メラビアンの法則は矛盾だらけ!言語の伝達力が7%説は大間違い
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コミュニケーション
研修の場で使用されることが多い「まったく間違っている法則」が存在します。それは「メラビアンの法則」といわれるもの。ご存知のない方のために、ご説明したいと思います。
情報の伝達経路には、視覚(55%)、聴覚(38%)、言語(7%)の3つの要素があり、それぞれの伝わる頻度を数値化したものが「メラビアンの法則」。これらの数字を並べると、55387になるわけです。
先日も、あるテレビ番組を見ていたところ、この法則が取り上げられていました。しかも、かなりの実績のある講師が、知ったかぶりで説明をしていたのですから驚きです。
メラビアンの法則は、約20年ほど前にコミュニケーションの技術として広まりました。
しかし現在では、提唱したメラビアン自身が「間違った伝わり方をしていること、日常では使用できないこと」を明言しています。ところが提唱者の思惑とは相反して、未だにメラビアンの法則は使われ続けているのです。なぜでしょうか。
■メラビアンの間違った伝わり方「参考例」
イメージしやすいように、実際の使われ方を説明してみます。研修では次のような感じで説明されていることが多いのではないでしょうか?
(これはあくまで“間違った解説の方法”ですのでご注意を)
~ここから~
視覚(ビジュアル)は、相手と会って直接コミュニケーションをとることです。ところが、相手と直接対面しても55%しか伝わりません。
だから、より伝わりやすいようにノンバーバル(身振り手振り)が必要となります。プレゼンや商談の際には、相手により伝わるようにノンバーバルを活用しなければいけません。
次に聴覚(音声)です。聴覚(音声)では、伝えたいことの38%しか伝わりません。
聴覚とは音声ですから、電話がそれにあたります。ところが電話で話していても、伝えたいことが伝わらないことってありませんか? そこで、伝わりやすいように声に抑揚をつけなければいけません。
次に言語(文字)です。言語(文字)では、伝えたいことの7%しか伝わりません。メールって伝わりにくいですよね。メールでコミュニケーションエラーを起こした経験のある人はいませんか?
さらに、メラビアンの法則をよりわかりやすく伝えるために、エピソードを用意します。
ノンバーバル(身振り手振り)の使い方のうまい人として、誰を思い浮かべますか?
いい例がApple社の故スティーブ・ジョブズ。彼は、ノンバーバル(身振り手振り)を交えながら、壇上を右へ左へと歩きまわることで知られていました。このような動作を入れることで、より相手に伝わりやすくなるのです。
さあ、部下や同僚、お客様とのコミュニケーションをより潤滑にするために、今日からメラビアンの法則を取り入れてください。視覚(ビジュアル)55%、聴覚(音声)38%、言語(文字)7%。各数字を並べて「55387」です。
これは「ゴーゴー(55)サバ(38)ンナ(7)。ゴーゴーサバンナ」といいます。はい声を出していいましょう「ゴーゴーサバンナ!」。今日からすぐに実践できるテクニックです。
~ここまで~
これは笑いごとではありません。無知な研修講師の間で、まことしやかに伝えられている悪魔の法則なのです。
■メラビアンの法則はなぜ矛盾しているのか
言語(文字)だけで7%しか伝わらないなら、文書はどうなるのでしょうか。
7%しか伝わらないなら、文書で残しても93%の人に伝わらないわけですから、文書の必要性がなくなります。また、業務のやり取りやはメールでは成立せず、書籍なども著者の意図している7%しか伝わらないことになります。
聴覚(音声)も38%しか伝わらないなら、外出先から上司に業務報告の電話をしても、38%しか伝わらないことになります「報・連・相」が機能しませんから、社内マネジメントに深刻な影響を及ぼします。
視覚(ビジュアル)で55%が理解できるのなら、母国語でない吹き替えなしの映画を見て55%も内容が理解できることになります。言葉がわからずに内容の55%が理解できるとは驚きです。
なぜ、このようなトンデモ理論がいまだに使われるのでしょうか。これは私の推測ですが、「55%+38%+7%=100%」なので、数値の指標として使いやすいからではないでしょうか。
また、社会におけるコミュニケーションの重要性は誰もが理解していますから、コミュニケーションを説明するにあたって便利な指標なのだと思われます。
ところが困ったことに、未だに“メラビアンの法則の素晴らしさ”を教えている先生が大勢いらっしゃいます。学生向けの就職セミナーや、ビジネスマナー研修などで形を変えながら受け継がれているようです。
■メラビアンが自身のサイト上で注意喚起!
メラビアンの実験は「maybe」いう単語をさまざまな声質で録音して聞かせ、どのような印象を受けたかを測定するものです。
強い発音では、普通の発音よりも「そうかもしれない」と感じたことが立証されました。研究自体は、「視覚」「聴覚」「言語」で情報が与えられた際の受け止め方を測定するものでした。
もし研修やセミナーで、メラビアンの法則を教えている人がいたら、質問をしてみてください。
「メラビアンの法則はどのような実験をもとに導き出されたのですか?」と。ほとんどの講師が答えられないはずです。原文を読んだ講師はまず存在しないでしょうから。
ご関心のある方は、メラビアン博士のHP(Mehrabian and nonverbal communication)をご覧ください。
そこにはある一文が記されています。「these equations are not applicable」(メラビアン法則は使用できません)。
講師がなにを話そうと勝手ですが、私は強い違和感をおぼえます。みなさんも、「メラビアンの法則」にはご注意ください。
(文/コラムニスト・尾藤克之)
【参考】
※Mehrabian and nonverbal communication-Presentation Tips from Olivia Mitchell