【プロ野球】夢の対決は幻に……。熱戦の末に敗れた広島東洋カープと黒田博樹の日本シリーズを振り返る (2/2ページ)
■日本シリーズ第3戦。5回2/3・魂の投球
黒田が登板したのは第3戦の札幌ドーム。初回に失点を喫してしまうも、その後は粘りを見せ、5回を4安打に抑える好投を見せる。
しかし、2対1とリードして迎えた6回。突然、黒田の現役最後のときが訪れた。1死から対峙したのは球界のスター・大谷翔平。黒田は渾身の3球を投げ込み大谷を打ち取ると、顔を歪め自らマウンドを降りてしまった。
黒田は両足をつってしまったのだ。なんとかマウンドに戻るも、再び投球をすることはできず、無念の降板。5回2/3で85球。これが黒田の現役最後の投球となってしまった。
魂を込めた85球だったことは間違いない。すさまじい気迫はテレビの画面越しにも十分に伝わってきた。ただ、ここで終わって、本当に燃え尽きることができたのか? そんな疑念が残る。
いったんベンチに下がりながら、再びマウンドまで現れたことが、黒田の「まだ投げたかった」という気持ちを表していたのではないだろうか?
それだけに、ここで終わってほしくない。そう強く思ったのは筆者だけではないはずだ。
■幻と消えた最終戦
黒田は7戦目に投げるための調整に入った。そんな報道が流れたとき、広島ファンは俄然盛り上がりを見せた。
最終戦を黒田で勝って日本一になる。
いや、最終戦に負けて日本一になれなくてもいいから、もう一度、黒田の勇姿だけは見たい。そう強く願ったファンが多かったことだろう。
しかし、結果は6戦目に大敗。広島の日本シリーズ敗退が決まった。
その結果、黒田の登板は幻と消えた。第3戦の札幌ドームで投げた渾身の85球。これが黒田の引退試合となってしまったのだ。
いち広島ファン、いち黒田ファンとしては、最後にもう一度、最高の場面で黒田が投げる姿を見たかった。日本一をかけた最終戦のマウンドで最後の1球を投じる黒田を目に焼きつけたかった。
そのお膳立てができていただけに、いまだ悔しさは消化できていない。
とはいえ、この1年熱い戦いを見せてくれた黒田を始め選手達には素直にありがとうと言いたい。
日本シリーズの季節まで真剣に野球を見られたこと、夢のような数週間を与えてくれたこと、悲願のリーグ制覇を見せてくれたことは生涯忘れないだろう。
日本シリーズ敗退の悔しさを糧に、来シーズン以降も躍進してくれることを信じてやまない。
日本シリーズ終了後の会見で、「最後に本拠地のマウンドにたちたかったか?」との問いに対し黒田はこう答えた。
「いち個人のことでそういうことはしたくない。チームの勝利が優先だと思う」
最後まで黒田はカッコよかった。
文=井上智博(いのうえ・ともひろ)