台湾の脱原発は自滅行為?中国人が語る「原発全廃論」の弊害 (2/2ページ)
また、電力減少は台湾内の経済を低迷させる可能性があります。実例をあげると、iMacやiPhoneなどApple社製品の委託開発を行うことで知られる「富士康」(フォックスコン)は、1997年ごろいち早く中国のパソコン事業に進出し、当時の中国の若者たちから熱狂的な支持を得ていました。しかし、2001年ごろから生産コストの削減を理由に、富士康をはじめとする多くの台湾の電子機器メーカーがこぞって生産拠点を深セン市など中国東南部に移転した結果、製品の品質は目に見えて低下していったのです。仮に台湾の電力供給が減少すれば、企業の海外進出がさらに加速することとなり、結果中国など近隣諸国が経済発展する代わりに台湾内の産業は衰退するでしょう。これは電子工業を主力産業とする台湾にとっては大きな経済的打撃となります。
僕自身は、台湾の原発全廃運動の背後には親中・左派勢力が潜んでいると思います。台湾の反原発デモを見ると、「反米帝国主義」、「反日本帝国主義」、「原発は資本主義による世界の労働者に対する搾取」など、日米批判、共産主義的なスローガンがかかげられていることが多々あります。他にも「原発開発は新たな日本の侵略支配である」と、大日本帝国時代の台湾統治になぞらえた陰謀論も唱えられていました。日本の左派層は原発問題を政府批判に結びつけていますが、僕は台湾の反原発活動は同様のものだと思います。
日本の反原発を唱える活動家や進歩系言論人たちは、こぞって台湾の原発全廃論を賞賛し、対照的に原発再稼働を計画する日本政府を「時代遅れ」などと批判しました。しかし、台湾の政策はまだ計画段階であり上述のような理由から失敗する可能性が高いのです。
左派層の一部は、ドイツの例を引き合いに出し「原発全廃は可能」と主張します。しかし実際のドイツは電気が満足に生成できず、不足した電力を欧州最大の原発国家であるフランスから購入するという本末転倒な結果になっています。仮にドイツとフランス間に武力衝突が発生した場合、フランス側が電力供給を停止したらドイツの軍事施設は稼働不可能となり、ただちに壊滅的打撃を受けるでしょう。原発全廃により台湾の国力が低下した場合、最も恩恵を受けるのは中国です。台湾からアメリカや日本の後ろ盾が失われた時、中国は台湾侵攻に踏み切るかもしれません。僕は今回の蔡英文総統の決断は自らの失脚につながる行為だと思います。
著者プロフィール

漫画家
孫向文
中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の33歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。新刊書籍『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)が発売中。
(構成/亀谷哲弘)