゴット博士とエロディ・ブリファー博士は、イギリス、ケントにある「バターカップサンクチュアリ・フォー・ゴー」で暮らすヤギを対象としてある研究を行った。

 目的は、ポジティブ、半ポジティブ、ネガティブな状況においてヤギが声や行動でどのように表現をしているかに関して明確な理解を得ることだった。

 その結果、ポジティブな状態では、ヤギは耳を前に傾け、尾を上げる傾向があることを発見した。そして、鳴き声も安定しており、変化がほぼ見られなかったという。

 「動物の場合、ネガティブな感情を特定するほうが簡単で、ポジティブな感情を特定するのは難しいことです。鳴き声の微妙な変化や心拍数や耳のポジションなどの、小さなヒントでヤギたちの心境が分かるようになりました」と博士たちは発表している。

via:Why I decided to give up my life in London and become a goat in Switzerland:translated melondeau / edited by parumo

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