人に酷使され働くことをボイコットした象だが、第二の象生で人間の愛情と生涯の伴侶を得る(タイ)
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タイのチェンマイで、何十年も観光客の乗り物として働いていた象のメー・カムだが、ある日を境に背中に登った観光客を振り落とし、働くのを拒否するようになった。
その度に、象使いは鋭いびょうがついた竹棒で、メー・カムの繊細な皮膚にたくさんのみみず腫れができるほど打ちのめした。それでもメー・カムは働くことを拒否し続けた。
そんな彼女に手を焼いた象使いは、メー・カムを象の保護施設に引き渡した。そこでやっと彼女は待ち望んでいた人生を得ることができたのだ。
子供を失ってから、一変したメー・カム
メー・カムの人生は働くことだった。観光客用の象として働かされる前は、37年ほどタイの木材産業で働かされていた。来る日も来る日も、ひたすら重たい材木をジャングルから運び出していたそうだ。
その後観光客を乗せる日々を送っていた彼女は2匹の子供を妊娠した。悲しいことに1匹は死産で、もう1匹は生まれてすぐにコブラに咬まれて死んでしまった。メー・カムは自分の子が蛇に咬まれる現場を見て、叫び声をあげたという。必死で子供の側に行こうとしたが、メー・カムの足は鎖でコンクリートに括り付けられ動くことができない。
オーナーが鎖を外してやると、メー・カムは子供を守るため駆け出して行った。しかし時はすでに遅く、子供は毒により死んでしまった。それから、数時間ほど、メー・カムは誰であろうと、側に来ようとする者に突進するようになった。
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メー・カムのことを知った「BEES(バーム&エミリーの象の保護施設)」の共同創設者であるエミリー・マクウィリアムさんとバーム・リンカウさんは、オーナーに彼女を「象乗り」から引退させてやる気はないかどうか尋ねた。
最初、メー・カムのオーナーは手放すことを渋ったが、仕事を拒否するメー・カムを抱えてどのように暮らしていけばいいのか途方に暮れていた。そこで、マクウィリアムさんとリンカウさんはオーナーにある提案をした。2人はメー・カムを借りる事とし、レンタル代を払ったのだ。この代案にはオーナーも満足げに同意したという。
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保護施設についたメー・カムだが、これまでの生い立ちから人に対して不信感を抱いていた。人間がまわりにいることすら好きではないのだ。
だが心を許す人もいる。象はとても頭の良い動物である。その人間の本質を見抜いているのである。彼女に優しく接するリンカウさんと、保護施設にいる新しい調教師にだけには心を許した。
人間が嫌いなメー・カムだったが、施設で過ごしていくうちに心の壁が溶けていったようだ。ここでは毎日、水浴び、ダスティング(泥などを体につけて寄生虫や乾燥から皮膚を保護すること)、狩猟採集、周囲の探索、泥遊びなどをしている。
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メー・カムもやっと本来の象としての一日を過ごせるようになったのだ。
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木や岩に体をこすりつけ、かゆいところを好きなように掻いたりと、前にいた場所ではできなかった事が、ここでは自由にできる。
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メー・カム、恋に落ちる
メー・カムが来て2ヶ月半が過ぎた頃、別の引退した象がやってきた。71歳のメスの象で名前はメー・ジュンペという。メー・ジュンペもメー・カムと同じように、木材産業と観光産業で働かされてきた。
メー・カムは他の象とも特に問題はおこさず順調にやっているが、マクウィリアムさんとリンカウさんは新しい象をメー・カムに紹介することをためらっていた。
「メー・カムはとても心が傷ついた状態で、不安定でした。私たちは彼女のいる場所に新しい象を入れて、受け入れてもらえるか不安でした」
いよいよ、メー・ジュンペとメー・カムを対面させる日がやってきた。
メー・カムの世話係が少しずつメー・ジュンペを近づけさせていった。
「最初、メー・カムは過敏に反応していました。ゆっくりと動き、周囲の空気を嗅いでいました。実際にメー・ジュンペに直面すると大声で鳴き、逃げ去って行きました。落ち着くまでには30分もかかりました」。
数時間経ってから、世話係たちは再び2匹を引き合わせようと試みた。すると、メー・カムは今度は逃げようとはしなかった。代わりに、自分の鼻をメー・ジュンペのお尻に当てた。
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その瞬間何かが生まれた。
「2匹は地面を揺るがすような大声で鳴きたてたんです」とマクウィリアムさんは語る。「お互いにゆっくりと近づき、生殖器のにおいを嗅ぎ、顔にある側頭腺、口の中まで嗅ぎあいました。そして、お互いの体を優しくこすりつけ、愛情を示したんです」。
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メー・カムとメー・ジュンペの間に何かが芽生えたようだった。それ以来、2匹はいつも一緒にいるようになった。一緒に散歩を楽しみ、森を歩いては食用の草や竹や果物を探し、川で泥遊びをする。いい木が見つかると、交代で体をこすりつける。
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「なぜこの2匹の仲がこれほど良くなったのかは未だに謎です。人間が生涯のパートナーと出会った時のように、出会った瞬間に絆が生まれたんでしょうね。お互いに大好きな様子がこちらにも伝わってきます」とマクウィリアムさんは話してくれた。
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「BEES(バーム&エミリーの象の保護施設)」は、観光業界から引退した象を保護する目的で2012年にタイにて創設された。
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象たちは日中、300エーカー以上ある国営の森を自由にうろついて過ごすが、夜になると鎖につなげられる。
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これは、象たちを守る唯一の方法なのだとマクウィリアムさんは語る。夜中に象たちが勝手に動き回り、迷って森の外に出たり、象を好まない村民たちに傷つけられたり、殺されたりしないように守るためである。
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マクウィリアムさんとリンカウさんは鎖をつけなくてもすむように、保護地を囲うことを考えている。この施設を応援したい人はこちらのサイトから寄付をすることができる。
via:Beesanctuary Elephant Sanctuary/ translated melondeau / edited by parumo
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