秋津壽男“どっち?”の健康学「年老いた老人の介護は『自宅』か『施設』か。『家で死ぬのが幸せ』というのは政府の考え」 (2/2ページ)

アサ芸プラス

 犠牲になれる人がいないのであれば、施設もやむなしと私は思います。

 今後、高齢化社会が加速し、こうした問題は多くなるのが目に見えています。それを見越してか、政府は介護にかかる保険金や助成金を少なくするべく「家に帰れ」「施設に入れるな」という方向に向いています。そのため「家で死ぬのが幸せ」という価値観を植え付けようとしているようにも見えますが、これには複雑な事情があります。

 大した病気もない寝たきりの老人を入院させると、かかった医療費より保険点数のほうが低くなる、という保険制度があるため、病院が莫大な赤字を抱えます。つまり政府が福祉にかかるお金を減らそうとしているわけです。病院サイドは「1日8000円程度しか保険が下りない」ために赤字を嫌がって入院させません。しかし、差額ベッドに入れば、喜んで入院させてくれるとおり、病院で手厚い治療を受けて、天寿を全うすることはできます。

 最期まで面倒を見てくれる家族がいればまだしも、1人暮らしで孤独死となる場合は「病院で死なせろ」と、声を大にして国に訴えてもいいと、私は感じます。

■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。

「秋津壽男“どっち?”の健康学「年老いた老人の介護は『自宅』か『施設』か。『家で死ぬのが幸せ』というのは政府の考え」」のページです。デイリーニュースオンラインは、週刊アサヒ芸能 2016年 11/10号“どっち?”の健康学秋津壽男介護社会などの最新ニュースを毎日配信しています。
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