【ツレが産後ウツになりまして】最終回:夫婦で泣いた、断乳の夜 (2/3ページ)
生後1ヶ月で子どもにアトピーの疑いがあると診断された。母乳で育てていたため、以来妻は、卵・小麦粉・大豆類・乳製品・イモ類の除去食を余儀なくされた。子どものほっぺは真っ赤に腫れ上がれ、僕は赤ちゃんと外出しても人の目に触れさせることを恐れた。
それが治療を進めるうちに「卵アレルギーのみ」であることが判明し、この日のように小麦粉と乳製品、大豆たっぷりの料理も食べられるようになった。ステロイドのあまりの効き目にビビってはいるものの、赤ちゃんのほっぺにもはや腫れものはなく、いわゆるきれいな“赤ちゃん肌”を取り戻した。
本当にあれは何だったのだろうか?
■夫婦で泣いた、最後のオッパイ
大人用の食事をつくり終えた妻がキッチンから出てきて、ソファの僕の横に座った。大人が食べる前に、赤ちゃんにオッパイをあげるためだ。赤ちゃんはよほど腹が減っているのか「あーあー、だーだー」と、先ほどからうるさい。
子どもが産まれてからの1ヶ月間、義父母が赤ちゃんの世話にやって来たことがあった。あまりに泣きはらす孫を見た義母は「よお泣く子はお喋りになるたい。この子は、よお喋る子になりよる」と言っていた。
あのときは「夜泣きのひどいわが子への気休め」ぐらいにしか思っていなかったのだが、あれは本当で、まあよく喋る。まだ具体的な言葉を発することはできないが、いつも僕か妻に「だあだあ」と何かを伝えようとしている。
「はい、おっぱいですよー」
妻が乳房を出すと、小さな両手を乳房に添え、勢いよくかぶりつき、んぐんぐと飲みだした。
「ちゅっ、ちゅっ、ちゅ~ 赤ちゃん おっぱい上手~」
赤ちゃんが母乳を上手く飲めるようになってから、妻はこのような自作の歌をおっぱいのときに歌うようになった。だから楽し気に歌う妻にとってこの歌は、育児がすべて上手くまわりだした象徴なのだろう。
妻が僕に話しかける。
「もう今日が最後だなんてね……」
「本当だよな。やっとおっぱいが上手になったのに、これで最後なんてな」
明日から妻は復職する。それに伴い、赤ちゃんも明日から保育園に通うのだ。