吉田豪インタビュー企画:安齋肇「ショックだけど、みうらじゅんから見ると俺は営業友達」(3) (2/3ページ)
■「僕の時給、日本では結構高いほうなんだよ」(タモリ談)
──安齋さんはああいう場には出たくはないですか?
安齋 全然ダメだもん。何度か誘われるんですよ、ああいう場に。一度、もう引退しちゃった人が司会やってた番組に出たけど、俺ひと言もしゃべってないから。
──え!
安齋 っていうか、ひと言はしゃべった。それはオンエアはされてるんだけど、そのあと1回も指されないんだよ。そのときに向かい側が飯島愛さんだったのね。みんなポンポン指されていって、次くるかなって思ってなんとなく見てるじゃん。でも、そのまま飛ばされると飯島愛さんが「大丈夫大丈夫」って励ましてくれるんですよ。
──アイコンタクトで。
安齋 そう。「こういうもんだから」みたいな。すげえ優しい人だなと思って。「大丈夫大丈夫」って、その光線を浴びてるだけで終わっちゃった。
──大丈夫じゃなかったんですね(笑)。
安齋 全然大丈夫じゃない。これはやめといたほうがいいなと思った。
──『タモリ倶楽部』にあれだけ出てるのに、ほかの番組に出てる印象がそんなにないのが不思議なんですよね。
安齋 だって実際に呼ばれないこともあるし、出て行かないこともあるし。一度そういう目に遭うと、もうあんまり行きたくなくなるじゃん。
──『タモリ倶楽部』は嫌な目に遭わなかったから続いてる。
安齋 うん、むしろ僕が嫌な目に遭わせてたからね。
──そうですね、派手に遅刻して。
安齋 ハハハハハハ!
──その結果、あの温和なタモリさんを怒らせて。
安齋 ホントだよね。ひどいよ、あのタモリさんがついに最後は「……あのね、僕の時給、日本では結構高いほうなんだよ」って言ってたから(笑)。
──タモリさんを1時間待たせるっていうのはどういうことなのかって(笑)。
安齋 そうだよなーって。番組1本終わってますもんね。ホント申し訳ないですよ。よくいろいろこうやって引き留めてくれるもんだと思いますよね。
──よくできた話ですよね。最初の打ち合わせに遅刻したから『タモリ倶楽部』の仕事を引き受けざるを得なくなったってエピソードとか。
安齋 よくできた話って、ホントなんだからさー!
──ネタとしての完成度が高いじゃないですか(笑)。
安齋 まず、その前に嫌な目に遭ってるんですよ。
■遅刻したときもいつもどおりのスタンスで
──とある深夜番組でしたっけ?
安齋 そうそうそう。深夜番組やってて、そのときの打ち上げで、「おまえのせいで番組が潰れたんだ!」ってプロデューサーに胸倉つかまれて。俺は準レギュラーぐらいだったんで、「来なくてもいいよ」って感じだったの。だからホントに行かなかったりして。
──それは番組に呼ばれてるのにですか?
安齋 呼ばれてるんだけど、行かないときとかあって。
──え! それっていいんですか?
安齋 だって、「来なくてもいい」っていう条件だったんですよ。もともとデザインの仕事が忙しいから、「そんな年中行けませんよ、いいんですか?」って。で、「いいよ」ってプロデューサーが最初は言ってくれて。「『来てません』ってことでもいいんだったら、それで放送させてもらいますよ」みたいな。でもやっぱりそれがよくなかったって最後に絡まれて、ものすごい頭にきて、カーツに愚痴言ってさ。
──カーツ佐藤さんに。
安齋 うん。カーツに愚痴言ってる僕もどうかなと思ったけど。カーツは「しょうがないっすよ、そういうもんですよ」って言ってたけどね。それがあったんで、テレビに対してはアレルギーっていうか神経質な感じになっちゃってて。
──安齋さんのペースで自由にやってると怒られちゃうから。
安齋 怒られるよね。だから『タモリ倶楽部』が特殊なんだと思う。そこにたまたまいい企画で入っただけで、僕なんもしてないからね。ホントに言われるもん、「おもしろいことぐらい言ってくださいよ」って(笑)。
──「遅れて来た分を取り戻してよ」って。
安齋 ホントですよ。
──遅刻したときは、いつもよりも張り切ろうとか思うんですか?
安齋 張り切ろうとは思わない。張り切るっていうのも無理じゃん。だって、もともと張り切る要素がないから。だからできるだけノーと言わないようにしようとは思うの。「嫌です」とか「違うんじゃない?」とか言われたら嫌でしょ? 会議でほとんど決まりかけてるのに、遅れてきたヤツにそんなこと言われたらさ。みうら君はそういうの平気だけどね。菓子つまみながらさ、「あ、それおもしろくない」とか言って(笑)。あの人はそれが言える人だけど、僕はできないから。
──安齋さん、基本が「すみません」から入るスタイルですよね。
安齋 だってホントに申し訳ないからね。
──今日も会うなり「すみません」って感じでしたけど。
安齋 だって、ひとりで来るのかなと思ってたから(吉田を含めて取材班は3人)。今日は気を抜いて来ちゃったのね、どうせ写真なんか撮らないだろうなとか思って。
──まさか清原と同じ枠だとは思わずに。映画監督でいうと紀里谷(和明)さんと同じ枠ですよ。
安齋 ホント? ヤバいじゃん! そうか……すごいね。めちゃめちゃいろいろおもしろい人に会ってるね、いいっすね。
──犯罪者率も高いですけどね。
安齋 ハハハハハ! 当然そうなってくるよね。
──ただ、安齋さんもこの力の抜けたおもしろさはさすがですよ。
安齋 こうなるはずじゃなかったんだけどね。ふつうにレコードのジャケットのデザインをやり続けてるはずだと思ってたんだけど。