少しでも更生の足掛かりになれば。ヤクザの指を作り続ける人工ボディ技師
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海外メディア各誌で報じられていたのは、元暴力団構成員の社会復帰を助けるため義指を作り続ける人工ボディ技師、福島有佳子さんの姿である。
彼女の技術力は高く評価されており、福島さんが義指をかかげて光にかざす瞬間、まるでその指は彼女の本物の指か偽物か分からなくなる。そこにあるのは明らかに分かるような出来合いの物ではなく、素人目から見ると完全に自然な人間の指だった。
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Japan: Meet the woman creating fake fingers for ex-Yakuza gangsters
完成した指はすぐに注文主が引き取りに来る。
注文する人の多くは元暴力団の人たちだ。彼らの指詰めは指を刃物で自発的に切断する行為で、反省、抗議、謝罪などの意思表示として用いられ、自分の小指を切断し組に収める。
しかし、彼らが社会復帰したいと願うときに、失われた指は大きな障害となる。裏社会と決別し、社会復帰したいと願う人たちが福島さんの工房を訪れる。
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福島さんは過去20年間に渡り、元暴力団組員たちの小指を何百本と作り続けてきた。指がないと難航する職探しや結婚も、義指があれば可能性が広がる。彼らにも社会復帰のチャンスを与えたい。そう願って福島さんは義指を作り続ける。
福島さんが働くのは大阪にある、人工ボディを作る「工房アルテ」だ。そこでは病気や事故などで身体の一部を失った人たちのために義足や義腕なども作っている。
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元暴力団の指を作り続けるということ
「車の事故で指を失くしたら同情されます。しかしやくざの場合は全く逆です。刺青や失くした指が原因で社会復帰できないことが多くあります」
福島さんは元組員の社会復帰の手助けをしてきた功績で、2004年に、「第13回暴力団追放府民大会」で功労賞を受賞、2014年には内閣府『女性のチャレンジ賞』を受賞している。
しかし、元組員のために義指を作り続けるという決断は、彼女の人間関係を壊し、「やくざを受け入れている」と家族からさえ批判を受けたこともある。
1992年に施行された暴対法(「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」の通称)により、福島さんの仕事も忙しくなった。警察の監視は厳しくなり、日本経済もはじけた影響で(暴力団は資金源となる不動産を多く抱えている)、多くの組員が新しい人生を始めようと福島さんの工房を訪れた。
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福島さんの存在は口コミであっという間に暴力団の世界に広まっていった。特に刑務所にいた組員の間では有名となった。
義指の費用は約20万円。福島さんは彼らに義指を作る条件を設けている。それに同意しない場合は、指は作らない。
その条件とはもう二度と暴力団には戻らないこと。また「大阪府暴力団離脱支援センター」との連携し、センター側は社会復帰を願う元組員を福島さんに紹介している。
「本当に組を去ったのか確実な証拠が必要です。また、追加料金を払うから優先しろというのも許可していません。私の作った新しい指が気に入らないという元組員の方もいました。しかし彼らの脅しには屈しません。たとえ工房に来て家具を投げ飛ばされても。幸運にも、そのような事態は頻繁には起こりませんけどね。それに警察にも協力してもらっていますから」
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指詰めとは?
指詰めとは、封建時代に“博徒”と呼ばれる賭博者の間で行われていた習慣が発祥とされる。そして、この“博徒”がヤクザの前身と考えられている。借金を返済できなくなった博徒は、左手の小指の先を強制的に切断させられた。これにより、握力が弱くなり剣の威力が弱まる。つまり、その男の剣士としての能力は低下し、弱者となるのだ。
指詰めには鋭いナイフを使う。通常は、第一関節から上を切り落とし、切り落とした指を布に包み親分に差し出す。
一般的なイメージと異なり、この指詰めの儀式は自主的に行われることはまれであった。軽罪が続けば、さらなる切断もある。場合によっては第二関節、さらには右手まで切り落とす場合があることも伝えている。
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福島さんは、事故や病気によって体のパーツを失った人たちにも義肢を作っているが、それらの義肢すべての完成度が高く評価を得ている。
本物の指に近づけるため、20色を織り交ぜ1000通り以上の肌色を生み出す。指紋や、爪や動脈や屈曲など細かなところまで丁寧に巧妙にシリコンで作り上げる。義指はペンの蓋のように切断された指にはめることができ、5年から10年ほど持つ。
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日本警察によると、バブル崩壊や暴対法の施行により2009年には暴力団関係者の数は8万から5万3000人に減っているという。
また、福島さんの工房から電車ですぐの神戸では、日本最大の指定暴力団山口組の分裂抗争が発生し、
3月には、警察が山口組の直系組織が複数離脱し新組織を結成すると発表している。分裂してから50件の事件が起きており、中には銃撃戦もあった。
福島さんは今回の抗争の見通しや仕事にどう影響するのかについてはコメントを避けているが、「この抗争が早く終わることを願っています。それでも今は去るべき時期ではないかもしれません。やくざの世界は今でも義理と恩義で成り立っているから」と答えている。
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新しい小指があれば元組員が必ず更生するというわけではない。だが、福島さんは義指を作ってあげた人たちから感謝の言葉や手紙を多く受け取っていると言う。
「結婚でき、子供を授かったという人もいます。また別の仕事を見つけることができた人や、過去を反省し何年間も親に惨めな思いをさせたことを親に謝罪に行った人など、義指は多くの人たちの役に立っています」
「過去に死んでいてもよかったのに、今生きていることがとても嬉しい。この様なメッセージを聞くと励みになります。私はヤクザのためにサービスを提供しているのではありません。第二の人生をやり直したいと願う男性、子供の見本になりたいと願う父親のためにやっているのです」
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via:mirror.Theguardianなど / translated melondeau / edited by parumo
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