昼間の教習所で、女の幽霊と会った話【ささや怪談】 (2/3ページ)

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周囲は、車も人もいない。
Sさんは、無線を通じて、呼びかけた。
「○○さん、行ってください。大丈夫ですか?エンジントラブルですか?」
しかし、返事は無い。
「どうしましたか?」
すると、か細い声で、返事があった。
「......いけません」
「行ってください。後ろが詰まりますよ」
「いけないんです」
「どうして」
「ひとがいます」
Sさんは、コースを見下ろした。
「誰もいませんよ」
「女のひとが交差点の真ん中で、睨んでるんです!」
○○さんは、ついにパニックを起こしてしまった。
Sさんは、ただちに事務所に連絡を入れた。それから、○○さんが乗っている教習車に指導員を送り込んで、無線教習を再開させた。
その後、Sさんは、○○さんに事情を問い質した。
○○さんが見たのは、白いワンピースを着て、黒髪に裸足の女性だった。色白の肌が、羨ましくなるほど美しかったという。だが、彼女は、○○さんを凝視していた。
綺麗な顔立ちに、理不尽な憤怒を込めた眼差し。
「どうして?」
そう言いたげに。

後日。
Sさんは、学科教習の際に、そのことを教習生たちに話した。すると、教習が終わってから、××さんという若い女性がやってきて、こう言った。
「ここ、いますよね」
「見たんですか」
「教習所を歩き回ってますよ」
「そうなんですか」
「ええ。さっきの話の子、かわいそうですね。びっくりしたでしょうね......」
「......あなたは、怖くないですか?」
すると、××さんは、しばらく考えてから、
「生きてる人にそっくりだけど、怖くないですよ」
と言って、ニコニコしながら帰っていった。

「で、その教習所は、どんな場所だった?」
わたしは、イデマチに尋ねた。
「普通でしたよ。ただ、獣臭いところでした」
「いつも?」
「そうです。小さい頃に見たことある、移動動物園の山羊みたいな」
イデマチは、ヴイッツを発進させた。わたしたちは、明け方の高速道路を、西に向けてひた走る。

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