世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第183回 量的緩和とプライマリーバランス目標の不整合 (2/3ページ)

週刊実話


 もちろん、岩田教授にしても「MB拡大=インフレ率上昇」と説明したわけではない。MB拡大の後には、期待インフレ率の上昇、実質金利の低下、投資の拡大(=需要の拡大)と、総需要不足を補うまでのプロセスが想定されていた。
 とはいえ、現実にはインフレ率を押し上げるほどの総需要の拡大は起きなかった。安倍政権が消費税増税やら、支出削減やら、国債発行の抑制やら、総需要を減らす緊縮財政を推進していた以上、当然の結果だ。
 すなわち、日本銀行が責めるべきは「安倍政権」なのである。ところが、日本銀行は責任を市中銀行に押し付ける「マイナス金利政策」を採用した。

 ちなみに、筆者は別に「日銀は金融政策をやめろ!」などと言いたいわけではない。と言うよりも、現時点で日本銀行が量的緩和の縮小を始めると、ブレグジット(英国のEU離脱を指す造語)を上回る金融ショックが世界を駆け巡ることになる。
 現在の日本銀行は、決して安易な「金融引き締め」に走ってはならない。リーマンショック同様に、日本経済はもちろんのこと、世界経済がクレジットクランチ(信用収縮)に突っ込む可能性が高い。
 とはいえ、このまま年純増80兆円規模の国債買い取りを続けると、今後2年ほどで日本の預金取扱機関(銀行など)の国債が尽き、量的緩和は強制的に終了に向かわされることになってしまう。来年の今頃には、「日本銀行が金融引き締め(量的緩和の縮小)に転じるXデー」が話題になっていることだろう。

 日本銀行のXデーを避けるためには、政府が国債を発行し、預金取扱機関の国債保有残高を増やすことで量的緩和の継続を担保するしかない。ところが、政府は「プライマリーバランス黒字化(以下、PB黒字化)」にこだわり、国債増発ができないでいる。
 短期でPB黒字化を目指す以上、政府は新たに負債を増やすことはできない。すなわち、国債の発行は抑制せざるを得ないのだ。

 政府は国債の発行を抑制する。日本銀行は量的緩和政策で市中銀行から国債を買い入れ続ける。
 最終的に、何が起きるのか。落ち着いて考えてみれば誰でも分かるはずだが、「日本銀行が国債を買い取る量的緩和政策」と、「日本政府が国債発行を抑制するPB黒字化」は、明らかに不整合であり、長期的な両立は不可能なのだ。
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