天才テリー伊藤対談「八名信夫」(2)大スターばかりの現場は大変ですね

アサ芸プラス

天才テリー伊藤対談「八名信夫」(2)大スターばかりの現場は大変ですね

テリー 健さんと八名さんは、大学が同じだったんですよね。

八名 うん、2人とも明治大学の商学部で、かわいがってもらいました。ある時、「八名、お前にこれやるわ」って、着てるジャンパーを脱いでくれてね、「こんな高価なジャンパー、自分では買えないな」と思って、大切にしまってたんだけど、あるドラマのロケで、上野駅を逃げる犯人役をやった時に、役作りでそのジャンパーを着たんですよ。だけど隠しカメラで撮っていたもので、本物の犯罪者と間違えられて、ロケだと知らない人たちにボコンボコン殴られてね、ジャンパーがボロボロになっちゃった。

テリー せっかく健さんにもらったのに。それは報告したんですか。

八名 報告しました。「すみません、先輩にいただいた服がボロボロになりました」って。その時は「またお前にやるよ」って言ってくれましたけど、その約束はついに果たされませんでした。

テリー 僕は「唐獅子牡丹」以前の、まだ神格化される前の健さんも好きなんですよ。甘い二枚目の役が多くてね。

八名 サラリーマン役とかあったね。あの頃の健さんは、まだ芝居ってものを探ってたんじゃないかな。

テリー それはどういう意味ですか?

八名 演じるというより、「まず自分のいい顔を出さなきゃ」と思ってるように俺には見えたね。当時は、出演作品にも恵まれてなかったから。まずはそういう勉強から入ったんじゃないかな。

テリー 確かにその頃の出演作の主役は、江利チエミさんや美空さんでした。その頃、健さんは愚痴を言ったり、弱みを見せたりしたんですか。

八名 それは見たことないな。何でもこらえる人だから。ただ、健さんと鶴田(浩二)さんはあんまり仲がよくなくてね、お互いに険悪な雰囲気だった。

テリー お互い東映の大スターじゃないですか。何でですか?

八名 当時、俊藤浩滋さんというプロデューサーがいましてね。鶴田さんと兄弟分みたいな関係だったんですよ。その俊藤さんに健さんはものすごくかわいがられていたから、そういうところで鶴田さんの嫉妬もあったんじゃないかな。

テリー それは現場でも大変そうですね。

八名 そうなんです。正月映画はオールスター出演じゃないですか。セットの中にガンガンがあって、そこに片岡千恵蔵さん、市川右太衛門さんみたいな大御所が座っていて、さらに健さん、鶴田さん、若山(富三郎)さんもいる。

テリー すごい絵ですね。

八名 で、それぞれに若い衆が10人ぐらいついていて、餅を焼いて食べてたりしているわけですよ。

テリー すごい緊張感のある空間ですね。しかも誰かの近くにいたら、他のスターに「何だあいつ、向こうで餅なんか焼きやがって」って言われちゃったりするんじゃないですか。

八名 それをあからさまに言うのは、若山さん(笑)。一度、鶴田さんの手首をマッサージしてたら、若山さんに「お前、いつから鶴田の一派に入ったんだ」って怒られたことがあってね。その若山さんの一件があってから、俺はオールスター出演の時にセットへ入らないようにしたんだよ。入ったら絶対誰かのところに行かなきゃいけないし、他のスターにも気を遣うから。

テリー でも、そんなことも含めて、本当に「スター」と呼ばれる人が多かった、いい時代でしたね。

八名 うん、「活動屋っていうのはこういうことなんだ」ということを教えられたね。

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