60もの村々を「濁流」に沈めた金正恩体制…死者数千人か (2/2ページ)

デイリーNKジャパン

「予告もなく高さ15メートルの水が急に押し寄せてきた。茂山(ムサン)、会寧(フェリョン)、穏城(オンソン)など流域の町が次々に濁流に飲まれた。60あまりの村が跡形もなく消え去り、国境警備隊の哨所(監視塔)、兵舎、軍官(将校)用の住宅もあらかた押し流された」(情報筋)

放流すれば、間違いなく被害は拡大するが、当局は人命より既存設備を守ることを優先した。本欄で、今回の水害における被害拡大は「人災の側面が大きい」と述べていたが、まさにその通りのようだ。

軍や民間の被害も大きく、全体の犠牲者数は数千人に達すると情報筋は見ている。しかし、当局は国内世論の動向を気にして、被害状況の隠蔽を図ろうとしているのだ。

繰り返される「阿鼻叫喚」

「住宅の損壊や山崩れなど目に見える被害は、外国からの援助を引き出すために誇張する。しかし、人的な被害は、通告なしのダム放流や、水害対策が皆無だったことが問題視されないよう、隠蔽、矮小化しようとしている」

また、金正恩党委員長は、多数の犠牲者が発生しているにもかかわらず被害対策よりも核実験を優先させた。こうしたなか、人的被害が広く知れ渡れば当局に対する非難の声が高まるのは避けられない。すでに不十分な水害対策をめぐり、住民の間では反発が生じている。

今後も、韓国や米国のラジオ放送などを通じて、北朝鮮当局の人命軽視の姿勢、そして水害被害拡大が「人災」でであることが、北朝鮮の民衆に広まるのは時間の問題だろう。自然災害以外でも、北朝鮮では阿鼻叫喚の人災が繰り返されている。それを止めるためにも、国際社会は可能な限り内部の被害状況を知り、そして不十分な安全対策を指摘し是正させるよう動くべきだ。

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