漫画で学ぼう! 史実をもとに描かれたおすすめ歴史漫画10選

学生の窓口

たかが漫画?いいえ、漫画だからこそわかりやすく歴史を学べてしかもおもしろい、そんな漫画があるのはご存知でしょうか。歴史が苦手な人にこそぜひともチャレンジしてみてほしい歴史漫画があります。史実をベースにしているからこそ、読んでおもしろく、しかもためになる、そんな歴史漫画をご紹介します。

■第10位「アサギロ~浅葱狼~」/ヒラマツ・ミノル

1854年、奥州白河藩阿部家の江戸屋敷、12歳の少年沖田惣次郎(後の沖田総司)は、御前試合において藩の剣術指南番と向かいあっていました。惣次郎の剣の腕前を聴きつけた君主が御前での試合を所望し、その相手役に剣術指南番が選ばれたからです。はじめは竹刀での打ち合いが予定されていたが、指南番の判断で木刀に代えられていました。惣次郎の大人顔負けの鋭い剣筋に、指南役はあろうことか敗北してしまいます。その結果、若くして指南番に勝ったことで惣次郎は名を上げることになります。ところが、12歳の子供に敗れた指南番は切腹せざるをえない状況に追い込まれてしまい、惣次郎に武士である自分の魂でもある刀を渡し、介錯役を依頼するのでした。

幕末京都を席巻した新撰組一番組長の沖田総司の幼い頃から話は始まります。新撰組の中でも随一の実力ある剣客として知られていた総司は、幼いころから桁違いに強く、そして剣以外にはどこか抜けていることが伝わってくる漫画です。幕末の動乱期を生きた近藤勇、山南敬助、土方歳三など新撰組隊士とのかかわりを描きながら、幕末の動乱期を描いている漫画です。新撰組が舞台になると、最近では少女漫画などでも採りあげられることが多いので軟派な印象を持つかもしれませんが、この「アサギロ」は史実をベースにした骨太の漫画に仕上がっています。

作者:ヒラマツ・ミノル
出版社:小学館
掲載誌:ゲッサン
レーベル:ゲッサン少年サンデーコミックス
発表期間:2009年5月12日-連載中
巻数:既刊12巻

■第9位「アルカサル-王城-」/青池保子

14世紀イベリア半島は、多数の国家が乱立する戦国時代でした。そんな中、カスティリア王国のアルフォンソ11世と王妃マリアの嫡男として、主人公ドン・ペドロ(ペドロ11世)は生を受けます。王国の跡継ぎではあるものの、政略結婚で王妃マリアと結婚したこともあり、王と王妃の中は最悪で、幼いドン・ペドロは父王に顧みられないまま成長していきます。宮廷にはアルフォンソ11世の愛妾と私生児たちが我が世の春を謳歌していました。ところがある日、父王は戦場において病死してしまいます。その結果、15歳という若さでドン・ペドロは即位することになります。若くして王位についたこともあり、母マリアと宰相の言いなりになっていました。宰相を追放したものの、造反する王侯貴族や実母の裏切りなどに合い、幽閉されてしまいます。復権してからは専制君主となるものの、以後は生涯の敵であるエンリケをはじめとして周辺諸国との戦いの日々が続いていきます。

あまりなじみのなかった14世紀のイベリア半島、今でいうポルトガルやスペイン周辺の戦国時代の様相を力強く描いた漫画です。少女漫画とは思えない硬派な内容で、時折くすりと笑わせてくれる場面はあるものの、全編として、愛と死、忠節と裏切り、平和と闘いが漫画の世界を彩っています。嫡男であったけれども愛されなかった過去を持つドン・ペドロと、愛されたものの庶子であったことで全てを奪われたことを逆恨みするエンリケたちとの争いは、諸国の思惑も介入して過酷なものになります。14世紀イベリア半島情勢にすっかり詳しくなりますよ。

