相手と話すことが何もない!そんな時は「3Kの法則」を使うべし
『会話ははじめの4分がすべて――相手とうちとける最短・最速のコミュニケーション術』(箱田忠昭著、フォレスト出版)というタイトルは大胆なようにも思えますが、そこには明確な理由があるようです。
なぜなら著者は、「会話ははじめの3分33秒で決まる」と考えているから。つまり、“およそ4分”だということです。
そして重要なポイントが、そのわずかな時間の扱い方によって、その後4分以降の相手との関係性が決まってしまうということ。
そこでうまくいかなくなると、相手から好印象を持ってもらえず、面接や営業などの場面においては“それっきり”になってしまう確率が高いというのです。
しかし、だとすれば気になるのは、「その4分の間になにをすればいいのか」ということであるはず。とはいえ著者によれば、それはさほど難しいことでもなさそうです。なにしろ、大切なのは「雑談」だというのですから。
■「雑談」はコミュニケーションの潤滑油
雑談とは、コミュニケーションの潤滑油だと著者は主張します。
なぜなら雑談をすることによって空気が緩み、互いをよく知ることができるようになり、それが相手に対する好感につながるから。
つまり「3分33秒」の内訳は、こうなるわけです。
第一印象:3秒
あいさつ:30秒
雑談・世間話:3分
とてもシンプルな考え方ではないでしょうか? いってみれば著者は本書において、こうした考え方を軸にコミュニケーションのあり方を説いているわけです。
しかしコミュニケーションについて考えるとき、大きな壁になるものがあります。それは「初対面では、いったいなにを話したらいいのか?」という問題。
話し上手な人からすれば当たり前すぎることかもしれませんが、実際のところ、そのことで頭を悩ませている方は少なくないはずです。
ある程度ネタを仕込んで行ったとしても、必ずしも現場でそれが使えるとは限りません。かといって「どうせ雑談だから」と、話の構成をないがしろにしていいというわけでもないでしょう。
しかし、だからこそコミュニケーションに際して意識しておきたいのは、「3Kの法則」なのだとか。
■相手に好かれたいなら「3Kの法則」を
3Kとは、「好意」「好感」「好印象」の頭文字をとったもの。
そして、まず真っ先にすべきことは、自分が相手に対して「好意」を持つ努力をすることだといいます。
もちろん、もともと嫌いだったり苦手だったりする相手に好意を持つことは容易ではありません。でも初対面であれば、いい意味で相手のよさも悪さもわからない状態。だからこそ、それは好意を持つためのチャンスになるわけです。
なお、見た目に注目しすぎると、好き嫌いがはっきり分かれてしまうことがあるので注意。
そんなときは、「きっと人格的にすばらしい人のはずだ」「彼から学ぶべきことがあるはずだ」というような姿勢になることが大切だといいます。
自分のことを好きになってもらおうと努力する前に、まずは自分から先に好意を抱く。それが大切だということです。
■人は自分に好意がある人を好きになる!
不思議なことに、心に抱いている感情は必ず相手に悟られてしまうもの。
たとえば誰かと接した際、「この人、自分に興味がないな」「私のこと、好きじゃないな」と感じた経験は、多かれ少なかれ誰にでもあるはずです。
しかも困ったことに、人はネガティブな感情ほど察してしまうものだと著者は指摘しています。たしかに、そのとおりかもしれません。
だとすれば、逆から考えた場合、自分が心のなかで「こいつ、イヤなやつだな」とか、あるいは「この人、いい人だな」と思えば、それは必ず相手に伝わるということになります。
そして当然ですが、人は自分に対して好意を持っている人に好感を抱くもの。そしてその好印象は、のちのちまで残ることになります。
そういう側面があるからこそ、初対面のときは、好印象を残していくことだけを考えるくらいでちょうどいいというわけです。
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本書の魅力は、コミュニケーションを「最短・最速」という観点から捉えている点。たとえばそのいい例が、「3Kの法則」だということです。
いいかえれば、コミュニケーションは決して難しいものではないということ。本書を読むと、きっとそんなことを実感できるはずです。
(文/作家、書評家・印南敦史)
【参考】
※箱田忠昭(2016)『会話ははじめの4分がすべて――相手とうちとける最短・最速のコミュニケーション術』フォレスト出版