元IBM社員が教える!仕事を速くこなすために必要な3つの要素
どんなオフィスにも、「仕事が速い人」と「仕事が遅い人」がいるものです。しかし、その差はどこから生まれるのでしょうか?
あるいは、自分自身の仕事のスピードを上げるためにはどうしたらよいのでしょうか?
その答えを見つけるため参考にしたいのが、きょうご紹介する『仕事が速い人は「見えないところ」で何をしているのか?』(木部智之著、KADOKAWA)。
著者は、ITエンジニアとして日本IBMに入社し、14年間のキャリアの大半をシステム開発のプロジェクトに費やしてきたという人物。
現在は大規模で困難なシステム開発プロジェクトで、数百人の開発チームのプロジェクトリーダーとなっているそうです。
つまり本書では、そのような経験を軸として、仕事が速くなるためのコツを紹介しているわけです。
■仕事を速くこなすための3つの要素
「仕事が速い人」と聞くと、「手の動きが速い」というようなイメージを抱くかもしれません。「デキる人」=「次から次へと猛烈なスピードで仕事を処理する人」とでもいうように。
しかし、必ずしも本質はそれだけではないのだと著者はいいます。仕事の速さには「速くやる」「ムダを省く」「確実にやる」という3つの要素があり、仕事が速い人はそれらを兼ね備えているというのです。
(1)速くやる
「速くやる」とは文字どおり、「動き」を速くすること。たとえばマウスを使わずにショートカットで操作をしたり、あるいは手の動きそのものを速くするというような動きのことです。
そんなことかと思われるかもしれませんが、1回1回がほんの数秒の違いであったとしても、そのテクニックを「知っているか、知らないか」「やるか、やらないか」でどんどん差が開いていくということ。
だからこそ、いろいろなテクニックを覚えさえすれば、誰にでも速さを追求できるわけです。
(2)ムダを省く
ムダな時間とは、著者の言葉を借りるなら「やらなくてもいい作業をしてしまった時間」。
ひとりでやる作業、誰かとのやりとり、考えることなど、どんなことについても、仕事が速い人はムダなことをしていないというのです。
しかし対照的に、仕事が遅い人はそれらの「ムダ」に気づいていないことが多いもの。だとすれば「どんな作業がムダなのか」を見極め、それらを取り除けば仕事が速くなるという考え方です。
(3)確実にやる
確実にやろうとすれば、逆に時間がかかってしまいそうです。しかし、それが速さにつながるのだと著者は主張するのです。
理由はシンプルで、もしもやったことが間違っていたとしたら、やりなおさなければならなくなるから。厳密にいえば、「どこからやりなおすか」を考えること自体にも時間がかかってしまうということ。
つまり、速くやってミスを増やすよりは、ゆっくり確実に進めて間違いのない状態にしたほうが、最終的には時間を短縮できるという考え方です。
■2回目までは力技で様子を見るべし
ビジネスパーソンは、この2つのタイプに分けられると著者は分析します。
・あまり深く考えず、とにかく行動して最後に帳尻を合わせる「力技タイプ」
・事前にいろいろ作戦を練って、計画どおりに実行する「頭脳タイプ」
そして自身は、最速で仕事を終わらせるために、この2つの人格を自分のなかに持つようにしているのだといいます。
1回しかしない仕事で、かつ1時間で済むようなものは、あれこれ考えたり、効率的な方法を調べたりしてから着手するより、力技で1時間で片づけてしまったほうが速い場合も。
たとえば「テキストを打ち込むだけ」「ひたすらホチキス留めをするだけ」と言ったような作業です。こういう作業については、「どうやったら効率的にできるか?」「ムダな作業はないか?」などと考えている時間それ自体がムダだということ。
そういう仕事は力技でこなせばいいので、1時間でやってしまうのがいちばん効率的だというわけです。
しかし、1回だけだろうと思って受けた仕事を、「もう1回やって」とふたたび頼まれることもあるでしょう。
そんなときは、2回目までは力技で様子を見るべき。しかし、さらに「もう1回やって」と頼まれて、同じ仕事を3回やらなければならなくなった場合は、以後も4回、5回と繰り返す可能性が高くなるはず。
そこで、3回目になった時点で、以後の効率化を考えることが重要。効率化するにあたっては調べる手間がかかることもありますが、その手間は先行投資と考えるべきだと著者はいいます。
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このように、効率化についての徹底した視点を備えているところが著者の強み。
そして、こうした考え方に基づいて、メールやエクセルのショートカット、ものの考え方や伝え方、任せ方、果ては思考法までを効率化する方法が紹介されているので、とても実践的な内容。すぐに使えるアイデア満載です。
(文/作家、書評家・印南敦史)
【参考】
※木部智之(2016)『仕事が速い人は「見えないところ」で何をしているのか?』KADOKAWA