作者:青池保子
出版社:秋田書店
掲載誌:月刊プリンセス、別冊ビバプリンセス、プリンセスGOLD
発表期間:1984年-2—7年
巻数:全13巻

■第8位「へうげもの」/山田芳裕

戦乱が世中を席巻する戦国時代、文化の華も花開いていました。血なまぐさい戦いを続ける武将たちでしたが、文化面では茶の湯文化が花開こうとしています。茶聖千利休が創始した、一切の虚飾を捨てた侘茶の世界は、織田信長の跡を継ぐ形になった豊臣秀吉の時代に花を開きます。しかし、天下人たる秀吉は、侘びの世界だけでない、黄金の茶室などの華やかな世界を欲していたため、あくまでも侘びを貫こうとした利休は切腹することになります。利休の死後に茶の湯の世界で頭角を現したのは、主人公である古田織部です。古田織部は新たな茶の湯の価値観として、茶器などを少しゆがめた姿に美を見出します。織田信長、豊臣秀吉に使えた織部は、自らが愛する数寄の世界を守ろうと奔走するのでした。

戦国時代から江戸時代最初にかけての武将たちと、茶人たちとの話が読みたい人にはオススメです。茶人というと、政治の世界が一見関係ないかのように思えるかもしれませんが、戦国時代はそんなことは決してなく、茶人たちも政治の中心に近いところで躍動していました。それぞれの茶人としての信念と、世中を取り巻く情勢の変化の中で、古田織部はどのような道を選ぼうとしているのかということころが見どころの漫画です。

作者:山田芳裕
出版社:講談社
掲載誌:モーニング
レーベル:モーニングKC
発表期間:2005年8月18日-連載中
巻数:既刊21巻(2015年12月現在) ■第7位「大奥」/よしながふみ

江戸時代三代将軍徳川家光の時代、熊に襲われた少年が奇妙な病を発症します。その病の名は「赤面疱瘡」といい、関東の田舎町から日本中に広がっていきました。若い男子しかかからない、かかったら致死率80%という高確率で死亡するというこの奇病のせいで、日本の男子の人口は女子の4分の1になってしまいます。そうすると、世中の仕組みは女性がかつての男性の役割を担うようになり、男子は希少な種馬として大切にされることになります。その流れは幕府の中といっても例外ではなく、三代家光以後の将軍は女性が継ぐことになり、当然ながら大奥にも男子が選ばれて囲われることになります。美男ばかりを集めた江戸城大奥において、女将軍と取り囲む男達の物語が始まります。

もしも徳川将軍が「男」ではなく「女」であったら、という、史実とは大きく異なる嘘の部分がありますが、基本的には史実に忠実に描かれているのがこの「大奥」です。男と女の立場が逆転している、いわゆる私たちの知っている江戸時代とはパラレルワールドにいるかのような感覚になるかもしれませんが、男と女の違いはあっても、為政者として生きなければならない苦悩や悲哀などは、同じように私たちの胸を打ってくれます。

作者:よしながふみ
出版社:白泉社
掲載誌:MELODY
レーベル:モーニングKC
発表期間:2004年8月-連載中
巻数:既刊12巻

■第6位「陰陽師」/岡野玲子・夢枕獏

人や鬼が共生した平安時代、師の外出の共をしていた安倍晴明は、師が眠っていたため気づかなかった百鬼夜行に気付き、禍に遭うことなくやり過ごすことができました。まだ若年でありながらも、優れた才を見せたことで、師である賀茂忠行に認められ修行を積み成長した晴明は、やがて平安京でも最強の陰陽師としての名をほしいままにするようになります。式神を自在に操り、怨霊を鎮め、調伏も行う晴明でしたが、その強すぎる力への畏怖からか、公家や高僧などからはやや遠巻きにされる存在でもありました。そんな晴明が唯一心を許すのが源博雅という貴族で、京の都で起きる不可思議な事件を2人で鮮やかに解明していくのでした。

希代の陰陽師として著名な安倍晴明を主人公にした本や漫画は数多くありますが、この作品は夢枕獏さんの同名小説を原作にしています。とはいえ、原作を忠実に漫画化した部分と、それを吸収してさらに発展させた部分があって、原作者の人からも原作を超えたと言われるくらいの漫画になっています。岡野さんの独特な絵柄は、魑魅魍魎が跋扈する平安時代という時代を表現するのにとてもぴったりですよね。絶大な力を持つ安倍晴明の人ならざる者たちとの戦いは見どころたくさんです。

原作:夢枕獏
出版社:スコラ、白泉社
掲載誌:コミックバーガー→コミックバーズ→月刊メロディ
レーベル:ジェッツコミックス
発表期間:1993年5月-2005年5月
巻数:全13巻

