ぼんやり時間が脳にいい!電車内でゲームしても何も悪くない理由

Suzie(スージー)

ぼんやり時間が脳にいい!電車内でゲームしても何も悪くない理由

『これが「買い」だ 私のキュレーション術』(成毛眞 著、新潮社)の著者は、マイクロソフトの社長を務めたのちに独立し、投資コンサルティング会社「インスパイア」を設立した人物。

現在は早稲田大学客員教授、スルガ銀行社外取締役、そして書評サイト『HONZ』代表としても知られています。

そんな著者による『週刊新潮』の人気連載を単行本化した本書は、情報に流されることなく、あらゆるものを的確にキュレーション(情報を集め、まとめる)する術を明かしたもの。

最先端IT機器やアプリ、果ては住まいの選び方、あるいはSNS活用法、投資先、遊び場所、接待手段、人物やニュースの見分け方まで、モチーフもさまざま。

そして、「手に入れるなら、世間の逆を行け」という“逆張り”の選び方を貫いている点が最大の特徴だといえます。

きょうはそのなかから、時間についてのユニークな記述を引き出してみたいと思います。

■ぼんやりする時間を持つべし!

ご存知のとおり、昨今は電車の中で本や雑誌を読む人が少なくなり、代わりにスマートフォンでゲームをしている人をよく見かけるようになりました。

それは悪いことのようにいわれていますが、著者の意見は少し違うようです。「ゲームによっては、脳にとってむしろいいことなのではないか」と思っているというのです。

そしてもうひとつ重要視しているのが、「ぼんやりする時間」を持つことだといいます。

ボーッとして過ごす時間が大切だということはよく聞きますが、ボーッと草原で大の字になっているとき、温泉に浸かっているときなどには、心身ともにリフレッシュしていると感じられるもの。

だから著者もかねがね、ぼんやりする時間をつくってきたそうです。

■ぼんやりするためにゲームする

とはいえ現実的には、ぼんやりするために草原に出かける時間を捻出したり、温泉を探したりするだけでも大仕事。

しかしここで注目すべきは、「なので、私はタブレットでゲームをしている」という著者の記述です。

草原で寝転んだり温泉に浸かったりする代わりに、タブレットでゲームをするとは、意外過ぎる発想ではないでしょうか?

ただしゲームといっても、一時期流行した脳をトレーニングするようなタイプのものではないだそうです。

また、世界征服を企む敵と戦い続けたり、迷宮を探検し続けたりするためにプレーヤーとして成長し、さまざまな決めごとをおぼえ、戦略を練らなくてはならないような複雑なゲームでもないのだとか。

かつては長時間拘束されるタイプのゲームにハマり、起きている時間のほとんどすべてをつぎ込んだことが著者にはあるそうですが、そんな経験を持ってしても最近のゲームは複雑すぎ、わからないことが多いのだといいます。

はじめたとしても、悶々としながらスタート地点に佇むことになるだろうから、脳は休まることがないわけです。

ちなみに余談ですが、そんななか、新版になってもさほど難易度を上げない任天堂の『ゼルダの伝説』シリーズは評価に値するそうです。

■予定調和的なゲームでぼんやり

しかし、将棋やオセロのように、コンピュータや対戦相手と真剣勝負をするようなものもしないのだといいます。

その理由は、著者がビジネスを対戦型ゲームだと思っているため。つまり実際に対戦型ゲームをはじめたら、つい本気になってしまって「間違いなくぼんやりできない」というのです。

そこで著者が移動中や待ち時間にしているのは、まず『Hidden Object Games』と呼ばれるジャンルのゲームなのだそうです。なかでも好ましいのは、一枚の大きなイラストのなかに潜んでいるアイテムを探すタイプ。

と聞くと思い出すのは、樹木のシルエットのなかに隠されている動物を探すような昔ながらのゲーム。しかし、それよりもずっと単純だというのです。

なぜなら、画面になにが隠れているのか、文字でヒントが表示されるから。そのため、文字を見ると反射的に手が動くというわけです。

正直なところ、そう説明されても、なにが楽しいのかわからない部分はあります。

でも、予定調和的に身をまかせることは、思いのほか快適だというのです。つまり、気分よくぼんやりできるということ。

■ぼんやりのための手間をかける

なにもしない、ぼんやりできる時間をつくるのは、意外に難しいもの。しかし著者は、ゲームというツールを用いることによってそれを確保しているというわけです。

そして、そんなことをしているからこそ、「いろいろなものに追われる現代日本では、せめて電車のなかくらいは、ぼんやりするためにゲームをしてもよいのではないか」という発想になるというわけです。

だから著者自身も、ゲームをするのはたいてい移動中。そして飽きたら、ボーッとするための新しいゲームを懸命に探すのだそうです。そして、「ぼんやりするため、この程度の手間は惜しんではならない」とも記しています。

このトピックからもわかる通り、著者の発想は実にユニーク。適度のユーモラスでもあるので、他の項目も含め、リラックスしながら読み進めることができるはずです。

(文/作家、書評家・印南敦史)

【参考】

※成毛眞(2016)『これが「買い」だ 私のキュレーション術』新潮社

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