トイレがあり得ない「金正恩住宅」を押し付けられる北朝鮮の被災者 (2/2ページ)
あり得ないトイレ事情
そして今回、北朝鮮当局は出身成分が良い被災者に優先的に住宅を割り当てているのだ。どうやら当局が「(朝鮮戦争)戦死者、栄誉軍人(傷痍軍人)の家族、つまり核心階層に最もいい家を割り当てろ」と指示したようだ。
核心階層には、丘の上で日当たりがよく、畑や庭付きの瀟洒な家が割り当てている。一方、脱北者の家族は最も後回しにした上で、ハーモニカ住宅(1棟に4戸が入る長屋)や、マンションの最上階を割り当てている。最上階というと聞こえはいいが、実は電力事情の悪い北朝鮮では最も条件が悪い。金正恩氏の肝いりで建てられたマンションにおいても、信じられない方法で「トイレ(汚物)問題」を解決する住民がいるほどだ。
情報筋は「当局は被害が深刻な人や老人などの弱者に、優先的に割り当てると当初は言っていたが、それを覆した」と憤る。さらに、被災地の市や郡の人民委員会(役場)には「住宅配定常務」という部署があり、保衛部(秘密警察)や保安署(警察署)と共同で、対象者の調査を行い、脱北者の家族は1回目の割り当て対象から除外している。
金正恩氏は、脱北行為を厳しく取り締まる方針を打ち出しており、彼の意向が反映されていることは間違いない。つまり、「体制に忠誠を尽くせばいい思いができる。しかし脱北者の家族には辛い目に遭わせてやる」という見せしめの意味が込められている。
とはいえ、差別的な待遇を受けた人々は逆に「もうこの国に未来はない」と諦めて、脱北の機会を狙う。また、家族や親族に脱北者がいれば、海外からの仕送りでそれなりにいい暮らしも可能だ。仕送りを元手にした商売で繁盛する事もある。
金正恩氏の「見せしめ」差別に、それほどの効果はないだろう。