【ツレが産後ウツになりまして】第4回:おっぱいが出ない!沈みゆく妻<後編>
3年の不妊治療を乗り越え、42歳でパパに! しかし待ち受けていたのは、赤ちゃんの世話にやってきた妻の両親との険悪な共同生活……。その板挟みでストレスを抱える妻……。
それに加え今度は“お乳が出ない”(『おっぱいが出ない!沈みゆく妻<前編>』)という大問題が妻を苦しめたのだった。
自身の不妊治療奮闘記を綴った『俺たち妊活部』の著者・村橋ゴローが見た、最愛の妻が産後ウツになっていくリアルな産後育児をお伝えします。
■母乳相談
妻は、母乳の出が悪いことに心を痛めていた。くわえて、赤ちゃんは慢性的な便秘。このふたつを妻は、「おっぱいが出ないんだから、排便がなくて当然。つまり私が全部悪いんだ」と思い込むようになり、連日さめざめと泣いていた。
こんなとき、男は何もできない。「そのうち出るよ」などと陳腐なセリフは余計に妻をいら立たせるだけだし、ただ見守るしかなかった。
そんなある日、助産師だと名乗る女性がわが家にやって来た。
妻に聞くと、自治体がやってる“母乳相談”に電話したらしく、助産師さんが教えに来てくれたのだ。そんなサービスがあるのかと驚いたのと同時に、ただ泣いているばかりではなく、しっかりと前を向きはじめた妻の姿勢に安堵した。で、これがすこぶる効果てきめんだったのだ。
■まるで“水鉄砲”のように母乳が! 明るさを取り戻した妻
助産師さんによる手取り足取りのレクチャーでコツをつかんだのか、妻はそのあとも区のセンターで行われた母乳のグループワークに出かけていった。母乳が出るようになって自信を取り戻した妻は、日に日に本来の明るさを取り戻した。
そして、んぐんぐと母親のおっぱいに吸い付く赤ちゃんの姿は、ようやく僕らのもとにもやってきた幸せの象徴にすら見えた。
が、それも長くは続かなかった。
母乳の出は、妻いわく「搾ればピューッと水鉄砲のように飛んでく」ほど飛躍的な改善がなされた。しかしせっかく多く生産されるようになった母乳も、赤ちゃんの飲み方がへたらしく、母乳が渋滞を起こしはじめたのだ。
■一難去ってまた一難。再び塞ぎこむ妻
母乳が詰まりはじめたことで、右の乳房に激痛が走り、「あくびをしても痛い」ほどに悪化してしまったのだ。また、乳首からつながる乳腺のひとつが黄色く腫れてしまい、ふたつの痛みに妻は耐えるしかなかった。
一難去ってまた一難。なぜ、こうも上手くいかないのか。焦れても仕方がないことはわかっていても、運命の悪さを呪った。
それでも妻は「痛っ」と顔を歪めながら乳房をマッサージすると、赤ん坊の口に添えた。
その小さな顔を見ると、両頬を中心に真っ赤なデキモノのようなものが目立っていた。外出した際、よその赤ちゃんを見ても、ウチの子のようにひどく顔の腫れた子はおらず、夫婦ともに気にしていた点だった。
「ごめんね、お顔もこんなに真っ赤になっちゃって。きっとママのおっぱいが美味しくないんだろうね。そんなんじゃ飲みたくないし、だからウンチも出せないんだよね。ごめんね、ごめんね」
そう赤ちゃんに向かって言うと、涙をぽろぽろと流していた。
妻は、また塞ぎこむようになってしまった。
■本当の「地獄」はこれからだった…
ウチの子は、よく泣く子だった。
1日24時間のうち、20時間は泣いていたかもしれない。「それが赤ちゃんの仕事」というが、それならウチの子は過労死寸前だ。それぐらい泣いていた。そしてそんな子どもを泣き止ますキラーアイテム、最終手段のひとつが母乳。
しかしわが子は飲み方がへたくそなため、飲んでくれない。
妻はパンパンに腫れ上がった乳房を出すだけで苦痛に顔を歪めるのに、赤ちゃんはそれをくわえたきり。そして「上手に飲めない」と暴れ、泣く。この繰り返しに、妻の限界も近づいているように感じた。
「アタシが悪いんだよね。愛情が足りないから、こうなるんだよね」
そんなことない。きみは一生懸命にやっている。
それでも乳を与えんと、乳房に赤ちゃんの顔を引き寄せた、そのときだった。
「ねえ、赤ちゃんの顔、見て。この子、アタシのこと嫌いみたい。『興味ない』って感じじゃない?」
言い返せなかった。実は……赤ちゃんは、妻にだけ懐いていなかったのだ。
本当の地獄は、ここからだった。
次回、「アタシにだけなつかない……遂に妻が壊れる」をお送りします。
【参考・画像】
※ 村橋ゴロー(2016)『俺たち妊活部』(主婦の友社)
※ Mika Heittola、didesign021、rodrigobark/ Shutterstock
【著者略歴】
※ 村橋ゴロー・・・72年、東京都出身。大学生のときライターデビュー。以降、男性誌から女性誌、学年誌など幅広い分野で活躍。千原ジュニア、田村淳、タカアンドトシ、次長課長、高橋克典など多くの芸人、俳優陣の連載構成を手掛ける。3年に及ぶ、自身の不妊治療奮闘記をまとめた著作『俺たち妊活部』(主婦の友社刊)が好評を博す。また主な構成/著作に、『すなわち、便所は宇宙である』シリーズ(千原ジュニア著・扶桑社刊)、累計200万部突破した『GO!GO!バカ画像シリーズ』、『裏モテの秘策』(ともにKKベストセラーズ刊)などがある。結婚以来11年間、炊事・洗濯・掃除をこなす兼業主夫でもある。Twitter:@muragoro