月1回は売上や経費の確認!一般社員も知っておくべき経理の基本
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そのタイトルからもわかるように、『ひとり社長の経理の基本』(井ノ上陽一著、ダイヤモンド社)は「ひとり社長」が知っておくべき、経理の基本を解説した書籍。
つまり基本的には経営者が対象になっているわけですが、すべてのビジネスパーソンにとっても有効な内容だと断言できます。
なぜなら経理の基本を知っておくことは、どんな仕事をするうえでも欠かせないから。
そこで今回は第1章「9割の社長が知らない『経理のホント』」のなかから、経理についての基本的な考え方を抜き出してみたいと思います。
■経理とは「経営管理」の略称である
経理は、「税務署や銀行のためにやるもの」だと考えてしまいがちかもしれません。
しかし著者は、その考え方をきっぱりと否定しています。なぜなら、それは自分のため、自社のためのものだという考えを持っているから。
経理とは「経営管理」の略称で、いわば経営の舵取りをするもの。決して“作業”などではなく、イメージとしては「経理=お金、会計、税金のバランスをとる仕事」なのだというのです。
お金を貯めるには、支払う税金を減らす、つまり「節税」が不可欠です。
また税金を減らすには、会計の仕組みを知っていることが必須。そして会計の仕組みがわかれば、お金の効果的な使い方がわかるというわけです。
■経理がわからないと会社は潰れる!
経理は毎日、毎月やるものですが、決算は通常の場合、年に1回行うものです。決算書をつくり、1年の業績を確定させ、税金を計算するわけです(各会社の決算月に応じ、時期は変わります)。
そして税金を確定させたら、決算の日(事業年度終了の日)の翌日から原則として2か月以内に、税務署へ税金を支払うわけです。これが、「決算・申告」。
なお、ここで重要なのは、決算・申告の土台となるのが経理だという事実。経理をないがしろにすると、決算の仕事が大変になり、作業に追われることになってしまうのです。
また、経理の状況が適当だと税務署に目をつけられることになり、経理が間違っていたら「本来なら払わなくていい税金」を払ってしまうこともあるといいます。
いわば、経理がいいかげんだと、決算・申告もボロボロになってしまうということ。
■手間いらずの方法は3ステップ経理術
しかし、そもそも経理とはなにをすることなのでしょうか?
この問いに対して著者は、「ひとり社長の経理でやるべきことは、『1.集める、2.記録する、3.チェックする』だと主張しています。
ITの発達によって簡略化が進んだとはいえ、いまだに「手書きの伝票を扱う」と言った古い考え方がはびこっているだけに、経理の仕事をまともにやったら大変。
そこで、手間をかけない新しい経理の方法として、この「3ステップ経理術」が力になるというのです。
[ステップ1]集める
「集める」は、レシートや領収書、あるいは請求書などを集めるステップ。スタートラインであるわけですが、実はもっとも重要なステップでもあるのだそうです。
なぜなら、この「集める」という作業をおろそかにしてしまうと、極端な話、「余計な税金を払う」「税務署から税務調査に入られる」といったことが起こる可能性があるから。
そして、ここで決め手になるのが「証拠と理由(ストーリー)」。
たとえば「本を書くための資料として、専門書を買った」とします。この場合、「本を買ったときのレシート」が証拠、「本を書くための資料として買った」が理由になるわけです。
つまり、証拠と理由をしっかり集めておかなければ、「なにに、どれだけのお金を使ったか」「なにをやって、どれだけ儲けたか」がわからなくなってしまうもの。
すると正しい経理ができず、決算・申告の際に税務署から「この会社は怪しい」と目をつけられてしまうというのです。
だからこそ、最初のステップである「集める」が重要なのだということ。
[ステップ2]記録する
「記録する」は、集めたレシートや領収書、請求書などをデータとして記録するステップ。
ちなみに、昔はこの作業を手書きで行っていましたが、現在はPCで簡単にできるそうです。
[ステップ3]チェックする
「チェックする」は、記録した数字(売上、経費など)に問題がないかを確認するステップ。
「売上は順調か」「経費はどれくらいかかっているのか」「税金はどれくらいかかっているのか」といったことをチェックし、問題があれば修正していくわけです。
この作業は、最低でも毎月1回はやることが大切。
手間なく効率よく集計し、毎月の業績をできるだけ早く把握するためです(業種によっては、毎日把握すべきものもあるのだとか)。
毎月のチェックを適当にやっていると、「1年が終わって計算してみたら、大きな赤字だった」「経費を使いすぎた」ということになりかねないというわけです。
■1日5分の「習慣」を身につけるべし
大まかにご説明すると、これが3ステップ経理術。なお、「集める」が重要だと書きましたが、それはいちばん大変なことでもあるそうです。
ただし、きちんと資料を集めて整理していれば、経理はそれほど難しくはないと著者はいいます。
ポイントは、「毎日やること」「毎月やること」「1年に1回やること」を頭に入れておくこと。
そして書類をためてしまわないように、まずは「毎日やること」を続ける「1日5分の習慣」を身につけることが大切だといいます。
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実際に携わっている仕事とは直接関係なかったとしても、経理の基礎を頭に入れておくことは決して無駄にはならないはず。本書を教科書として活用すれば、いつか必ず役に立つと思います。
(文/作家、書評家・印南敦史)
【参考】
※井ノ上陽一(2016)『ひとり社長の経理の基本』ダイヤモンド社