日本の憲法改正論議に影響を与えたトルコの軍事クーデター|やまもといちろうコラム (2/2ページ)

デイリーニュースオンライン

■「非常事態条項」は必要不可欠

 ここで重要なのは、トルコ憲法119条、120条および121条で規定されている、非常事態の宣言と、それに関する規定です。ひとたび非常事態が宣言されると「憲法第15条の原則により規定された基本的権利および自由の制限および停止、非常事態への対策の実施方法、公職従事者に付与される権限の内容、公職従事者の待遇の変更」、すなわち政府は「緊急時であると指定されれば、基本的人権が停止される」という結構な内容なのであります。

 クーデターという非常事態と、それへの事態認定、行ったのは強権政治で鳴る大統領という条件が揃うと、民衆の大統領への支持があるとはいえ、凄い勢いで反体制派の一掃が具体的な裁判の手続きも経ずに進んでいってしまうことになります。本当にクーデターのような事態が起きたとき、憲法によって人権が停止されるとこのようなことが平気で起きるのだ、と身をもって教えてくれているのがトルコだということです。

 翻って、日本の憲法改正論議においては、いわゆる平和憲法条項の代名詞でもある憲法第9条改正の是非とは別に、このトルコで大統領が容赦なく使った「非常事態条項」を盛り込むべき、という議論が出てきているのが実際です。

憲法改正は「緊急事態条項」から一点突破を図れ
改憲、緊急事態優先を=自民・船田氏
なぜ安倍政権は憲法改正を目指すのか-船田元(自民党憲法改正推進本部長)

三つの原則は絶対に変えない

【塩田】国民主権、平和主義、基本的人権の尊重は、現行憲法の基本原則で、国民に支持され、広く定着していると思いますが、基本原則の見直しも含めて議論するのですか。

【船田】これから衆参の憲法審査会の中で議論をしていくことになりますが、ここは改正していけないという、いわゆる「改正の限界」もあると思います。保岡興治・衆議院憲法審査会長はそこを非常に重視していて、三つの原則は変えない、と。各党で確認する必要がありますが、三つの原則は絶対に変えないことという点では、各党とも間違いなく共通だと思います。

 自民党の船田さんは基本原則を曲げないと仰ってくれてますが、ちゃんとここだけはウォッチしないといかんだろと思う次第です。やっぱり政府が国民の自由を制限することや、人権を停止することの是非は、以前の安保法制などに比べれば格段に重い話なので、充分すぎるほど充分に議論してから判断しないと駄目だと思うんですよ。

 トルコの受難はヒトゴトではなく、我が国の健全な憲法改正論議や是非に繋がって欲しいと、一人の日本人として強く思っております。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

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