文部科学省が発表した「校内暴力の発生件数」は嘘?統計の裏事情

Suzie(スージー)

文部科学省が発表した「校内暴力の発生件数」は嘘?統計の裏事情

誰だって、平和な毎日を送りたいもの。そのため、「自分の子どもにはいじめや校内暴力のない学校に通わせたい」と思うのが親心ですよね。

そこで気になるのが、校内暴力の発生件数。毎年秋ごろに、文部科学省が前年度の校内暴力の発生件数を都道府県別に発表しているのをご存知でしょうか?

実はこの数字には、知られざる裏事情があるのです。今回はそれも含めて、校内環境の実態について言及していきたいと思います。

■校内暴力が本当に多いのは大阪・高知・京都

まず、文部科学省の発表を見ると、平成26年度の校内暴力の発生件数は以下の通り。

1位:大阪府(10,116件)

2位:神奈川県(6,716件)

3位:千葉県(3,665件)

しかし、1,000人当たりの発生件数に換算すると2位と3位が変わります。

1位:大阪府(10.6件)

2位:高知県(8.2件)

3位:京都府(7.9件)

神奈川県や千葉県の発生件数が多いのは、単純に人口が多いからだと判断できます。

では、大阪府や高知県、京都府はいじめや校内暴力の多い地域だといえるのでしょうか?

■統計には含まれない集団暴行を受けた過去が

私は、大学を卒業して1年目に公立の中学校に赴任しました。あるとき、生徒間のいじめを止めに入った結果、激昂した問題児たちに羽交い締めにされ、集団暴行を受けました。

事件は警察沙汰になりましたが、校内で揉み消されたため、教育委員会に報告されることはありませんでした。

文部科学省の統計は全国の教育委員会からの報告によるものなので、私が被害にあった事件は、その年の統計には換算されていないことになります。

詳しくは、当時の事件を漫画化していますので、私のホームページをご覧ください。無料で読めます。

■統計の数字では校内暴力の真実はわからない

2011年の大津市中2男子いじめ自殺事件を受けて、いじめ防止対策法が成立し、学校の隠蔽体質は少し改善されたようです。

しかし現役教員の話を聞いている限りでは、まだまだなくなってはいないようです。

では、それらを踏まえた上で、この統計を見るとどうでしょうか?

そうです、校内暴力の発生件数が多い地域は、報告義務を果たしているといえそうなのです。逆に、発生件数の少ない地域はどうでしょうか?

でも、もしかすると、発生件数の多い地域は、隠蔽した上でこの数字なのかもしれませんし、発生件数の少ない地域も、報告義務を果たした上でこの数字かもしれません。

つまり結局のところ、これらの統計を見たところで、地域や学校の環境などは一切わからないのです。

■学校が校内暴力事件を揉み消そうとする理由

では、なぜ学校はそこまでして事件を揉み消そうとするのでしょうか?

答えは簡単です。責任を問われるからです。

そんなの当たり前だと思われるでしょうか? いじめが発生した場合、それは学校の責任でしょうか? 教師の責任でしょうか? 担任の責任でしょうか?

私はそうは思いません。

私の子どもが学校でいじめにあっていたとして、担任からその報告を受けたとします。私であれば「事件が大きくなる前に、よく報告してくれた」と感謝します。

しっかりした担任だと信頼します。いじめの報告があれば、保護者間で連携をとり、地域で監視する体制を整えることが可能になるかもしれません。報告がない状態では、なんの対策も打てません。

しかしながら世の中の保護者は、どうもそうは思わない人が多数派のようです。

校内で起こる事件はすべて学校の責任であり、いじめが起こるのは、担任の指導不足であると捉えられるのです。だから、学校はいじめの報告に対して消極的になります。本当に学校が悪いのでしょうか?

■事件後に「今後どうしていくか」を考えよう

たとえば、ある地域で殺人事件が起こったとします。

殺人事件が起こったのは、その地域の管轄の警察の責任でしょうか? 違いますよね。学校も同じです。

たしかに事件を未然に防ぐことは重要ですが、100%完全に防ぐことはできません。重要なのは、起こったあとに、責任が誰にあるのかを問うことではなく、これからどう対処していくかであるはずです。

いじめの報告があったとき、いじめが起こったことを嘆くのか、大事になる前にわかったことに感謝するのか、どちらがいじめの発生件数を抑えることにつながるしょうか?

学校はもっと、保護者に助けを求めてもいいし、保護者はもっと学校に対して協力的でいい。そうやって、開かれた環境で、地域全体が子どもを育てる。そうなれば素敵だと思いませんか?

責任のなすり付け合いに、建設的な未来などあり得ません。

(文/元教師・教育問題漫画家・眞蔵修平)

【参考】

眞蔵修平ホームページ

眞蔵修平Twitter

眞蔵修平Facebook

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