北朝鮮、深刻な外貨不足を示すエピソード (2/2ページ)

デイリーNKジャパン

深刻な外貨不足の背景には、北朝鮮お得意の「ハコモノ行政」がある。金正恩氏は今年3月、大規模マンション団地「黎明通り」の建設を指示した。同時に貿易会社に「建設資材を確保せよ」との指示も下した。

各貿易会社は、他の商売そっちのけで中国からの鋼材の輸入に必死になっている。その量は1000トンを超えている。そこに、莫大な額の外貨が費やされたのは言うまでもない。

(関連記事:労働者「大量生き埋め」事件も…金正恩「豪華住宅」政策の弊害)

その代金は、中国の業者に支払うべき別の代金を回していることが考えられる。

期日までに業者に代金を支払い、割り当てられた鋼材購入のノルマが達成できなければ、責任を問われ、北朝鮮に帰国させられてしまう。

厳しい叱責、取り調べを受けた後には、地方の閑職に追いやられる。そうなれば、海外には死ぬまで出られなくなる。貿易会社の社員たちは、中国での「自由で豊かな生活」を失うまいと必死になるあまり、違法行為に手を染めたり、商習慣に反する行為を行うのだ。

ノルマを達成し、指導者に忠誠を尽くせば地位は安泰かもしれない。しかし、国の信用はダダ下がりだ。そんなことを「愛国」「忠誠」の名のもとに行っているのだ。

大飢饉のきっかけ

もっとも、北朝鮮の「踏み倒し」は今に始まったことではない。

北朝鮮は1980年に日本を除くすべての対外債務に対してデフォルト(債務不履行)を宣言したことがあり、踏み倒した総額は120億ドルと推定されている。

それにもかかわらず、ソウル・オリンピックへの対抗心を燃やし、1989年に第13回世界青年学生祭典を開くため、当時の北朝鮮の国民総生産(GNP)に匹敵する47億ドル(当時のレートで約658億円)が投じられた。それが90年代後半の大飢饉「苦難の行軍」の一因となったとも言われている。

「北朝鮮、深刻な外貨不足を示すエピソード」のページです。デイリーニュースオンラインは、デイリーNK銀行学生ニューステレビ番組海外などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る