宇宙の90%以上を占める! 「暗黒物質」「暗黒エネルギー」って?

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この広い宇宙はいったい何から作られているのでしょうか。窒素? 水素? 酸素? それとも金属? たしかに、それらもこの宇宙を構成している要素の一部ではあります。人類によってこれまでに発見された元素はすでに100種類を超えますが、それでも残念なことに今の私たち人類は宇宙を占める成分全体のうち、たったの4〜5%しか発見できていない状況なのです。それでは、わかっている部分を除いた残りの95〜96%はいったい何からできているのでしょう?

■ 惑星や恒星を作っているものとは

まず、私たちの身近に存在する惑星や恒星は何から作られているか知っていますか? 地球や火星のような比較的小さめの惑星は主に岩石からできていて、その周りを窒素や酸素などの大気が覆っています。一方、木星や土星のように大きな惑星は、主に水素やヘリウムのような軽いガスが集まってできています。

また、太陽のように自らが光り輝いている恒星も成分的には木星に近く、水素を燃料とした「核融合反応」でヘリウムを作るときに生まれたエネルギーでまばゆい光を放っています。

■ 銀河を作っている謎の物質

実は、今わかっているのは惑星や恒星といった天体の組成までです。太陽系を含む銀河系(天の川銀河)が何からできているのかさえ、実はよくわかっていません……。

地球などの太陽系惑星は太陽を中心に回っていますが、太陽に近いほどその重力を強く受けるため、それとバランスを保つために遠心力も大きくなります。その結果、各惑星が太陽の周りを回る速度(公転速度)は太陽に近いほど速くなります。これと同じように、銀河系をはじめとする渦巻き銀河もその中心を軸として回転していますので、一般的には中心部分に近い天体ほど内側方向への強い力を受けて公転速度が速くなるはずです。ところが、不思議なことに銀河の中心から遠く離れても、その公転速度は銀河の中心近くにいる恒星とほとんど変わりません。

この不思議な現象を説明するためには、銀河の中心から遠く離れた恒星を、中心方向へと引き寄せるための力が必要です。つまり、現在目に見えている恒星と恒星の間に、光学的に観測できない何らかの物質が大量に存在していなくてはなりません。目に見えないことから、その物質は「暗黒物質(ダークマター)」と呼ばれており、目に見えている物質の数倍はあると考えられています。

なお、「暗黒」や「ダーク」という名前が付いていますが、決して悪いものではなく、単に正体不明の何だかよくわからないもの……という意味で使われています。

■ 宇宙を膨張へと導く謎のエネルギー

さらに不思議な現象は続きます。現在の宇宙は膨張しています。この事実は1929年にアメリカの天文学者エドウィン・ハッブルによって発見されています。しかし、驚くのはここからです。

宇宙空間に存在している物質は、お互いの持っている重力によって引き合います。そのため、普通に考えれば宇宙の膨張は少しずつ遅くなっていくはずなのですが、実際の宇宙を観測してみると、膨張速度は遅くなるどころかむしろ加速していることが、20世紀の終わり頃にわかってきました。宇宙の膨張を加速させるためには何らか別の力が働く必要があり、まだ見ぬその未知のエネルギーのことを「暗黒エネルギー」または「ダークエネルギー」と呼んでいます。

ちなみに、このダークエネルギーはダークマター以上に存在すると言われ、天文学者たちの最新の研究成果によると、現在の宇宙を構成している成分の割合は、目に見える通常の物質が4〜5%、ダークマターが27%程度、ダークエネルギーが68%程度であると推定されています。

■ まとめ


かつて、古代ギリシアの哲学者であるアリストテレスは、この世は火・水・土・空気の4つの元素と、その周りを満たしている「エーテル」という物質から成り立っていると考えていました。あれから2000年以上を経て科学も進歩していますが、それでも宇宙が何からできているのかについてはわずか4k〜5%しか解明できていません。残りの90%以上を占めている「暗黒物質(ダークマター)」も「暗黒エネルギー(ダークエネルギー)」も、その存在はまだ証明されていません。

いつかこの謎が解明されたとき、人類が挑む宇宙への挑戦は大きな一歩を踏み出すことになるでしょう。

(文/TERA)

●著書プロフィール
小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。

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