【幻の兵器】遠距離戦略偵察機が航続能力を活かして高々度重爆撃機へ仕様変更された「キ七四」。しかし現実に完成したのは… (3/3ページ)
しかし、いずれの機体も実用にはほど遠いような状態であり、様々な改修を重ねている間に敗戦を迎えている。
日本陸軍がキ七四を開発した目的としては、ソビエトのシベリア奥地を対象とした隠密偵察、より具体的にはシベリア鉄道の要地要点に関する情報を得るためだったのではないかと推測される。というのも、先に述べたようにキ七四の開発が始まったのは1939年夏から翌40年初頭にかけての時期だと推測される。問題は、この時期に日本陸軍はノモンハン事件と独ソ不可侵条約の締結という2つの衝撃的な事件に直面しており、対ソ戦備の根本的な見直しを迫られていたのだ。そのため、日本陸軍首脳部は、対ソ戦について極めて深刻な危機感をつのらせていたのは間違いないだろう。
また、場合によってはシベリア鉄道に対して小型爆弾による嫌がらせ的な攻撃を加え、運行を妨害することも考えられていたかもしれない。たとえ線路や列車にたいした被害がなくとも、攻撃を受けている間は運行が停止するため時間稼ぎにはなる。もちろん、本格的な爆撃機型を生産し、大規模な攻撃を加えられればより大きな効果を発揮するのは間違いないところだった。しかし、対ソ戦から対米英戦という劇的な戦略方針の変化によって、キ七四にはアメリカ本土に対する片道爆撃という、理性的な戦略というより感情的な思いつきを実行するための機体となる運命が待っていた。
当初は非常に優れた構想に基づいて作業に着手したはずの開発計画が、様々な情況の変化によってその目的を見失い、最終的には意味不明の「作業を処理するための作業」となることがある。もしもキ七四が当初の計画通りに長距離戦略偵察機として開発されていたなら、たとえ実験機のまま終わっても航空史上においてもある程度以上の評価を得ることができたかもしれない。しかし、現実に完成したのは構造がやたらと複雑で、実戦には使えない爆撃機でしかなかった。航空技術の壮大な夢を追求するという役割は、兄弟機ともいえるキ七七(A26)が果たすこととなった。 (隔週日曜日に掲載)
■キ七四データ
全長:17.65m
全幅:27.00m
全高:5.10m
主翼面積:80.00平方m
重量:10,200kg
全備重量:19,400kg
発動機:ハ104ル・空冷複列星型18気筒×2
出力:1,900hp
最大時速:570km/h
航続力:7,200km+2時間
上昇力:8000mまで17分
最高上昇:12,000m
武装:12.7mm 旋回機関銃×1、爆弾1,000kg
乗員:5名