その時間は必要?それともムダ?うまく「時間配分」できる考え方
人は、ゴールがあるとがんばれるもの。だから、ゴールが遠い人生だったとしても、要所要所にゴールを設定すれば、メリハリが効くことになる。
仕事にしても同じで、「とにかく長く仕事をする」のではなく、「何時」とゴールを決めて、そこで終わらせるために努力をすることが重要。間に合わなければ、翌朝早くからやる。
そういう姿勢が大切なのだと訴えかけるのは、『こいつできる! と思われる いまどきの「段取り」』(野田宜成著、日本実業出版社)の著者です。
日産車体のエンジニアを皮切りとして、以後は船井総合研究所でコンサルティングに携わり、まぐまぐ事業開発室長を務めたのちに独立し、「継続経営コンサルタント」として活躍しているという人物。
そんな華々しい実績と経験を軸として、本書では段取りのよい人と悪い人との差を解説しているのです。きょうはそのなかから、時間についての考え方を抜き出してみたいと思います。
■必要な時間とムダな時間の見極め方
当然のことながら、時間は限りあるもの。そしてコンピュータが発展した現代においては、その限られた時間のなかで、たくさんのことをやっている人と、そうでない人の間に大きく差が出るようになっていると著者は指摘しています。
「業務は人に任せてもいい」と考えている人と、「業務は依頼を受ける指示待ち」という人とでは、大幅に時間の使い方が変わってくるもの。「なにをすべきか」を考え、コンピュータや機械、他の人に任せ、自分は考える側になると、仕事が早くなるわけです。
そしてこれからの時代は、ガムシャラに働くのではなく、上手に時間配分ができ、時間をコントロールできる人が優遇されるようになるといいます。そこで重要な意味を持ってくるのが、「必要な時間か、ムダな時間か」を見極められるかどうか。
必要な時間とは、
・自分にしかできないもの
・未来から見ていま必要なこと
ムダな時間は逆で、
・誰もができるもの
・未来から見て必要のないこと
だといいます。
■一見ムダな気がするけど必要なもの
そして、必要な時間とムダな時間を見極めるにあたっては、「一見ムダに見えて必要なもの」がいちばん厄介なのだそうです。それは3つあるといいます。
1つ目は、誰でもできる単純作業だけれど、それをやることにより、改善が見つかるなどの効果があるかもしれないもの。現場に入ってみることなどが、これにあたるといいます。
2つ目は、積極的休養。休みは一見ムダに見えますが、人間は機械と違って、ときどき休まないと動けなくなってしまうもの。そこで、必ず余裕を持って時間を設定することが大事だということです。
たとえば1週間のなかで、1日は予定を入れない日をつくる。あるいは1日のうち1、2時間はなにも入れないようにする。そうした時間には、人と会う、本を読む、旅をするなど、未来への投資にあてるわけです。
3つめは、過去について向き合うこと。現在から見て過去はすでに終わったことですが、未来を生み出すためには、過去と向き合うことがとても大切なのだと著者は感じているのだそうです。
お墓参りに行くとか、親孝行をするとか、祖父母に先祖のことを聞くとか、生まれ育った土地を知るなど。
それらが必要だという因果関係を明確に言葉にはできないものの、多くの成功者たちを見ると、確実にこの領域を大切にしていると著者はいいうのです。
また著者自身も、お墓参りの回数を増やしたときから、ムダな時間がなくなってように感じているのだとか。
しかしこれは、決して霊的な意味ではありません。著者は、こう解釈しているのだそうです。
お墓に行くと、誰もが手を合わせます。本当はそこには誰もいないのに、いるような気にもなるし、いるつもりで、お礼や報告、お願いごとをするわけです。すると、なぜかピリッとした気持ちにはならないでしょうか?
著者によればそれこそが重要で、「誰もいないときにも誰かが見てくれている。だからちゃんとしよう」と、だらけたころにピリッとすることが出来る癖づけをしているように思うのだというのです。
つまりそういう意味において、過去を振り返ることもまた必要なのではないかという考え方です。
■うまく時間配分するためのポイント
いずれにせよ、このように時間配分は重要。まとめてみると、
○よい段取り:必要な時間を意識し、ムダな時間も必要な時間にしてしまう
△惜しい段取り:必要な時間とムダな時間をきっちりと分け、いつも余裕がない
×悪い段取り:ムダな時間を過ごし、自分しかできないことをしていない
ということになるのだとか。「忙しい忙しい」と言葉にするだけになってしまわないように、心がけておきたいものです。
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全体を通し、段取りのよい人と悪い人とをシチュエーション別に、しかも具体的に比較しながら説明が進められていくためとてもわかりやすい内容。段取り上手になるためには、読んでおくべきかもしれません。
(文/作家、書評家・印南敦史)
【参考】
※野田宜成(2016)『こいつできる! と思われる いまどきの「段取り」』日本実業出版社