【永田町炎上】沖縄振興費の”恩恵”を忘れたヘリパット反対派の無法ぶり

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【朝倉秀雄の永田町炎上】

■歳入の6割近くを国庫に依存する沖縄県の一番会計予算

 平成28年の沖縄県の一般会計予算は約7542億円。歳入予算の内訳は「地方交付税」が約2066億円で、「国庫支出金」が約2327億円で合わせて4393億円。国庫への依存率は実に58.25%にも及ぶ。これは沖縄県の税収や手数料収入が4割強しかなく、政府の援助なしには自立できないことを意味する。

 安倍政権は普天間飛行場の名護市辺野古移設を容認した仲井真弘多知事の国益への「貢献」への「事実上の見返り」として2013年12月、2021年までに毎年3000億円台の沖縄振興費を確保する方針を決めた。その信頼を裏切ったのが翁長雄志現知事だ。

 菅義偉官房長官や鶴保庸介沖縄相は「基地問題と沖縄振興予算は関連する」との「リンク論」で揺さぶりをかけながらも、2017年度の概算要求で今年度比4.2%減の3210億円を確保している。無論「原資」は大企業や高額所得者の多い首都圏や近畿圏で徴収された税金だ。

 だが、翁長雄志知事をはじめ沖縄県民の多くは「沖縄だけが本土決戦を強いられ、民間人を含め人口の4分の1、およそ15万人が戦死した」などと主張し、国に国家賠償を求めて訴訟に及ぶといった歪んだ自虐史観にとらわれ、普天間飛行場移設でもあくまで政府に盾を突く姿勢を崩しておらず、「沖縄振興費」の「恩恵」には一向に感謝しない。政府内には「約束を守らず『いいとこ取り』している」との苛立ちもあるが、当然のことだろう。

■「土人」発言に早速喰らいついた民進党

 そんな沖縄の米軍北部訓練場(東村、国頭村)のヘリコプター離着陸帯(ヘリパット)の移設工事現場で10月18日、警備に派遣された大阪府警の機動隊員の巡査部長と巡査長の口から飛び出したのが工事に反対する市民らに対する差別発言だ。二人は「どこを掴んどるんじゃ、ぼけ。土人が!」「黙れ、こら、シナ人!」などと罵ったというのだが、これに早速喰らいつき、『質問主意書』の提出に及んだのが政府・与党側に何か不祥事があれば攻撃材料にしようと待ち構えていた民進党の長妻昭議員だ。

 政府は28日、「府警によると、感情が高ぶるなどした結果であり、沖縄や人を見下していたとの認識はなかった。内閣としては極めて遺憾と考えており、警察庁が全国の警察に対し、指導教養の実施を指導した」との『答弁書』を閣議決定したが、この場合、そう書かざるを得ないであろう。

 なお大阪府警はそれに先立つ21日、「不適切発言」だったとして21日、二人に「戒告」の懲戒処分を言い渡し、現場の直属の上司だった警部も監督責任を問われ、口頭注意を喰らっているが、これも致し方あるまい。

 大阪府の松井一郎知事などはTwitterに「表現が不適切だとしても、大阪府警の警官が一生懸命、命令に従い、職務遂行していたのが分かりました。出張ご苦労様」などと擁護論とも取れる投稿をし、「人権意識が欠けている知事は辞めるべきだ」などと散々批判されているようだが、後に述べるような反対派住民の無法ぶりを考えれば、心情的には理解できなくもない。

■そもそも反対する理由がない沖縄の北部訓練場の返還

 北部訓練場は面積約7000ヘクタール。沖縄最大の米軍基地だが、日米両政府が1996年(平成8年)、沖縄の基地負担軽減策の一環として7ヵ所のヘリパットを返還後も残る訓練場内に移設することを条件に合意したものだ。

 当然、沖縄県のためになることでもあり、そもそも県民には反対する理由など無いはずだ。

 だが、そんな当たり前の理屈は「沖縄は基地を押し付けられて、本土の犠牲になっている」と言う被害妄想心の強い一部の沖縄県民には通用しない。実際、2007年(平成19年)に着工したものの、住民らの反対で進まず、2ヵ所が完成するにとどまっている有り様だ。かといって、いつまでもそのままにしておけない政府は参議院選後の7月22日、工事を再開している。

■目に余る反対派住民たちの無法ぶり

 再開を手ぐすねを引いて待ち構えていたのが政府に盾を突くのが生き甲斐の一部住民たちだ。工事現場では警備に当たる機動隊員に対する「暴言」などは日常茶飯事。ゲート前の県道沿いにはテントを設営して工事を監視し、車両をバリケードにして県道を塞ぎ、何の権限もないはずなのに工事車両だけでなく一般車両まで検問を強行。通行を妨害し、時には機動隊員ともみ合いになり、怪我人まで出す有り様だ。

 8月24日には機動隊員を蹴ったとして執行妨害罪で現行犯逮捕。とても法治国家とは思えない「無法地帯」と化している。中には過激派なども紛れ込んでことさら妨害を煽っているのであろうが、『週刊新潮』(新潮社)11月3日号によれば、とにかくその無軌道ぶりは目に余るらしい。

「土人」発言はそんな反対派の言動に業を煮やした機動隊員がものの弾みでつい口走ってしまった、いわば「売り言葉に買い言葉」。不適当な差別発言であることは否定できないが、現地の状況を考えれば、言葉尻を捕らえて、警察側だけを責めるのも公平ではないように思える。

 翁長知事や沖縄県民は「歪んだ自虐史観や被害妄想心を持つな」と言うのは無理な相談だろうが、基地負担の代償として本土から3000億円以上にも上る「沖縄振興費用」の「恩恵」を受けていることを忘れてはなるまい。いずれにせよ沖縄はもっと「大人」になるべきであろう。

文・朝倉秀雄(あさくらひでお)
※ノンフィクション作家。元国会議員秘書。中央大学法学部卒業後、中央大学白門会司法会計研究所室員を経て国会議員政策秘書。衆参8名の国会議員を補佐し、資金管理団体の会計責任者として政治献金の管理にも携わる。現職を退いた現在も永田町との太いパイプを活かして、取材・執筆活動を行っている。著書に『国会議員とカネ』(宝島社)、『国会議員裏物語』『戦後総理の査定ファイル』『日本はアメリカとどう関わってきたか?』(以上、彩図社)など。最新刊『平成闇の権力 政財界事件簿』(イースト・プレス)が好評発売中。
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