■第5位「あさきゆめみし」/大和和紀

いずれの天皇の御代であったか、桐壺の女御と呼ばれる天皇の妃がいました。それほど高くない身分のお生まれで、しかも後見人である父親が早くに亡くなったこともあり、頼る人の少ない宮中でひそやかに暮らしていたのですが、ふとしたことから帝の目に止まり、やがて玉のような子供が誕生します。光る君と呼ばれる若君は若くして母親を亡くしたこともあり、母親に似ていると言われた帝の別の妃である藤壺の女御に憧れにも恋にも近い思いを抱いて成長します。成長した光の君は臣籍降下し、ますます美貌さえわたるところから光源氏の君と呼ばれて宮中の女官をはじめとして、身分の高い姫君たちの憧れの的になります。しかしながら光源氏は藤壺の宮への思慕の念を深めるだけで、正妻として迎えた葵上や、六条御息所、あまたの姫君と浮名を流すものの、中々満たされない生活を送っていました。そんな中、藤壺の宮に生き写しの紫の上を見出します。

紫式部の書いた「源氏物語」を忠実に漫画家したのがこの作品です。史実とはやや異なりますが、平安時代の官位のことや、貴族の生活風習などは非常によく描かれているので、平安時代という時代を理解するにはとても勉強になる漫画です。現代のわれわれの生活とは違いますから一夫多妻制の平安時代に戸惑うこともあると思いますが、男女の心の機微と共に、平安時代の風俗も楽しむことが出来ます。

作者:大和和紀
出版社:講談社
掲載誌:月刊mimi、mimi Excellent
発表期間:1979年-1993年
巻数:全13巻(単行本)、全10巻(大型版)、全7巻(文庫本)

■第4位「天上の虹-持統天皇物語―」/里中満智子

645年初夏、皇極天皇の長子、中大兄皇子に第二子が誕生します。この子こそが、鵜野讃良皇女、後に持統天皇となる子供です。彼女の母は蘇我氏の越智娘で、中大兄皇子は寵愛していました。同じ年に中大兄皇子は中臣鎌足とクーデターを行い、蘇我氏をはじめとする豪族たちが天皇を飾り物のようにしてきた状況を一変させる、大化の改新を実行します。これを機に、中大兄皇子は天皇による中央集権国家を目指し、従わない豪族を討伐していきます。その中には讃良の祖父も含まれていました。この時、讃良はわずか4歳ですが、父の横暴さは祖父を殺し、母の心をも壊してしまいます。父への怒りに震える讃良はわずか5歳、父よりも必ずえらくなって見せる、そう誓うのでした。

奈良時代にくわしくなろうと思えば、この漫画は外せません。この時代は血縁関係が非常に複雑で、それも異母兄弟であれば問題なく結婚出来るからなのですが、時には同じ人に姉妹でお嫁にいくことなどもあって、人間関係の把握が難しいです。しかし、この漫画があれば、この時代の人の動きは完璧ですし、政治の流れについてもきっちり理解することが出来るので、奈良時代について勉強したいならば読んで損は絶対ありません。持統天皇という類まれな女帝の生涯を追いつつ、奈良時代を勉強しましょう。

作者:里中満智子
出版社:講談社
掲載誌:mimi DX、mimi Excellent
発表期間:1983年-2015年
巻数:全23巻(単行本)、全11巻(文庫本)

■第3位「チェーザレ 破壊の創造者」/惣領冬実・原基晶

1491年11月のある日、イタリアのピサにあるサビエンツァ大学に編入してきたアンジェロ・ダ・カノッサは、講義の最中に悪気のない言動によって、当時絶大な権力を持っていたメディチ家のジョヴァンニの面子を潰してしまうことになってしまいました。そのため、ジョヴァンニは仕返しをするためにアンジェロを遠乗りに誘いだし、崖から事故を装って落とそうとします。しかし幸運にも落ちる寸前に、ボルジア家の後継者であったチェーザレ・ボルジアに助けられます。当時のイタリアは周辺諸国からの干渉が強く、またカトリック教会内部も醜い権力闘争が繰り広げられていました。1492年教皇インノケンティウス8世が崩御したことにより、時期教皇を決めるコンクラーヴェが始まり、チェーザレはあらゆる手を使って、自らの父であるロドリーゴ・ボルジアを教皇にするための権謀術数を繰り広げて行きます。

