ポイントは「3分」以内!聞き手をこちらのペースに引き込む秘訣
『誰からも必ず「よかった! 」と言われる話し方39のコツ』(夏川立也著、日本実業出版社)の著者の経歴は、少し変わっています。
なにしろ京都大学在学中に桂三枝(現在の六代目・桂文枝)師匠に弟子入りし、卒業後は吉本興業の芸人として活躍したというのですから。
そればかりか、長寿番組としておなじみの「新婚さんいらっしゃい! 」で、10年間にわたって前説を務めてきたのだとか。
しかも、芸人として経験を積む過程において「場の空気づくり」に着目。結果的には、そのロジックを体系化した「パワー・コミュニケーション」プログラムを開発したというのです。
そして現在はコミュニケーションコンサルタントとして、講演・研修活動を10年間以上にわたり続けているのだそうです。
注目すべきは、「人前でうまく話すために求められるのは『話す内容』だけではなく、次の3つの要素だ」と主張している点です。
■うまく話すために必要な3つの要素
・コンテンツ(内容)
話す内容を精査し、より聞き手の感情に響く内容(言葉)を準備すること
・パフォーマンス(表現)
表現能力を高め、より効果的に聞き手に届けること
・フィールド(場/空気)
パフォーマンスを発揮しやすい、ホームの状態にすべく場の空気をつくること
これら3つのすべてが必要で、どれか1つだけが欠けたとしても、人前でうまく話すことはできないといい切るのです。
しかし、そうであるなら、「コンテンツ」を精査して「パフォーマンス」を高めるためのコツを知ったうえでトレーニングをし、「場」を味方につけて話せるようになれば、人前でうまく話せるようになるはず。
そこで本書では、「場づくり」「ネタづくり」「パフォーマンス」、それぞれのコツが紹介されているというわけです。
■それなりの結果を出せるようになる
ところで多くの人の前でスピーチをするときなどに、最後まで聴衆を話しに引き込むことができず、そのまま終わってしまったというような経験のある人は決して少なくないはず。
しかしこのことについて著者は、「人前でうまく話せるというのは、誰もが感動する奇跡的な一世一代のものすごいスピーチができるということではない」と主張しています。
人前でうまく話せるとは、どんな聞き手でも、聞き手がどんな状態でも、それなりの結果を出せるようになること。
聞き手のフィーリングが合うとき、よい結果になるのは当たり前の話。つまり、聞き手の間合いや、「なんとなく波長が合わないな」というときでも、それなりに引き込みながら、ペースをつくっていけるかどうかが重要だということ。
■こちらのペースに「引き込む」秘訣
しかし、そうはいってもそれは簡単なことではないはず。しかしネタづくりにおいては、たとえ自分の調子が悪かったとしても、聞き手をこちらのペースに引き込んでいくための秘訣があるのだそうです。
それは、“テンションをマックスにして話すことのできるフレーズ”を“開始3分以内”に組み込んでおくこと。
たったそれだけのことで、絶大な効果を生み出せるというのです。
■テンションポイントを用意して話す
「テンションは心のボリュームである」と著者はいいます。
カラオケで絶叫したり、思いっきり声を出したりするなどエネルギーを解き放つことで、余計な力が抜けて気持ちが楽になることがあります。心のボリュームをマックスにするとは、これに近い状態だというのです。
だからこそ、不完全燃焼になってしまうことを避けるため、心のボリュームをマックスにできるポイントを意図的に用意しておくべきだということ。
そうすれば集中力も増し、雑音(雑念)が消えて緊張の緩和にも役立つそうです。
では、具体的にどうすればいいのでしょうか? そのことを説明するため、著者は次の2つのフレーズを比較しています。
A「本日はありがとうございます。一生懸命にやらせていただきます」
B「本日はありがとうございますっ! いっっっっっっしょう懸命にやらせていただきます!」
テンションを最大にするポイントをつくるとは、Bのようなイメージなのだとか。性格的なものも影響するでしょうから、現実的にはなかなか難しそうな気もします。
しかしそれでも、できるだけ早い時間、つまり3分以内にテンションをマックスまで持って行き、強調したい言葉に力を込めることは重要。それこそが、著者ならではの考え方なのです。
(文/作家、書評家・印南敦史)
【参考】