尖閣紛争が本格化?中国の”領海侵犯”に隠された真意

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尖閣諸島周辺の水域に侵入した中国船団について考える (C)孫向文/大洋図書
尖閣諸島周辺の水域に侵入した中国船団について考える (C)孫向文/大洋図書

 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。

 2016年8月6日、230隻以上もの中国籍の船団が尖閣諸島(中国名 釣魚島)周辺の水域に侵入するという事態が発生しました。尖閣諸島を自国領とする日本政府はただちに中国政府に対し抗議声明を発表し、日中間に緊張が走っています。

■すでに奪還作戦は開始している?

 中国船団の大半は民間の漁船でしたが、6隻の中国海上警察の船舶が参加していたようです。僕はこの事実を知り人民解放軍の戦略を思いだしました。2015年、軍事系メディアのインタビュー上で中国海軍の幹部が「釣魚島を『奪還』する方法は?」と質問された際、「奪還用の中国艦隊の前に民間の漁船団を並べる。自衛隊は民間人に対する攻撃が禁止されているため、こちらは反撃されることはない」という「人間の盾」ともいうべき戦法を発表しました。いかにも人民解放軍らしい卑劣なアイディアですが、今回の侵入は「人間の盾」のシミュレーションではないでしょうか。

 また、今回の件を機に中国国内の軍事評論家やBBS上では、尖閣諸島を奪還するための手法が数多く考案されています。その内の主要なものをまとめると、

・中国海軍が所持する兵器の性能は自衛隊や在日米軍のものと比べるとあらゆる面で劣る。正面衝突を避けるため宣戦布告を行わず、ゲリラ戦法で奇襲する。
・中国の艦隊は尖閣諸島から12海里(約22km)程度の位置で停止し、反撃に向かう日米艦隊にあらかじめ設置した大量の機雷で打撃を与える。奪還後はロシア製の地対空ミサイル「S400防空ミサイル」を設置し、オスプレイ等の襲撃に備える。
・反撃時に備え、中国の国土防衛のために釣魚島に近い福建省、浙江省沿岸一帯に地対空ミサイルを設置し、場合によっては核ミサイルを設置する。

 といったものでした。また「日本に対するアメリカの軍事支援を阻止するための米中関係の強化や在日中国人による裏工作」、「盾にする民間漁船を操縦する人員を大量徴収するための愛国主義教育の徹底」、「中国が保有する東シナ海の施設に軍事レーダーを設置し常に情報を収集する」、「釣魚島周辺への侵入を常態化することにより、日本の海上保安庁の警戒態勢を鈍化させる」、といった作戦が立案されていました。なお、現在中国が保有する東シナ海のガス田施設にレーダーが搭載されていることが判明しており、僕は上述の作戦のいくつかは水面下で実行されていると推測しています。

■加熱する危険なナショナリズム

 今回の船舶侵入に対する反応を中国のネットで閲覧すると、「よくやった! 俺は軍に金を寄付する!」、「釣魚島周辺の海上保安庁船を撃破せよ!」、などと賛美する声が多数上がっていました。また「南シナ海問題の仲裁に協力した日本に対する報復だ!」、「日本の外務省が抗議している、気持ちいい!」などと日本よりになびく国際世論に対する不満解消のような声もありました。その一方、「領海侵犯を停止せよ」といった冷静な意見がほとんど見られなかったのが印象的でした。「毛沢東の精神を見習え!」といった意見通り、今回の事態は中国国民の偏狭的なナショナリズムを大いに刺激したようです。

 現在、日本の左派層が沖縄・高江のヘリパッド建設問題に対ししきりに反対声明を述べていますが、中国の領海侵犯に対し抗議を行ったという話は耳にしません。「軍事政権」と彼らが批判する現行の安倍晋三政権ですが、日本の防衛費が増加しているのは中国の軍事拡張が元凶なのです。

 仮に中国側が上述のシミュレーション通りの作戦を発動した場合、現在の日本の防衛体制では尖閣諸島を再奪還するのは非常に困難です。僕自身は現時点で尖閣諸島周辺に自衛隊や在日米軍の部隊を派遣し、防衛体制を強化するべきだと思います。さらに日本の領土に侵略行為があった場合、迅速な対応をとるためには、現行憲法の改正が必須事項になると思います。

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の31歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。近著に『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)など。

(構成/亀谷哲弘)

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