悪名高いチェーザレ・ボルジアとはどんな人だったのか、教会内部の権謀術数の争いとはどういったものだったのかが史実に基づいて書かれているので、とても勉強になる漫画です。元々は娯楽性の強い漫画になる予定だったものを、作者の意向で出来る限り史実に忠実になっているので、15世紀末のイタリアの動向を知るためには、この漫画から読み始めてもいいくらいです。描写の細部までこっているので、歴史の動きだけでなく、衣装などの風俗などの勉強になりますよ。

作者:惣領冬実・原基晶
出版社:講談社
掲載誌:モーニング
発表期間:2005年-2015年
巻数:既刊11巻(2015年1月)

■第2位「ベルサイユのばら」/池田理代子

1755年、ヨーロッパのフランス、オーストリア、スウェーデンに3人の子供が誕生します。この3人はやがて大きな運命の渦に導かれるようにフランスに集まってきます。1770年、ハプスブルク家の皇女マリー・アントワネットは、フランス王太子に嫁します。これにはオーストリアとフランスの同盟を強固なものにするための政略結婚でした。未来のフランス王太子妃を護衛するのは、近衛士官オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェは、フランスの名門ジャルジェ将軍家の末娘に生まれましたが、跡継ぎのいなかった父により男と同じように剣も学問も学び軍人としての道を歩みます。男装の麗人として宮廷でも一目置かれる存在のオスカルは、ある日、王太子妃の護衛として出かけた仮面舞踏会で、スウェーデン貴族のフェルゼンがアントワネットの仮面を外すところを目撃し詰問します。この夜は3人が初めて顔を揃えて合わせた日でした。やがて王妃となったアントワネット、そしてフランスにも革命の足音が近づいてくるのでした。

言わずとしれた歴史漫画の王道中の王道は「ベルサイユのばら」です。フランス革命あたりだけは歴史すごく詳しいのよ!という人がどれだけ多いか、ということからもベルばらの影響力の強さ、人気を物語っていますね。もちろん、オスカルは架空の人物なのですが、その他に出てくる人は基本的には史実に忠実に描かれています。フランス革命が起こった理由や、国民会議での様子などは史実に忠実なので、どうしてフランス革命は避けられなかったのか、あの当時のヨーロッパの動向がよくわかります。歴史好きとしてはなんとしても抑えておきたい漫画の1つです。"

作者:池田理代子
出版社:集英社
掲載誌:マーガレット
発表期間:1972年-1973年
巻数:全10巻(旧版単行本)、全10巻(集英社漫画文庫)など

■第1位「三国志」/横山光輝

中国・後漢時代、世中は乱れに乱れ、黄巾党という集団が、殺戮や略奪など悪事の限りを尽くしていました。その頃、黄河のほとりで、雄大な川の流れを眺めつづけている若者、劉備がいました。親孝行な劉備は、母親に茶を買ってあげるために、都である洛陽から色々なものを運ぶ洛陽船を待っていたのです。劉備は真面目で母孝行な息子として近所でも知られた存在でした。母と子の2人で貧しいながらも生活を送っていましたが、実は劉備は元をたどっていけば漢王室に繋がるという、自分の出生の秘密を知ってしまいます。そのことから、桃李園の下で、義兄弟となった関羽と張飛らと共に、漢王朝を復興させるための戦いに打って出ることになるのです。

吉川英治の小説「三国志」を基調にして、自らの考えや解釈などを加味して漫画家された作品です。漢字ばっかりの名前は非常に難しいのですが、この横山三国志の場合は、元々は児童向けの雑誌に書かれたこともあって、登場人物がわかりやすく描かれていたり、セリフなども簡単に表現されているので、三国志ってちょっと難しいよね、と考えている人にこそチャレンジしてみてほしい漫画です。衣装などは資料が少なかったこともあり、連載時には間違っていたこともあったのですが、単行本収録時には一新されたりと随所に拘りが見えるのも勉強になる漫画です。

作者:横山光輝
出版社:潮出版社
掲載誌:希望の友、少年ワールド、コミックトム
発表期間:1971年-1986年
巻数:全60巻(単行本)、全30巻(文庫版)など

いかがでしたでしょうか。史実をもとに描かれた歴史漫画10選をご紹介しました。史実をもとにしているとはいえ、やはり漫画ですから史実とは違う部分も描かれていますが、まずは歴史へのとっかかりなら大丈夫です。興味が出てから調べると更に頭に入ってきますよ。歴史が苦手な人にも、歴史好きな人にもオススメできる漫画たちです。

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