プレゼン、面談、デート……。精神科専門医に聞く、緊張するシーンを乗り切る方法とは?
練習のときはうまくいっているのに、面談やプレゼンでは緊張して何を話したのかも覚えていない。デート前のメイクや服を考える時間は楽しいのに、いざ当日はなんだか気が重い……。そんな経験はありませんか。なぜ、大事な場面に緊張してしまうのか、いつもの力が出せずにいる理由、どうすれば平常通りの力が出せるのかなどについて、精神科専門医・心療内科医で新六本木クリニック(東京都港区)の来田(きただ)誠院長に聞いてみました。
■心臓がドキドキして汗が出るのは、自律神経の働きによる自然な現象―来田先生は複数の企業で産業医もされているそうですが、職場で緊張して困っている女性の事例を教えてもらえますか。
来田医師 会議で多数の人の前でプレゼンをするときに「緊張して手が震える」、「声がうわずる」、「口の中がカラカラに乾いてうまく話せない」という人はとても多いです。また、上司に企画書を出してプレゼンするとき、顧客に商品の説明をするときなども、同じ現象が起こると訴える人も多くいます。
―プライベートなシーンでは、どのよう事例がありますか。
来田医師 「好きな人」、「嫌われていると感じる人」と接するときに緊張するという声が多いです。みなさん、「日常の生活では、手が震えたり声がうわずることはないのに」とおっしゃいます。
―緊張するとそれに近い症状が出る経験は誰でもあると思いますが、何が原因なのでしょうか。
来田医師 医学的には、緊張すると、自律神経のひとつで活動時や興奮時に働く「交感神経」が作用し、血圧が上がり、手や額に汗をかく、心臓がドキドキして脈拍が上がります。ですから、手が震える、声が上ずるのは自然な現象とも言えるのです。
仕事での人間関係や、好きな人の前に出ると起こるのは、「失敗してはいけない」という気持ちが緊張を引き起こして、自律神経の症状につながると考えられます。
―悩ましい症状ですが、少しでも緊張しないようにする方法はあるのでしょうか。
来田医師 たとえば、職場でプレゼンや面談のシーンですと、「うまくやらないといけない」とか、「上司や同僚に評価されたい」と思うよりも、「今日の発表を、決めてきたように粛々(しゅくしゅく)と行おう」と考えるようにしましょう。
好きな人の前では、「自分らしくふるまおう。いっしょの時間を楽しく過ごそう」と軽く考えるほうが緊張はしません。
うまく発表したい、相手により好かれたいなどと思うと、誰しもプレッシャーがかかって緊張が強くなり、いつも通りの自分の個性や実力が出せなくなります。
つまり、平常通りの自分の力を出すには、リラックスした状態でいれるかどうかがポイントになります。
■自分らしくいればいいと考えると、リラックスして臨める―リラックスするためには、具体的にどうすればいいでしょうか。
来田医師 「いまの自分の力のままを出せばいい」、「自分らしくいればいい」と考えると、リラックスして臨めるようになります。「手や声が震えてもかまわないと思う」ことも重要です。
リラックス時には、自律神経のうち、もうひとつの副交感神経が働きます。すると、心拍数が抑えられ、血圧や血流、体温も汗もだ液も平常時のままでいられるので、手が震えたり声に変化が出ることはありません。
―何かの発表時や本番前にドキドキしてきたときに、対処する方法はありますか。
来田医師 「いつもとちがう症状が出てきたら、『汗をかいているな』、『心臓がドキドキするな』、『パニックかも』などと、声に出して言う、また、紙に書く、意識する」などしてみてください。自分の状態を客観的に認識することができて、幾分かは気持ちが落ち着くはずです。
また、「水を飲んで口を潤す」、「腹式呼吸を繰り返す」、「軽いストレッチをする」、「その場で軽くジャンプをする」、なども、脳の興奮を体で発散することができて有用でしょう。
さらに、緊張は、その場面や相手に対する敬意の現れでもあります。相手から見ると好感が持たれることが多いことも覚えておきましょう。
―先生は産業医をされているそうですが、職場での緊張が強くて不安な場合は、相談にのってもらえるのでしょうか。
来田医師 職場に産業医がいる場合は、ぜひ相談してください。産業医には相談者のプライバシーを守る義務があり、重病で仕事が困難である場合を除いて、職場に相談の内容が漏れる心配はありません。病院の医師よりも、少しは社内の状態を把握しているので、具体的なアドバイスをもらいやすいと言えるでしょう。
また、外出時や食事、人前で字を書くときなど、日常生活でも緊張が強い、不眠や気分の落ち込みがある場合は、早めに心療内科か精神科を受診するようにしましょう。
■まとめ緊張して手が震える、汗をかくなどは、交感神経の作用による自然な反応であり、いつもの自分の力を出すには、できるだけリラックスした状態でいること。つまり、自分をよく見せたいとかほめられたいなどと思わずに、ありのままを見てもらえばいいと考えると、緊張の度合いが少なくなるということです。
(海野愛子/ユンブル)
取材協力・監修 来田誠氏。精神科専門医。心療内科医。産業医。精神保健指定医。京都大学医学部卒業後、大阪赤十字病院、大和西大寺きょうこころのクリニック院長を経て、2016年1月に精神科・一般内科の新六本木クリニックを開院、院長。 新六本木クリニック:東京都港区六本木7-15-17 ユニ六本木ビル6階 http://shinroppongi-clinic.com/