住居すらも借りられない?「人生の壁」の是非|やまもといちろうコラム (2/2ページ)

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■「持てる者」と「持たざる者」の現実

 逆に、入居審査したときはどっかに勤めていたので安心して貸したら、ご病気やらリストラやらでいつの間にか不安定になっちゃってる借り主さんなんかは往々にして出ます。話が違う。でもご本人も不可抗力であろうから、お互いのためにちらりと調べてみたり、それとなく面談したりするんですけど、一度「挨拶」をしてしまうと「ありがとう。ずっといてね」って話になったりもする。本来なら、門前払いになってもおかしくない人なのにね。

 だから、「持てる者」と「持たざる者」との間の現実は、もちろん各々の立場で感じたり、直面したりするものなのでしょう。そして、現状や未来に不安に感じる人たちが、人生を否定されるような壁の前に立ち尽くしているのもまた、その通りなのでしょう。「保証人として、その人の信用をカバーできる人がいない」というのは、人が一人で暮らすことを前提とした制度ができていないのはごもっともで、生涯未婚率の高まりの中でそのような人生を選んだ人が歳を取るごとに人生の壁がせり上がっていくのを呆然と見つめている、というのは価値観や生活の多様性を認めていこうという日本の本来の道筋ではないように思います。

 こども食堂の事例でも、善意でやっているのに善意だけでは回らない世の中の侘び寂びもあります。みんなどうにかしたいと考えていて、別に立場の違いをそのまま対立構造にしたいと思っていないのに、結果として何となく双方が不満に思って世間全体が不幸になる展開があるように感じます。

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 大上段に言えば、これが「国力の衰退」という抽象的な現状の、具体的な症状のひとつなのかと思うと、理想が「遠い異国の話」であるというか、下り坂をゆっくり降りながら流れてくる雨雲を不安げに見上げるという心象風景を抱くわけであります。

 たぶん、どこかに辿り着く前にずぶ濡れになるんだろうな、と。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

やまもと氏がホストを務めるオンラインサロン/デイリーニュースオンライン presents 世の中のミカタ総研

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