相沢直とはなんだったのか:ロマン優光連載62

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相沢直とはなんだったのか:ロマン優光連載62

ロマン優光のさよなら、くまさん

連載第62回 相沢直とはなんだったのか

「えー、『久保ミツロウ能町みね子嫌い超嫌い』( http://anond.hatelabo.jp/20160717010611 )というタイトルのはてなの匿名のブログに対する能町さんのTwitterでの反応に放送作家の相沢直さんが怒りを表明。それをRTした吉田豪さんや反応した能町さんに対してよくわからない反論をした後に相沢氏がTwitterアカウントを削除し、水道橋博士の主催するメルマガでよくわからない反論をした件について書いてください。」という編集氏からのメール。「そんなの知らないよ!」と言いたいところですが、仕事なので色々考えてみたいと思います。でも、このメルマガの文章、何が言いたいの? わかんないよ(泣)。

 相沢さんは能町さんの『プロレスも新日さん関係でイラストのお仕事をいただいてとっくに本も出てますよざまみろバーカ』という発言に対して「これをイラストレーターを目指しているプロレスファンが目にしたらどうする。これは彼らに対する侮辱だ。あのエントリーを書いた匿名の奴だって、夢が破れたかわいそうな奴じゃないか。そんな人たちに対してプロがそんなことをいうなんて許されない。文章の力ってそんなことのために使うもんじゃないだろ! そんな優しくない世界は嫌いだ!」という理由で怒りを覚え、その後の自分に対する能町さんたちの反応を含めて、優しくないインターネットの世界から決別するためにアカウントを削除したみたいなんですが、意味がよくわかりませんね。 はてなのエントリーを見てもらえばわかると思いますが、この人は能町さんに対してLGBT(および能町さん個人の履歴)に対する無知と偏見を剥き出しにして罵ってます。このエントリーの続編・久保能町嫌い超嫌い:元増田です ( http://anond.hatelabo.jp/20160718035927 )においても「自分は差別などしていない。」と何が問題だったかわからないままです。こういう部分に自分のような他人が何か言うのはデリカシーがない行為のような気がするのですが、ここに至るまでに、能町さんはいろんなものと戦ってきたんだと思います。漫画『花の慶次』で長渕剛の顔をした真田幸村が「いいか、キサマら人間には触れちゃならん痛みがあるんだ!! 其処に触れたら後はもう生命のやり取りしか残らんのだ!!」と言う台詞をはいてましたが、正にそういうことですよ。それをあれぐらいですましてんだから、別にいいんじゃないでしょうか。
 そもそも、どう考えても相沢さんの方が匿名の彼に対して失礼です。どんな人かもわからない、お笑いを受け手として楽しみたいだけかもしれない人に対して「夢が破れた人間」とか勝手に決めつけて、哀れんでますもの。勝手に決めつけられて哀れまれるのって本当にむかつきません? 何様のつもりと言われても仕方ないと思います。
 昔、ぱられるわーるどというアイドル・グループのメンバーが「同情で物販とかに来てほしくない。」とブログに書いてあったのを読んで以来、自分はそういうことをしないようにしています。人間にはプライドというものがあるのです。それを考慮せずに、独りよがりの勝手な善意で他人に同情を見せるなど、本当に無礼な振る舞いだし、人間の尊厳を踏みにじる行為だと思いますよ。

本当に害のある人は他にいる

 はてなの彼も、あの二人か嫌いなら、ちゃんと二人のことを調べて読んだ人が共感できるようなことを書かないとダメですよね。わざわざ、あそこに書いたってことは他人に読んでもらって共感してもらいたいから書いてるんですよね。じゃあ、伝わらないと意味ないじゃないですか。全体的に事実誤認が多すぎる。自分で言語化できないので「あの人もこう言ってた」みたいなことを言って補完しようとするけど、勝手な解釈にすぎない。二人の特性の区別すらついていない。下手したら能町さんの本職がエッセイストなのも知らない。様々なことに無知で自分が無知であることにすら気づいてない。そんな文章に誰が共感します? しませんよね。
 彼は二人が自分の好きなものにミーハー的にがっついては仕事で関わってくると思ってるみたいですね。あの二人が何かに言及するとそこが仕事に結びつくことが本当にあるとするなら、「数字を持っている人なので、関わることで、それをこちらにいただきたい。」「仕事で貢献してくれそう。」と運営側が思ったってことだと思うんですよ。そんなんなら、周回遅れでミーハー的に色んなものにがっついてトンチンカンな発言をして対象に何の貢献もしない大谷くんという私の知り合いの人の方がよっぽど害があると思います。そもそも、大前提からして間違ってると思うんですが、久保先生も能町さんも嫌われるところでは普通に嫌われるし、批判も悪口もいっぱい言われてないですか?
 嫌いな対象について書くときは、好きなものに対して書くときの何倍も相手のことを調べて書かないとダメなんですよ。そうやって、時間と労力を費やしてちゃんとした批評が書けるわけで、そうやって書いたものがはじめて相手を突き刺すわけで、相手が反論できないようなもの、反論したらかえってこちらの術中にはまるようなレベルのものを書かないと寂しくないですか。相手に届く、届かない以前に。
 反論したり、批判したりしたいなら、ちゃんと読んだ人が理解できる文章を書かないといけないということは相沢さんにも言えることですよね。まあ、わかるところはあるのです。読む側が思いきりあれこれ推理して、色々補完してはじめてなんとなくわかるレベルですけど。そういう部分があるのに、それを伝えられない雑な文章を書いてバカだと思われるのは本当に書いた時間が無駄じゃないですか。本当にバカみたいです。バカにバカと言うなと相沢さんは言ってましたが、こういう時にバカと言われるのは、バカだからじゃなくてバカな振る舞いをしたからです。何もしてなければバカとは言われません。振る舞いには責任があるから仕方ないのです。バカと言われると悔しいですよね。だったら、ちゃんと伝わることを書いたほうがいいですよ。内容が読み手に理解されて、なおバカよばわりされるとしたら、本人の力が足りない、世間と遊離してるということだから、諦めてください。伝えるべき内容もなく、単に意地になってるだけなら…素直に謝る方がいいと思います。
 こういうの他人事じゃなくてね。自分もいつかこういう風なことをやってしまわないか心配になるのです。書くことは本当に恐ろしいことです。ほんと、お腹痛い…がんばろう…。
 え、吉田さんのこと? あ、通常運行っすね。

<隔週金曜連載>

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写真:相沢直さんも利用されているアイコンの元画像(コラージュ・制作者不詳)
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ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。現在は、里咲りさに夢中とのこと。

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